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添削屋「ミサキさん」の考察|13|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた⑬

|12|からつづく

3⃣知らないことは「知っていること」にたとえる

 2つの異なるものに、類似性(似ている点)と関連性(関連している点)を見つけ、それを結び付けて表現すると伝わりやすくなります
 Aという事象をBという事象にたとえるときは、
「読み手がBのことを知っている」
「AとBが間違いなく似ている」
ことが前提です。

「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」70ページ

例文が2つ挙げられています。

例文1
【比喩のない例】
 いろいろな個性を持つ人たちが力を合わせるからこそ、強いチームが完成します。
【比喩がある例】
 お城の石垣には、さまざまな形の石が使われています。形が違う石を組み合わせることで、頑丈な石垣ができ上ります。
 組織も同じです。
 いろいろな個性を持つ人たちが力を合わせるからこそ、強いチームが完成します。

同上

例文2 
【比喩のない例】
 法人における決算書は、どのようなお金の使い方をしてどのような利益をあげたのか、会社の業績を数字で表したものです。
【比喩のある例】
 法人における決算書は、学生の成績通知表と同じです。
 どのようなお金の使い方をしてどのような利益をあげたのか、会社の業績を数字で表したものです。
 勉強の成果が数字で評価されるように、会社の業績も数字で評価されます。

「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」71ページ

ビジネス書や自己啓発本に多いタイプでしょうか。

というので、1個探してみました。

「ゴールの内容はさまざまですが、共通するのはすべての出発点であること。……
 登山にたとえるなら目指す山(ゴール)が決まることで、初めて必要な準備と行動が決まるということです。
 エベレストを目指すなら超本格的な装備や相当なトレーニングが必要ですが、近所の200メートルの山ならそこそこの軽装でも対応できます。どの山を目指すのか決まっていない段階で準備を行っても、見当違いになる可能性が大です。
 こうやって登山でたとえれば一目瞭然なのですが、強みについて考える場合はなぜかこの原則が忘れられてしまいます。
 多くの人は、どの山に登るか(何をゴールとするか)が決まっていないのに、とにかくいい道具(強み)を見つけなければと焦っています。道具(強み)を持たなければと焦るあまり、肝心のゴール設定が後回しになっているのです。

田中祐一著『書くだけであなたの「強み」が見つかるノート』より。

小説の例では、以下の文章はこういう比喩にあたるでしょうか。

直木賞作家、桜木紫乃さん『ラブレス』より。

 到着予定から十分ほど遅れて、釧路からの列車がホームに入ってきた。百合江は駅舎になだれ込んでくる人の顔を確かめ続けた。不意に、人波のなかに見たこともないようなあか抜けた少女が現れた。赤いオーバー姿で、雪みたいに真っ白い顔をしている。おかっぱ頭にオーバーと同じ赤いカチューシャを着けていた。茶色いウールの背広を着て鳥打ち帽を被った男に手を引かれ、まるで異世界へ迷い込んだウサギみたいな目をしている。
 フランス人形――。
 市街地に住む友だちの家に遊びに行った際に見た、フランス人形そっくりなまるい顔立ちと白い肌は、姉の自分はおろか母にも父にも弟たちにも似ていなかった。が、百合江はそれが妹の里美であることを疑わなかった。

『ラブレス』

……比喩に関してこれで終わりにして、次回から次の章に入ります。

|14|につづく




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