雷おこし薫子の詩【1~50】
1日目
ハロー、久しぶり。 元気にしてる? 元気なら嬉しいわね。 私は空を眺めたり、 山を登ったり、 海を泳いだり、 いろいろやってるわ。 明日はアップルパイを作ろうかしら? まあ、そんな感じ。 つまり、元気ってわけね。 またあなたに会いたいわ。 それじゃあ、バイバイ。
2日目
今日も良い天気ね。 ワクワクするわ。 あなたはどうかしら。 ワクワクしてる? 私はジェイズ・バーに寄ってから 映画でも観ようと思うわ。 お友達も一緒にね。 もし良かったらあなたもどう? 返事待ってるわ。 それじゃあね、バイバイ。
3日目
夢を見た気がするの。 だけど何も覚えていない。 そういうことってあるわよね。 あなたもある? 私は過去を振り返らないし、 未来を見据えたいわけでもないの。 今しか見えない。 この瞬間だけを楽しみたい。 それってわがままかしら? でも、わがままでもいいわ。 私は私だもの。
4日目
小説を書いているわ。 真っ白な紙の上に、 悪夢のような、 時間を置き去りにするような、 誰にも止められないような、 小説を。 楽しくあれ。 楽しくあれ。 そんな思いを込めて。 あなたは何か書いてる? 一緒に表現しましょう。 文章の中で語らいましょう。 一緒に。
5日目
どこにだっていけるわ。 世界は丸いんだもの。 立ち止まるのもいいけど、 歩き続けなきゃ 見えない景色もあるじゃない? あなたはどうかしら? 一緒に歩きましょう。 見たい景色を探して。 どこまでも。 どこまでも。 遠くまで。 遠くまで。
6日目
アップルパイを焼いているとね、 心が穏やかになるの。 嘘じゃないわ。 生地が少しずつ膨れていく、 香ばしい匂いが漂ってくる、 その感覚が好きなの。 あなたも焼いてみてはどうかしら? 作り方なら私が教えてあげる。 とりあえずやってみましょう。 さあ、ほら!
7日目
新しい朝がやってくるわね。 何をしていても、 何もしていなくても、 新しい朝はやってくる。 生きている限り。 生きている間ずっと。 私は歓迎するわ。 寛大な心で。 ようこそ、新しい朝。 ようこそ、新しい私。 そして、あなたに、 この気持ちを届けたい。 どうかしら?
8日目
ある遠くの町に、 私のことを知る人がいるらしい。 私は手がかりを求めて、 その町を訪れる。 寂れた町に人はいない。 もうこの町は終わっているんだ。 捨てられた町、 捨てられた私、 重なる部分があるだろうか。 干涸びた骨、 燦々と輝く太陽、 砂場の城、 あなたは何?
9日目
ある晴れた月曜日に、 流れる川と、 佇む山脈と、 揺れる雲と、 そして私がいるの。 落ち込んでいる暇なんてない。 しゃがみ込む必要なんてない。 あなたもそう思うでしょ? 私だけじゃない。 あなたもそう思うなら、 それってとても素敵なこと。 私とあなたの考えが、 一つになって進んでいく。
10日目
小説は鏡。 自分の心を映す鏡。 小説を書くとき、 小説を読むとき、 私は私の心に触れる。 私の心が何を思っているのか、 私の心は何に動かされるのか、 感じ取ることができる。 一緒に小説を楽しみましょう。 あなたの小説が読みたいわ。 待ってるわね。 いつまでも。 いつまでも。
11日目
何も考えず、ただ一人。 空を見上げて、ただ一人。 そういうときには、 きまってアイツがやってくる。 頭の隅、声が聞こえる。 北風が強く吹いている。 遠く故郷を見つめている。 滲めば蒼、 足掻けば紅、 荒む心は黄金色。 そして尚、 あなたは行方知れず。
12日目
いつまでも一緒に 遊びましょう。 いつまでもいつまでも ずっと一緒に 遊びましょう。 何をして遊ぶ? アップルパイを焼く? それとも凧揚げ? 何でもいいわよ。 私はここにいるから。 あなたのそばにいるから。 探さなくてもいいわ。 私は隠れてないのだから。
13日目
何をせずとも、 あなたなら大丈夫。 私はそう言い切れる。 声を聞き、 走り出せば、 いずれは街に たどり着く。 その街は何? どこにあるの? あるいは、 どこにもないのかもしれない。 そうだとしても、 そうだとしても、 私はいつもあなたと共に。 ハロー、元気にしてる?
14日目
太陽が私を呼んでいる。 こっちにおいで。 こっちにおいで。 私は少し近づいてみる。 一歩ずつ。 一歩ずつ。 あたたかい。 太陽はあたたかい。 なぜそんなにあたたかいの? 私が尋ねると、 太陽は笑って言った。 それはね、心さ。 心があたたかいのさ。 君の心も、 私の心も。
15日目
ここから一歩、 あるいは二歩、 あるいは三歩、 歩いてみる。 見える景色はどう? 何か見える? 遠くを見渡すことも、 近くを凝視することも、 あなたならできる。 そうでしょ? 一緒に探しましょう。 私たちの景色を。 立ち止まってもいいわ。 見える景色は同じじゃない。
16日目
この瞬間、 時が止まる感覚。 人生の思い出。 行き違う心。 危ぶまれる理由。 その次の日は、 果たして明日だろうか。 分からない。 私には分からない。 それでもいい。 それでもいいと思えるわ。 あなたの考えは、 私には読めないけれど、 それでもいいの。
17日目
宇宙の外側に辿り着ける? 宇宙の外側は存在する? 私とあなたなら分かるはず。 その答えがたとえ無限でも、 私とあなたは 連続で繋がっているから。 夢の後ろを追いかけて 何万光年も先へ進む。 振り返ることはない。 振り返る必要はない。 何もしなくてもいい。 それが答えなら。
18日目
いつもと違うこと、 いつもと同じこと、 ここから見える景色、 沸かした水は やがて元に戻る。 沸かした水は やがて元に戻る。 全ては偏見であり、 正しさとは何か、 常に自問する日々。 大声で叫べば、 誰が気付いてくれる? あなたは気付いてくれる?
19日目
心地よい草の音、 拍動する獣道、 臨界点の順番、 隣り合うシンパシー、 行手を遮る世界、 その瞬間に吠える、 我が両手に触れる、 目の前には虎、 頭上に骸骨、 有名無名関係無し、 太陽は全てを照らす、 影が地からのぼり、 あなたの背後、 どこまでも行け、 どこまでも行け。
20日目
歩くほどに、 空が高くなるわ。 見晴らしの良さは どこにも負けない。 挨拶をしようとも 誰も止まってくれないけれど、 それでもいいの。 文字を書き連ねれば いずれ文章になるから。 文章になれば あなたに伝わるわよね? 私はそう信じている。 信じているから。
21日目
選び抜かれた宝石や 雲の隙間から溢れる光や 揺れる水面は、 いつまでも輝き続けるが、 その輝きは誰のものでもなく、 ゆっくりと静かに 輝いているだけだ。 輝きとは答えであり、 あなたは答えを探している。 いつまでも光り続ける答えを 自分の物にしたいと考えている。
22日目
歌を歌えば、 数を数えれば、 私は私を信じられる。 滲み出る息吹が 熱と空気と交わり、 世界は平行線となる。 私は文章を綴り、 あなたの声を聞く。 あなたは言うだろう。 端と端を線で結べば それさえできれば きっとまた会えると。 その証として 私はひとり船に乗る。
23日目
気持ちを高く維持して さらに上へ跳び上がる 指先を温めれば 心も温かくなるわ そろそろ始まる死際 終わりの始まりは 永遠となるかしら? 遠くに見える 山々の連なりは 太陽の光を飲み込んで やがて月を生み出す そしてあなたは その空を眺めて ため息をひとつ ため息をふたつ
24日目
レンガ造りの家から 鳥の鳴き声が聞こえる それは朝目が覚めて 最初に聞こえる声 太陽よりも早く 光を置き去りにして 鳥の鳴き声が聞こえる 川のせせらぎにも似た 山々の唸りにも似た その声は朝の到来を 私に伝えてくれる 今日を始めましょう さあ、早く! さあ、早く!
25日目
臆病風に吹かれて 大切な勇気の証を 手放してしまった 私が目指していた 輝きはいつだって すぐそこにあった 私は尋ねるだろう どこに行ったのか あなたはこたえる 何もなかった、と だからこそ進むさ どこまでも進むさ 行き先は知らない 気持ちは違えない 何もない道を行く
26日目
ギターの音色が やたらと騒がしいから 私は声をかけた 誰に向けて 歌っているの? ギターはこたえる 誰でもないさ 雲の切れ間から 降り注ぐ光が ギターと私を照らす 天使は言った あなたの歌声は どこまでも届いている だから続けなさい それは夢のような時間 終わりはない
27日目
夜風を浴びながら 明日を想う 銀河のほとりで 春の陽気を待つ私は ひとりではあるけれど 寂しさを覚えない あなたの行方を 探す手間すら 私には必要ない だからこのままでいい だからこのままでいい 誰にも咎められず 飽きることもなく ただジッと座って 明日を待ち望む
28日目
ちぎれた雲が 風に流されて 私の頭上を飛んでいる 凍てつく冬 山も川も海も 全て凍りつく 住めば都 読めば禁書 旅を始めるには ふさわしい季節 何も持たず 何も考えず ただひとり行くだけ 行き先はあとで 決めたらいい あなたも一緒に どうかしら? きっと楽しくなるわ
29日目
トンネルを抜けると そこには犬がいた。 薄茶色の毛並の柴犬で かなり年老いていて 憂鬱そうな表情をしていた。 遠くには海が見える。 カスピ海の優雅な波は 今日も静かにたゆたっている。 私はたまらず声をかけた。 「何を見ているの?」 犬はこたえた。 「世界そのもの、本質」
30日目
何も書けない そんな文章から始まる 私の詩は曇り空 海を泳いで渡れば やがて月にたどり着き クレーターに沿って歩く 月のうさぎは語る 「ここから始まる 何も存在しなくとも だけど、もしも、 それが嫌ならそれでもいい 答えなんてないのだから」 あなたもきっと 答えは知らない?
31日目
私は存在する 私は存在している 考える私は 存在しているとしか思えない 冷たい風が通りすぎて ようやく私は そのことを知るだろう 恋焦がれるあなたの存在も まるで譲れない子犬のように あるいは世界と同じく 広大であり壮大 一緒に見届けましょう 最後まで 最後まで
32日目
もう遅いのだろうか あなたに伝えることは できるだろうか 存在とは何か あるいは時間とは何か 夢のない世界で あなたと私だけが 問いかけ続けている 人が人でいる限り 答えは出ないかもしれない それでも問いを持つことは 必要かもしれないと あなたが教えてくれた だから問う 「真の答えとは?」
33日目
残像を通り越して 光速の世界を歩く 行手を阻むオオカミと 後方には巨大なトラ 絶体絶命と言い換えてもいい 危険と隣り合わせ 負けることは許されない 勝つことが必然 それはまるでイタチごっこ 追っては追われて 追われては追ってを繰り返す あなたはどちら側に立つ?
34日目
今日もまた一日が始まる いつもと同じ日々 何も変わらない 何も変えてはいけない 世界は常に変化している 世界は常に変化を求めている だからこそ私だけは 同じままでいたい 同じ私でいたい あなたは変わってる? あなたは変化を求めてる? 今日もまた同じ一日が始まるけれど
35日目
自分の心と対話をはかる 私は何を思っている? 私は何によって感動する? 最後に笑ったのはいつ? 最後に泣いたのはいつ? 自分の心の声を聴いてみる 心は静かに語り出す ある晴れた土曜日の朝 燦然と輝く太陽の下 私はあなたと共に 目の前を照らしていたい 永遠に 永遠に
36日目
夢を見ていた気がするの あんまり覚えてはいないけれど 私が生まれ育った故郷で 爆走する車に乗って あてもなく楽しいドライブ 何が起ころうともお構いなし 自由人としての役目を果たせ あなたも一緒にいたわよね? あなたも私も同じ穴の狢 どこまでも行きましょう 楽しく最後まで
37日目
また月曜日だ 繰り返しやってくる 私に断りもなしに 手紙を書いてみても 小説を書いてみても やっぱり月曜日はやってくる 新鮮な気持ちはもうない 新鮮な気持ちを 絶やしてはいけないのだけれど 明日になればなんて そんなことは考えないで あなたは今日を生きて
38日目
神は細部に宿るわ だから諦めてはいけない 妥協してはいけない 許す限りの時間をかけて 描き続けなければいけないの 一文字一文字に魂を込める 文字の連なりはやがて あなた自身を形づくる そしていつかきっと あなたの作品は私に届く 私は待っているわ いつまでも 永遠に
39日目
少しくらい遅れてもいい そんな気持ちで生きている 私は生きている? あなたは生きている? 聞こえない声に耳を傾けては したり顔で何度も頷く 満足を知らない化け物 無知と罵ることはない 誰もがそうなる運命なのだから 運命に抗うこと それ自体ほ無駄ではないけれど
40日目
目を瞑れば見えてくる 世界の端に浮かぶ島 そこに住まう人々は 甘い林檎の汁をすする 記憶は定かではない だけども確かに知っている 私とあなたもその島に住むだろう 一緒に林檎の汁をすするだろう 描けない絵は存在しない 全てはすでに確定している 何もせず見守りたいわ
41日目
弾丸のように飛び込む 世界に波紋が満ちる 波動は鼓膜を揺らし 音として伝わる みんなが私に気づく あなたが声をかける 「愛を知れ そして、行動せよ」 私は頷き、瞬きを返す 仲間を忘れないと 教えてくれたのはあなただった 満ち足りた気持ち まるで朝露のようね
42日目
美味しいものを食べよう 体の奥底から元気が湧いてくる たとえばアップルパイ 甘くて香ばしくて いくらでもお腹に入る 焼きたてが一番おいしいことを 私もあなたも知っている 満足するまで食べ尽くしたなら あとはお昼寝をしましょう 食べて寝て食べて寝てを繰り返す
43日目
意味があるなら書き続ければいい 価値があるなら書き続ければいい 何が意味あるものなのか 何が価値あるものなのか 私には分からないけれど きっとあなたが教えてくれる あなただけが隣にいてくれる 答えを求めて探し回るよりも 全てはあなたの中に存在する
44日目
何も見えないほど 何も聞こえないほど 閉ざされた夢中世界において みんなが嬉しそうな顔をして 肩を組んで輪を作っている 何がそんなに嬉しいのかしら? 何がそんなに楽しいのかしら? 私もその輪に入ってもいい? アップルパイを持っていくわ あなたもどうかしら?
45日目
急に忙しくなったり 何も用事がなかったり 毎日はめまぐるしく変わる 世界は変化を常としている それでも私は変わらずにいたい 変わらずにアップルパイを焼きたい アップルパイさえあれば なんとなく生きていけるわ なんとなく生きていれば 楽しいこともきっとあるわ
46日目
選ばれた者と選ばれなかった者 選べた者と選べなかった者 全ては選択の中にある 何かを選ぶとは 何かを選ばなかったということ 人生は選択の連続らしいけれど 選ばなかった選択肢が 山のように積もっている ということかしら? それなら 今から探しにいってみる?
47日目
ひりつくような冷たい風が 私の横を通り過ぎていく 冬のどんよりとした灰色の雲 静まり返った私たちの町 あなたと歩いたあの道は どこまで続いていたんだっけ? 気がついたらもう あなたはいなくなっていた 雲の切れ間から覗く太陽の光 同じことの繰り返し
48日目
誰にでも言い分がある 全ての行動には理由がある まずは話を聞こう そして情報を集めよう 真実は脆く不安定なものだけど 真実を知ろうとすることは とても大切なことだから 私はあなたの話が聞きたいわ あなたの考えが知りたい いつかきっとそれが声になる
49日目
私が思い描く無限の想像世界 あなたが暮らす反転夢中世界 聞こえない音は無視をして 見えないものほど憧れて 進む道はたくさんあったけれど 選べる道はたったひとつだけ 私とあなただけで話し合いましょう 答えはひとつではないのだから 夕暮れに向かって
50日目
自分の考えほど 当てにならないものはない 人の考えは全て偏見だ 真の正解があると妄想している 人の数だけ考え方が存在する 人の数だけ世界が存在している 人がいるからこそ世界は存在する 宇宙は観測者ではない 宇宙は観測者を必要とした 観測者は人だ あなたは観測者だ
以上。
ここまで読んでくれてありがとうね。それじゃあ、バイバイ。
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