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2015.2.9 「甘いスープ」スープラボ・レポート

今月のスープラボは、バレンタインデーにちなんで「甘いスープ」をテーマに、果物やチョコレートなどのスイートな素材をスープにする研究です。

「甘いスープ?」と思われるかもしれませんが、素材のうまみを抽出したもの、と考えれば発想は無限。フレンチレストランなどではよくデザートにフルーツスープが出てくることもありますね。ハンガリーのチェリーのスープや、北欧のベリーのスープなど、ヨーロッパでは食事に甘いスープを食べることもあるようです。

甘いスープの試食をする前に、まずお砂糖について。お砂糖の種類はたくさんありますが、違いをある程度味比べできるようにしました。

白いお砂糖は「漂白」?いえ、そうではなく、「精製」の結果です。白いお砂糖の代表であるグラニュー糖や白ザラメは精製度を高めて、ほぼ純粋に糖分(ショ糖)を取り出したものなんですね。

さとうきびを煮詰めただけのものが黒砂糖で、精製度の低い(つまりさとうきびの成分を残している)のが、茶色のお砂糖です。精製度の低いものほどミネラルや旨味があり、高いものほどすっきりしています。優劣はなく、使用目的によって選びます。

砂糖の話は製法など山ほどあってちょっとキリがないのでまたの機会に!ここではみなさんにいろいろな砂糖の味見をしていただいたことをお伝えします。

そして、砂糖以外の「甘味」も味見してもらいました。たとえば、こんなもの。

スープには、こうした甘味もよく使います。たとえばかぼちゃのポタージュにメープルシロップで甘みを加えたり、酸っぱいトマトのスープにはちみつを入れて酸味を抑えたり。にんじんのピューレにアップルジェリーを加えたポタージュは、以前ラボのレポートでもご紹介しました。

さて、甘みの紹介で前置きが長くなりましたが、ここで最初のスープです。紅玉りんごで、甘いデザートスープとお食事スープを作り分けました。

向こう側が「りんごと干し柿のクリームスープ」
手前が「りんごのポタージュにパンチェッタ添え」です。

甘いデザートスープは、りんごの甘味に加え、あんぽ柿を甘味として使っています。干し柿は軽く上品な甘さ。しかも他の味をあまり邪魔しないので、こういうときに使うのにぴったり。うまみもプラスされます。今回はりんごが酸っぱい品種だったので、グラニュー糖も少し足しました。ホイップクリームとりんごピュレを一緒に泡立てミルクでのばし、シナモンをたっぷり効かせてふわふわした口当たりに仕上げます。

お食事スープは、ソテーしたたまねぎとりんごをポタージュにしたもの。シンプルなりんごスープですが、ここにフライパンで焼いて油を落としたパンチェッタをトッピング。お肉やソーセージにアップルソースをかけて食べたことはありませんか?これはその逆バージョンです。

実は、蒸し鶏や鶏のからあげ、生ハムなどでもやってみたのですが、塩気のしっかりしたもののほうが美味しいようです。試してはいないですが、ベーコンや、案外サラミなんかもいいと思います。

試作時の完成写真も、アップします。


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じつは、今回のゲストでブラムリーアップルファンクラブの方がいらして、調理りんご、調理フルーツの話でとっても話がはずんだのですが、こちらも話が盛りだくさん過ぎるので、別レポートにしたいと思います…ということで、ラボは後半へ。

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後半は、バレンタインウィークということとあり、チョコレートのスープ2種を作りました。最初のスープは写真を取り損ねてしまったので、試作時の写真をどうぞ。

「チョコレートとオレンジのチョコレートスープ」。
見た目を裏切る、全く甘くないスープです。カカオマスという、カカオ100%で砂糖の全く入っていないタブレット(写真の手前に写っているもの)を塩味の鶏のスープに溶かし、オレンジ風味のグランマニエと、フレッシュオレンジで風味をつけました。砂糖もちょっぴり補います。たくさん飲めるスープではありません。デミタスカップに、ほんの少し。香りも見た目も甘そうなのに、味見をすると強烈な苦みと塩味。脳が混乱する強烈なスープです。

驚かせてしまったあとは、王道のチョコレート味で締めくくります。

「チョコレートとコリアンダー、胡椒のスープ」。

ヴァローナのビターチョコレートを生クリームで伸ばした“美味しくないわけがない”チョコレートソースに、コリアンダーと胡椒をたっぷり振り込みました。目の前でチョコの鍋に胡椒をがりがりひくのを見たお客様が、大丈夫?という顔をされましたが、スパイスとチョコレートはとてもよく合います。

そして、今回はこのスープに、いろいろな食材をディップして召し上がっていただきます。用意したのは、塩鶏、ラディッキオ、チーズ。ラディッキオには少し粗塩を振ります。

紫がかわいいイタリア野菜、ラディッキオ。フランス語ではトレビス。日本でトレビスというと、細長いものをイメージしますよね。(それもラディッキオの一種なのですが)これはキャベツみたいな球状の品種です。

いわゆる、チョコレートフォンデュなのですが、よくあるチョコレートフォンデュはデザート系。フルーツやクッキーなどをつけて食べますよね。でも今日はややお食事寄りです。これがワインに合う!ゲストの方がおみやげに持ってきてくださったブルーチーズやレバーペースト、バゲットなどもみんなで試し、もうラボなのか単なる飲み会なのかよくわかりません(笑)ブルーチーズ×チョコは良い組み合わせでした。

肉やチーズの塩味、ラディッキオの苦味が、チョコレートの甘味とバランスを保ってうまみを膨らませているんです。これに限らず、味をつけるときに、甘味、塩味、酸味、苦味などの味を調節しながら、バランスを探っていくということがとても重要だな、ということを、美味しく食べながらも一緒に感じることのできた今回のスープラボでした。

でも…今回のスープは難しかった!

本来スープは甘くない料理。そこに果物や砂糖など甘い素材を使うことで、想像と味覚のズレが生まれる。「酢豚にパイナップル入れていいのか問題」にちょっと近いんです。ラボという場だから楽しく味わえるという側面もあります。料理は味そのものだけではないんですね。

おいしいと感じる範囲はピンポイント。チョコのスープは試作に試作を重ねたが、最後まで本当にこれでいいのかわかりませんでした。でも、みんなに味のぶつかり合いの中においしさを発見してもらえたようなのでよかったと思っています。

さて、今回のラボは、こんな感じ。いかがでしょうか。

※ 写真協力 宮林藍さん 佐藤ナギサさん

#料理 #スープ



読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。