くやしい気持ちはどうしてる?
みなも(3歳児)おおぞら(4歳児)だいち(5歳児)の子どもたちが室内の活動でフルーツバスケットをしていました。
室内で過ごすことはあっても、室内でルールのあるゲームをするのは、はじめてでした。
初日、担任のちなちゃんが子どもたちにルールを説明していました。
子どもたちは、はじめてのフルーツバスケットに興味津々。
その一方で、ちょっとドキドキしたのかな?あまり気持ちが乗らなかった子は見学することも選択できます。
みんなそれぞれ思ったことを伝えながら、初日のフルーツバスケットは、楽しい雰囲気で進んでいきました。
いつも戸外遊びでする、鬼ごっことは違うルールのあるゲーム。
こんなゲームができるのも、子どもたちが大きくなったからだなぁ…。
そして、幼児クラスの人数が増えたからこそだなぁ…とその光景をみてしみじみと思っていました。
巻き起こる気持ちのやりとり
そして、次の日。
この日も室内で幼児クラスの子どもたちが過ごしていました。
昨日お休みだった子もいたので、もう一度ルール説明からスタート。
昨日フルーツバスケットを経験した子どもたち
は、ルールを確認する時間。
和やかに始まったなぁと見ていたのですが、その後、何気なく通り過ぎた時になにやら不穏な空気感。
「やりたくなーい」
「鬼になるのやだー」
「みてるー」
などなど、昨日とは違う子どもたちの姿がありました。
どうしたかな?としばらく見ていましたが。
ゲームをやりたかった子どもたちも、なんだかこの空気感でつまらなくなってきてしまったというような表情をしていました。
そこで、少しでもこの空気感が変わるキッカケになれたらという気持ちで、私も参加することにしました。
「楽しそう♪かおちゃんも一緒にいれてよ〜」
と子どもたちに声をかけると
「なんでー!」
「いいよ!」
「かおちゃんはダメだよ〜」
などとさまざまな反応がすぐにかえってきます。
「フルーツバスケット面白そうだからやってみたい!」と伝えると仲間に入れてくれました。
「やらない」と言っていた子も、再度ゲームの輪に入ってくれました。
さぁ、仕切り直してゲーム再開です。
参加しているみんなの目はとても真剣で、昨日見た時よりも椅子に座るスピードが上がっていました。
2回鬼になると負けというルールだったのですが、私もしっかり鬼になり子どもたちの本気の前に負けてしまいました。
ゲームは進み優勝者が決まり、勝った子たちはジャンプをしながら喜んでいたのですが、その時「ぜんぜん面白くない〜!」という声と共に大きな泣き声が聞こえてきました。
くやしい気持ちはどうしてる?
勝って嬉しい子がいれば、負けてくやしい子もいますよね。
素直にくやしい気持ちを泣きながら伝えるAちゃんを見て
「Aちゃんが泣いちゃうなら楽しい気持ちにならないからゲームやりたくない」とつぶやくB君。
そこで、担任のちなちゃんがみんなを集めました。
負けた悔しさから泣いているAちゃんは私の膝にきて大きな声で泣き続けていたのですが、「みんなの声が聞こえないから、大きな声じゃなくて小さな声で泣くことできそう?」と話すと、ヒックヒックと泣きながら小さな声で泣くことに協力してくれました。
「ありがとう、これでみんなの声も聞けそうだ」
そう伝えて背中をさすっていたら気持ちも少しずつ落ち着いてきたようでした。
ちなちゃんから
「今日みんなでフルーツバスケットしたけど、いろんな気持ちの人がいたよね?」
・やりたくないから見学の人
・やっていたけど途中で抜けた人
・鬼になりたかった人
・鬼になりたくなかった人
・勝って嬉しかった人
・負けて悔しかった人
「ちなちゃん、これからもいろんなゲームをみんなとやりたいなと思っているんだけど、できそうかな?」
そう伝えてくれた言葉に、さっきまで泣いていたAちゃんが
「負けるのが嫌だから、私が負けないゲームにしてほしい」と話しました。
「負けることがないってことは、勝つこともないから勝って嬉しいって気持ちにはなれないけどいいのかな?」とちなちゃん。
「この悔しいって気持ちも大切な気持ちなんだけどなぁ」と私。
「でもぼくは、この子が泣いちゃうと悲しい気持ちになるから嫌だな」とB君。
「そっか、泣いちゃうと嬉しい気持ちがなくなっちゃうよね」と私。
私「悔しくても泣かないようにはできないのかな?」
Aちゃん「だって涙が自然にでてくるんだもん」
私「そうか、くやしいと涙がでてきちゃうんだね」
輪になった子どもたちも、ちなちゃんも私もシーンとした空気感の中で、それぞれが考えてくれていました。
それぞれの気持ちへの向き合い方
私「みんなの中にも負けた子がいたけど、くやしくなかったのかな」
Cちゃん「あのね、くやしい気持ちがあっても楽しい気持ちに変えてるよ」
B君「あっ!ぼくも」
ちなちゃん「みんな悔しい気持ちを感じた時にどうやって楽しい気持ちにしてるか教えてくれる?」
D君「ぼくは(好きなアニメの)歌を歌ってる」
B君「ぼくは筋肉がおさえてくれている」
Cちゃん「からださんがやってくれてる」
Eちゃん「自然と変わってる」
F君「涙が出そうになるけど、頑張って乾かしてる」
ちなちゃんの問いに
次から次へ自然と真剣な顔で発言していく姿は、とても素敵な光景でした。
そして、みんなが発言するたびに、ちなちゃんはその子が伝えてくれた方法と言葉を繰り返し整理してもう一度子どもたちに伝えてくれていました。
ちなちゃん「教えてくれてありがとう。みんないろんな方法でくやしい気持ちを楽しい気持ちに変えようとしているんだね」
私「Aちゃんも今すぐにはくやしい気持ちを楽しい気持ちに変えることが難しいと思うけど、少し練習してみようか」
輪になって一緒に考えてくれる仲間たちがいること、誰も誰かの発言を否定しないこと。
本当に素敵な時間が流れていました。
みんなの話しを聞き、その後はゆっくりAちゃんと話す時間を作ることにしたちなちゃん。
Aちゃんはすぐには納得の表情にはなりませんでしたが、少しちなちゃんと話をしたことで気持ちが切り替わり次の遊びの世界へと向かっていきました。
フルーツバスケットから巻き起こった、それぞれの子どもたちの気持ちへの向かい方。
このゲームをしたからこそ感じることができた、負ける悔しさがあったからこそ生まれた時間。
勝ち、負けをつけることだけが正義ではなく、そこに向かうプロセスが大切だよね!と日頃感じていましたが、勝ち、負けがあるからこそ感じられる悔しさや悲しさ、嬉しさなどたくさんの気持ちへ向かうことができること。子どもたちに改めて大切さを教えてもらった日になりました。
そして、フルーツバスケットから巻き起こったきっかけを見過ごすことなく、丁寧に子どもたちと一緒に考えられる素敵な保育者がいてくれることに感謝の気持ちでいっぱいです。
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