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木もれび

今わたしは大きな木々の下、鮮やかな緑をまばゆい陽光が透かし、そうして柔らかくなった光がわたしの足元でゆらり、ゆらりと揺れる。
ずっと上に目を向ければ青色の空がまるで水をたたえた湖のようにゆったりと、優しく広がっている。
靴を照らしていた光のゆらめきが消えた。雲がその光源を隠したのだ。でもそのおかげで、地面を懸命に進んでいくアリを見つけた。砂糖のような白いかけらをくわえ、どこまでもその脚を動かしていく。
葉っぱが膝の上に落ちてきた。細長いそれは、松の木のものだろうか。ふと、小学生の頃の運動会を思い出す。
50m競争のスタート地点には、大きな松の木があった。体育座りで出番を待つあいだ、胸の鼓動を太ももで感じながら、松の細長い葉っぱで地面に絵を描いていた。夏の容赦ない日差しと、校庭の砂の匂い、周囲の生徒の喧騒とともに、あの長いようで短い数分間にわたしの胸をいっぱいにしていた期待と緊張の思いが、ふと心によみがえった。


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