老いて読み返したい一冊は?(藤村公洋)
顔が洗えない、という可笑しみ
美しき老いの羅針盤とはいうけれど、果たして「老い」というコンテンツにそもそも美しさなんて存在するのだろうかと、部屋の中をヨロヨロと歩きながら考えております。
そんな空想は車が空を飛ぶ未来都市と同じく、少年ジャンプ的な万能感がもたらすイノセントな白昼夢ではないか。実際のところの老いはちっとも美しくないのではないか。少なくとも今の僕はかなり醜い。
数日前にギックリ腰をやりましてね。
いやいやまいった。そろりそろりとしか動けないのですよ。
「家にいるときは顔も洗わない日が多い」なんてこのあいだ書いたもんだから顔くん(及び日本顔振興会など)が腹を立てたんでしょうな。バチが当たった。日常で困ることといったら何と言っても洗面台にかがむのがいちばんキツいのですよ。でもって出来ないとなるとやりたくなるのが人情ってもんじゃないですか。ああ、このくだりも実に醜い。何が「人情ってもんじゃないですか」だ。偉そうに適当な慣用句使いやがる。いかんいかん、ちょっとイライラしてるのかしら。
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