見出し画像

雷おこし薫子の詩【51~100】

51日目

忙しい毎日が戻ってくるわ 誰にも代わることはできないし 誰とも代わってはいけない 自分でやり遂げなきゃいけない それが日常というもので 少しでも前に進むしかないの それさえ分かっていれば あなたはもう一人前 幸せはもうすぐそこにある 一歩一歩と進みましょう

52日目

犬と遊ぶ少年を眺めながら 心地よいまどろみの中にいる これは夢かしらと思うけれど ラジオからは陽気な音楽が流れる 私はフォークソングが大好き だからこれはきっと夢じゃない 何を信じるかはあなた次第 ギターを片手に海を臨む 静かな波の上にあなたがいる

53日目

やることがたくさんあって 忙しい毎日が繰り返されて 私はどこに向かって歩いているのか たまに分からなくなるけれど それでも好きなことは 好きなままであってほしいと 自分に言い聞かせるの あなたの好きなものは何? 一本の柱に寄りかかって 私たちは生きているから

54日目

すっかり詩を書いた気になって のんびりと一日を過ごしている そんなんじゃいけない 私はもっと書かなきゃいけないの 諦めた瞬間から衰えはやってくる そんな話をよく聞くでしょ? 私たちはいつも死と隣り合わせ すぐに崖から落ちてしまうの あなたは空を飛べる?

55日目

どうしようもない不安に 私たちはいつも晒されている どんよりとして凍てつく日々 私たちは逆境に佇んでいる どうしようもないなら いっそのこと楽天的に 生きていけたらいいのにと 思ってしまうこともあるけれど 私はあなたと旅に出たい 描けない絵なんてないでしょ?

56日目

遠くを見ようとすればするほど 近くを見ることがおろそかになり 近くを見ようとすればするほど 遠くを見ることがおろそかになる もっともっと遠くを見ながら もっともっと近くを見ることが あなたに託された使命 適切な距離のバランスを取ること 人間は偏りの中に生きている

57日目

他人に寄りかかって生きるよりも 自分の柱で立っている方が 生きやすいだろうことは 誰でも理解していることだと思う しかし、それと同時に 人間は一人では生きられない 誰かと助け合って生活は成り立つ あなたの力が私を助けて 私の力があなたを助ける 死ぬまでずっと

58日目

海岸沿いの道を歩いているとね 風が強くて少しフラついたり 熱く滲む太陽が照りつけたり 白い軽トラが通り過ぎたり 日常の風景が横切っていくの 私が浜辺へ下りていくと 一人の少年が声をかけてきた 「何を探しているの? お姉ちゃんはどこへ行くの?」 私は答える 「秘密」

59日目

いつの間にか時間は過ぎ去って 振り返ってみても元には戻らない あるのはただひとつ現在のみ 現在だけが私たちに与えられている 遊び疲れた人から真面目になる 真面目に生きることが大人の証 子供と大人の間でのんびり過ごす 私とあなたは何者なの? 狭間とモラトリアム

60日目

みんなが楽しそうに笑っている 楽しいところには人が集まる 人間はひとりでは生きられない 人が集まって社会を形成する 人は助け合って生きているの 私もあなたも誰かに助けられている 誰もが生きる糧を探している 社会の行方は誰も知らない あなたの生きる意味は何?

61日目

書いては消して書いては消して 一文でも多く書き進めたい 一文字でも多く書き進めたい その気持ちだけを頼りに 私は前に前に歩き続けている 過去を振り返るくらいなら 前に一歩でも進めた方がマシだ 宇宙は果てしなく広く それは紙の上でも同じ あなたもそう思うよね?

62日目

何があったのか、それとも何もなかったのか、私には何も分からないけれど、分かる必要もないのだと私は思っていた。夕暮れ時に河川敷で太陽を眺めることしかできなくても、あるいは、朝日を眺めて涙を流したとしても、きっとあなたはもういない。それだけは理解していた。

63日目

遠くまで歩いてみたいと思うけど、夢を見ながら未来を望む。空からは落ちる景色が幾星霜、何事もなく何よりもなく。集まれば心地よい音囃し立て、描くその色十人十色。最後には残る事柄あなただけ、一緒に遊ぼう一緒に帰ろう。

64日目

ここからどう向き合えばいいのか分からないし、どこに向かって歩けばいいのかも分からないし、誰が私を呼んでいるのかも分からないし、あなたがどこにいるのかも分からないし、私とあなたが出会った意味も分からない。本を積み重ねた理由を知りたいだけなのにね。

65日目

気がついたら家を出て、公園のベンチに座っていた。朝の冷たい風が体にまとわりつく。太陽は淡く輝いて私を照らしている。公園には私以外に野良犬が一匹、食べ物を探してフラフラと歩いていた。私は犬に声をかけた。「気分はどう?」犬は鼻を鳴らして私の前を通り過ぎた。

66日目

狂気の雨が降りそそぎ、人間の皮膚を溶かして、内臓を露呈させる。隠していた秘密は全て周知の事実となり、正義も悪も等しく終わる。どこまでもハリネズミは歩みを進め、帰りの道など知る由もないだろう。あなたは何を守っている? あなたは何に守られている?

67日目

何かを創作するというのは、とても楽しいことだ。なぜ楽しいのかは分からない。だけれど、何もなかったところに、新しく何かを生み出すという喜びは、何よりも最上の喜びである。だからあなたにも創作してほしい。そして、みんなでその喜びを分かち合おう。

68日目

コーヒーの香りが漂ういつも通りの朝。いつもと同じようにパンを焼き、いつもと同じように太陽に一礼する。いつもと同じように挨拶を交わして、いつもと同じように散歩に出かける。曲がり角にはワンコが一匹、私に甘く声をかける。こんな日はあなたに会いたいわ。時間ある?

69日目

走りたいだけ走ってあとは眠るだけ。気がつけば向こうに誰かがいる。「何か用ですか」私がそう尋ねると世界はひっくり返って元に戻る。いつも通りワンコが私の足に擦り寄ってくる。「何か用ですか」私がそう尋ねるとワンコは本当はワニだった。あなたほど元気ではないけれど

70日目

知らないことは知らないままに、足りないものは足りないままに、流れる風は流れるままに、地に足をつけゆっくり立ち上がれ。冬が終わり春を感じる。今日という日に感謝を込めて、精一杯楽しんでみようかしら。まずは深呼吸から。ゆっくり吸ってゆっくり吐く。すべてゆっくり

71日目

尋ねれば答えがもらえると信じ切っている私に対して、嘲笑を浮かべるあなたの顔が、私の眼に、いかに醜く映っているのか、教えて差し上げたいくらいだ。話したいことは山ほどあるが、口から出るのは、ほんの一握りでしかなく、当然、答えは遠く退けられるだろう。

72日目

滅びかけた関係を眺めて、おかしくなった世界を恨むよりも、自分が変わることを理想としたほうが多少は有益だと思われる。ゆっくりゆっくりと水が流れるように自分の変化を感じる。目標とする姿を思い描きながら、そこに向けて変化を伴う。そして私とあなたはやがて一つに。

73日目

知らない街を目的もなく歩いていると不思議な気持ちになる。フワフワするようなソワソワするような感覚。私の知らない場所でも人の営みがあるんだという当たり前の事実に直面する。もしもこの街で暮らしていたら私はどんな生活を送っていたのだろう。あなたも一緒に暮らす?

74日目

自分が何をしたいのかもよく分からないし、相手が何を欲しているのかもよく分からない。どこに行けばいいのかも分からないし、誰に会えばいいのかも分からない。私はなぜこんなところにいるのだろう。あなたはなぜそこにいるの? 何をしてもいいし、何もしなくてもいい。

75日目

あなたに問う。風を追いかけてたどり着いた赤い屋根の家は、あるいは、干涸びた人骨が埋まっている桜の木の下は、誰の夢の中に存在するのか。また、人の夢はただの幻であり、現実ではないのか。反対に、現実は夢ではないのか。夢が現実であり、現実が夢である可能性は?

76日目

順調に物事が進んでいるときはその流れに身を任せればいい。何も難しいことを考えずに生きていけばいい。考えなくてはいけないのは順調に物事が進まなくなったとき。不調に陥ったときに人の本性が現れる。あなたはどこまで本気になれる? あなたの本気は如何程か。

77日目

朝早く起きたら太陽を見るといい。世界には自分以外にも誰かがいると分かるから。太陽が見えなければ虚空を見つめればいい。そこには「何も無い」があるから。すべての存在に意味が与えられて久しい。目覚めた獅子はもう眠ることはないだろう。あなたは何時に起きた?

78日目

新しい声を聞いて道をまっすぐに正す。駆け寄り難い人相には目を伏せて蓋を閉める。感謝の気持ちに応えようと努力することを禁じて、あなたが信じる言葉だけを頼りにしてね。本を読めば分かることがたくさんあるけれど、世界の広さに比べれば、そのほとんどは無いに等しい。

79日目

1日あけて詩を書いてみるという試みはただの言い訳なのだろうか。文字を紡ぐ意味を探しているが、そもそもそこに意味を求めることは正しいのだろうか。正しさは諸刃の剣で相手も自分も傷つけてしまう。必要なのは距離。あなたと私の適切な距離を探すことが必要なのだ。

80日目

太陽を探し求めて世界を旅する男が一人。光あるところに向かう日々。考え得る限りの場所は探し尽くした。向かうところはもう下しかない。下に下に落ちていく。病んだ村を抜けて、溶岩が溢れる地を行く。見つけた。虫だ。太陽を背負った虫がいた。あなたは虫に体を預ける。

81日目

時間の音を聞いたことはあるかい? 時間は音を立てて進んでいく。ジリジリ、ザアザアとラジオのノイズのような音を立てる。その音は常に鳴り続けていて、あなたの耳は聞き取れないかもしれない。いや、聞き慣れすぎていて、音を音として認識できないのだ。それが時間の音。

82日目

全ては幻で真実なんてものは無いのだと教えてくれたのは父親だったが、夢すらも一生懸命に生きろと言い残したのも私の父親だった。胡蝶の夢を知ったのはそれから十年後の話で、古くから伝えられた言葉にはまさに力が備わっていると感じた。あなたの感じる世界は何者?


83日目

書き続けることはできるだろうか。生き続けることはできるだろうか。死なないとはどういうことで、何を意味しているのだろうか。私はここにいるようでここにいない。何をすべきで、何をすべきではないのか、何も分からない。あなたの居場所すら理解できないのだから。

84日目

語り尽くした後の余韻が、ただひたすらに遠くこだましている。世界の共鳴はしばらく覇権を握り、そのあと少しずつ衰退していくだろう。栄枯盛衰は世の常であり、考えるべきことは自分の木の幹が何であるかということのみ。あなたは幹と枝葉の違いを理解しているだろうか。

85日目

金色の来世を思い描いて、何事もなかったかのように振る舞う仕草は、誰の目にも明らかなほど、ゆっくり、ゆっくりと、回り続けていた。あなたが腰掛ける椅子の滑らかさ、柔らかさ、そういったものの美しさは、私の存在を別にして、答えを見つけることは到底できないだろう。

86日目

人混みにまぎれて影を隠すよりも、素晴らしい荒野に佇み気配を殺すよりも、大きな虎や狼と一緒に世界を放浪するよりも、順番に現れる支配者たちと戦い続けるよりも、平和に毎日を暮らすことが美徳とされることをあなたに教えてあげたい。私は先に行っているから。

87日目

飛び出せば等速、止まればゼロ、心地よい距離を探してみれば有限。轟く機械音をのらりくらりとかわして、空と海に感謝を伝える。ハロー、元気にしてる? 有名な人間などこの世には存在せず、そこにいるのは私たちだけ。あなたと私でワルツを踊りましょう。

88日目

目を閉じれば思い出す。全ては幻で、世界なんて存在しないことを。誰もが一度だけ試みることができる。挑戦はやがて虚無を生み出し、引き返すこともできないだろう。いたるところに穴があいていて、完成形さえ想像できない。あなたはそれでも私と遊んでくれる?

89日目

十分すぎるくらいに霧が立ち込めた森、渦を巻く深海、山は山でしかなく、それ以上に距離を跨ぐ。進めるうちに進みなさい。それが答えだから。忘れないうちに朝が来て、また夜が来て、また朝が来て。何もしていないのに夢は儚く散る。そろそろあなたも考える時間かもね。

90日目

走り始めるまで何も考えず、息さえ止めてみる。無呼吸の世界の中で時間だけが傷跡を刻みつけている。しかし、時間は一定でも普遍でもなく、宇宙に依存している。時間は存在するのか、その問いはすでに終わっている。これから始めるのは存在の証明のみ。

91日目

寝て起きて、寝て起きて、寝て起きて、寝て起きて、気がついたら夜が降ってくる。降ってくる。降ってくる。夜が降ってくる。私は分厚い図書を紐解いて、探究心を活気づけ、文字の連なりをひたすらに読んでみる。読んでみると何か良いことがある?

92日目

海を渡るのはそんなに難しいことじゃないわ。八つに分かれた大地を幾何学的に描いてみれば、そのことがよく分かるでしょ?私たちは存分に科学を愛し、それはあるいは洗脳の域にまで達していて、私たちの頭を蝕むかもね。それならそれでいいわ。私の主義は果てしないから。

93日目

詩を数え直してみたら、二つずれていましたの。だから今日は93日目。91日目と92日目は消えたのではなく、すでに終わっていましたのよ。それは現実世界も同じ。ある事柄はこれから始まるようでいて、本当はすでに終わっているかもしれない。そうは思わないかしら?

94日目

どこからどこまでが人生の境界なのか、探してみたら虹の根元にたどり着いた。「こんにちは、お元気ですか。私はいつも宙ぶらりんでフォークソングを歌っています。ギターは上手ではないけれど、新鮮な気持ちだけは忘れないように心がけています。あなたは何をしてるの?」

95日目

心地よい羅針盤、遠方から百年、純真無垢な冬化粧、そろそろ答えは見つかったかしら?すぐ隣を走るフィアット600がここぞとばかりに急ブレーキをかけてカーブへと進入する。私は身を乗り出した。「世界が!世界がここにある!」だから一緒に行きましょう。後戻りなんてせずに。

96日目

始まりの音がダンスホールに鳴り響いて、宇宙的観点から、それがツバメの巣を指し示していることを私は察した。還元されたデカルトの考察は、それだけでは数学だと認められない。小さな粒がたくさん集まって、私たちに幸福と絶望を、同時に想起させる。そんな感じ?

97日目

穏やかな日々が過ぎ去って、また新しい穏やかな日々がやってくる。そのままなら腐るだけ。流れに身を任せて、変化を享受し、最後には赤い海へと流れ着く。「月よ、最上なる月よ。打ち砕かれた魂たちをどうか、どうか!」そして眠りにつく。終わりはやがて訪れるだろう。

98日目

「経験を積めば大人になれるか?」そんなことを聞いてどうするの。実践のみが世界を豊かにする礎であり、私たちは実践を通してでしか分かり合えないの。表現の無い未来は過去を持たない。それならば、一縷の望みにかけて、大海を渡るのも間違いじゃないわ。そうでしょ?

99日目

朝、時間が動き出す前、夜の残り香をかいで深呼吸を繰り返す私は、太陽の光を全身に浴びた。それが何を表すのだろう。私は羽化し、空へと高く飛び立つ。「ああ、友よ。私の存在を認知するお方よ。失礼でなければ、私の行手を照らしておくれ」それが合図であり、希望だ。

100日目

朝の空気にギターの音が溶け込んで、まるで世界が鳴いているみたいに回り出す。「ねえ、青い本を開くとそこから何が飛び出すと思う?」顔を洗い、歯を磨き、服を着替えて、身だしなみを整えて、今日が始まるってこと。私たちはすべてを理解している。なぜだろうね?

以上ですわ。

ここまで読んでくれてありがとうね。それじゃあ、バイバイ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?