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缶詰スープ、ずらり20種類。2016.10.31 スープラボ・レポート

あたためるだけで手軽に食べられる、便利なスープの缶詰。今回のスープラボは、いろいろなスープ缶詰の食べ比べです。アメリカ、イギリス、イタリア、タイ、そして日本…集めたのは、こちら!

缶詰の数も多いので、この日はいつものスープラボより、大人数の10人です。比べやすいようグループ分けしてみました。

全部食べられるかな…どんな順番でいくかをゲストに選んでもらったところ、すっきりしたコンソメから!ということになりました。

●そのままで美味しい、コンソメスープ比べ

まずはコンソメ比べです。コンソメは、すっぽんコンソメと、ビーフコンソメの2種類をチョイス。

(左)村上すっぽん本舗 すっぽんスープ ゴールド  700円
(右)ミナト商会 十勝の冷たいスープ ビーフコンソメ 162円

東京・上野に店を構える、すっぽん料理の老舗・村上すっぽん本舗が出しているすっぽんスープです。普通のと、ゴールドと、肉入りのビアンドの3種類があるのですが、これは値段が真ん中の、ゴールド

また、ミナト商会の十勝の冷たいスープ ビーフコンソメは、青山紀ノ国屋などでも扱いがあるコンソメです。

素材が違うので当然ですが、色も味も違います。

十勝のビーフコンソメはかなり濃いとび色で、味も濃い目。「飛行機で出てくるコンソメに味が似ている…」という声もありながら、ホテルのコンソメが同じサイズで1缶1000円ほどする中、これ1缶が162円というのは、かなりお得な感じがします。若干人工的なもの調味料の味がするものの、美味しくまとまっています。

一方、すっぽんスープはかなり薄味で上品な味付け。しょうがの香りがほんのりします。さらっと飲めるスープで、雑炊を作っても美味しいかも。風邪のときなどにこれがあると嬉しいひと缶です。病気の方の贈答品にもつかわれているようです。

●お歳暮ならどこ?ホテルのコーンスープ比べ

ホテルのスープといえば、贈答用のイメージ。値段も高めですが完成度は高く、ひと缶一人分というわかりやすさも魅力です。
今回は、ニューオータニ、帝国ホテル、ホテルオークラの御三家のコンポタ比べをします。

左から、ホテルオークラ(400円)、帝国ホテル(450円)、ホテルニューオータニ(400円)のコーンスープ。どのホテルも、白に金色のシックで上品な色使いの缶です。帝国ホテルだけ50円高いのが気になる。

ホテルオークラ(中央)は、色も味も濃い目。さらに、ブイヨンの味がしっかりします。一方帝国ホテルニューオータニはとうもろこしの風味が前に来るタイプ。帝国ホテルはこってり、ニューオータニはサラッとした感じでした。50円の差は…感じないかな。

それぞれのホテルで、バリエーションも違います。新宿伊勢丹の地下に、かなり揃っていますよ。

●ちょこっと缶詰まめ知識

さて、今回缶詰のスープということで、缶詰についても調べてみました。

1810年にイギリスで発明された缶詰は、携帯性、保存性から主に探検用、軍用の食料として重宝されました。缶切りが発明されるまではハンマーで開けていたため、スープ缶など液体は詰められなかったそうです。

日本では、明治4年、長崎で初めての缶詰が作られました。イワシ油漬けの缶だったそうです。やがて北海道のサケなど水産加工品の缶詰工場ができましたが、明治時代は海外輸出用、または軍用が多く、一般に普及するのは関東大震災以降。アメリカからの支援物資に缶詰が入っていたことによります。

スープと言えばキャンベルを思い浮かべますが、あの赤と白のキャンベルの缶スープは1898年に発売されました。現在キャンベルは現地向けのほか、日本ラベル製品も作っており、それぞれ味が違います。ちなみに日本人がものすごくポピュラーだと思っているコーンポタージュ缶は、アメリカにはないようです。

●個性が光る、ミネストローネ比べ

さて、味比べに戻りましょう。次はミネストローネ(野菜スープ)です。最初4種類で比べるつもりで写真も撮影しましたが、写真右のMENUの豆スープは少しタイプが違ったので、次の味比べに回し、左の3つを比べました。

(左から)
Baxters(バクスター)ミネストローネ 470円
アヲハタ ミネストローネ 500円
Amy's Kitchen(エイミーズキッチン) ベジタブルバレー 580円

バクスターは、イギリスの食品ブランド。英国王室御用達、ということで期待が持てます。エイミーズは、オーガニックな野菜を使ったスープ缶を沢山出しているブランドです。ヴィーガン対応ということで、おそらくスープにも余分なものは使われていないのではないでしょうか。アヲハタは、日本のメーカーで、ジャムや素材缶のイメージが強いですが、スープ缶も安定のおいしさ。

缶を開けてみると、エイミーズは、トマトなしのタイプ、残りふたつはトマトありのタイプ。バクスターとアヲハタにはパスタが入っていますが、似ているようでやっぱり個性が違います。

エイミーズは、野菜がたっぷりですが、かなり薄味。でもふだん、家でミネストローネを作るときはこのぐらいの味つけかもしれません。肉のブイヨンも入っていないので、食べ飽きない味です。

バクスターは、いわゆるミネストローネの王道。にんじんが大きすぎる!とは盛り付けをくださった方のコメントです。ごろごろ野菜の入ったミネストローネ、という感覚。肉系のブイヨンの味をしっかりと感じます。

アヲハタは水で薄めるタイプなので、具は相対的に少なめになりますが、パスタは車輪のような形のすごく大きいものが入っています。日本人には食べ慣れた感じのうまみです。安心の美味しさというか。

●缶詰と相性のよいビーンズスープ比べ

チリビーンズだけで比べようと思っていたのですが、上の写真で紹介したMENU社の豆スープが、かなりがっつりしたタイプだったので、この写真に加えて3缶で比較です。


(左)Amy’s Kitchen(エイミーズキッチン) オーガニックチリ スパイシー 623円
(右)Hormel (ホーメル) ホットチリポークウィズビーンズ 750円
(一枚上の写真右)MENU(メニュー)3種の豆とスペルト小麦のスープ 1,028円

ホーメルは、スパム缶でおなじみの、アメリカの缶詰会社です。チリビーンズはいろいろ種類を出していますが、今回はスタンダードなポークビーンズから、辛いタイプを。エイミーズは、ヴィーガン対応なので、肉なしのチリビーンズ。そしてメニュー社は、1927年に創立されたイタリア有数の食品メーカー。このスープは850g、大きな缶で、開けるとぎっしり豆が詰まっています。3~4人分はたっぷりあるサイズです。

ホーメルは、ポークビーンズの王道を行くような、ジャンキーな味。うずら豆がほっくりしています。ピリッとしてスパイシー。

エイミーズは言われなければ肉なしと気がつかない人がいるかもと思うほど、うまみが濃いのに驚きです。材料を見ると、なんと「豆腐」。擬製肉というわけですね。辛みやうまみなどのパンチはありますが後味がすっきり。

メニュー
の豆スープは、大豆、レンズ豆、いんげん豆がぎゅうぎゅうに詰まっています。これだけで十分な食事になるほどのボリューム感。辛みはなく、豆のうまみで食べさせるスープ。スープというより煮豆に近いかも。味は薄めで、食べ疲れない感じです。

豆は缶詰に向く食材。味付けも濃いポークビーンズは缶のにおいも感じにくく、缶詰にいいスープだなと思います。

●貝やエビでリッチ。魚介スープ比べ

そういえば、キャンベルがここまで出ていませんでした。ということで、キャンベルの中でも王道中の王道、クラムチャウダーで魚介スープを食べ比べします。

(左から)
Baxters(バクスター)ロブスタービスク 352円
BAR HARBOR(バーハーバー) クラムチャウダー 500円
Champbell's(キャンベル)チャンキー ニューイングランドクラムチャウダー 478円

クラムチャウダーが2缶、そしてロブスターのビスクが1缶。魚介のスープを3つ、味見してみます。

キャンベルの普通の缶スープは同量の水やミルクを加えて煮立てるタイプですが、この553gの大きな缶はストレートタイプ。普段あまり見かけないのでこちらを選んでみました。バーハーバーは、アメリカ東海岸にあるメーカーで、新鮮な魚介の獲れる港町の名前がメーカー名になっています。このクラムチャウダーは同量のミルクで割るタイプ。
クラムチャウダーではありませnが、魚介のスープということで、バクスターのロブスタービスクも加えて3種類で味比べです。

キャンベルのクラムチャウダーは、ストレートタイプなので具がたっぷり入った濃厚なタイプ。スープというより、シチューに近いです。少し水かミルクで割っても良さそうです。貝は「クラム」と表記されていて、貝の種類はわかりません。

バーハーバーのクラムチャウダーは逆に、サラサラと薄く、割ったミルクの味が強く出ている感じ。具も少なめで、淡いうまみです。貝はホンビノスガイと表記されています。朝などにはちょうどよい感じでしょうか。

また、バクスターのロブスタービスクはクラムチャウダーと比べるからかもしれませんが、予想通り濃厚でリッチな味でした。少し塩味がきついかな。

3缶とも、やや魚介の生臭みが出ていたのが残念。そもそも魚介のスープは作りたてを食べるもの。多少の劣化はいたしかたなく、むしろこれだけ普通に食べられたら素晴らしいともいえます。

そして……ここまで来てとうとうゲストのみなさんギブアップ。ほんの少しずつだったのですが、豆やパスタ入りスープなども多く、お腹いっぱいになりました。

●缶詰スープ、かなりレベル高いと判明

ひと昔前まで、海外の缶詰のスープは外れも多かったものです。今回、食べられないようなひどいスープがあったらどうしようと少し心配していましたが、杞憂に終わりました。どの缶詰スープも十分に美味しく、寝坊した朝、夜遅く、あるいは病気のときなど、ちょっと家にあると安心できます。

みなさんそれぞれにお好みがあったようですが、あえて私自身がベストを選ぶなら、Amy’s Kitchenのオーガニックチリ スパイシーが良かったです。肉なしなのに、パンチが効いていて、それでいてさっぱりと後味がよい。このメーカーは今回の食べ比べでも人気でした。

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ラボの日は10月31日。ハロウィンということで、ニョッキ入りのかぼちゃクリームスープを作ったものを最後にお出しし、スープラボ、終了です。

スープラボ#15 テーマ:缶詰スープ
2016.10.31(MON.)  19:00~21:00
湯島イワシハウス 

撮影協力:大谷りえ子さん、白央篤司さん、神保和子さん、須永夏美さん


読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。