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老いて飲みたいのはどんなスープですか?(藤村公洋)

映画メシとスープの関係

映画の中にスープが出てきたらそれは大事なシーンである。さらに言えば、そんなスープのシーンが印象的な作品、それは決まって良作なのだ。

「本当に言いたいことは最初に書きましょう」という文章指南書やネット記事に従って簡潔に表現してみましたよ。今回お伝えしたいことは実に↑これだけでありまする。

もうひとつだけ付け加えるならば、ラジオの企画前から映画メシ探偵として活動するなかで多く作った食事、それは断トツでスープなのですよ。中国のスープ、アイスランドのスープ、アイルランドのスープ、ニューヨークのスープ、ブルックリンのスープ、韓国のスープ、日本のスープ、etc.etc.
2017年にまとめた映画メシブック(私家版)では15本の映画を取り上げておりますが、その中の実に5作品でスープを扱っております。
つまり、映画の中の食事シーンで僕がもっとも反応するのがスープだということですな。
ものすごく単純にいえば、映画とは弱きものの味方であり、スクリーンにスープが映るとき、その液体と立ち昇る湯気は弱者(作中の人物及び観客)にそっと寄り添う。と感じることが多いのですよ。
人がスープと向き合うときの心もち。冷たい心が温かく灯るひと匙。分け合う悦び。赦し。祝祭。微かな希望。

そんなスープコレクションに今回新たに加わったブリュッセルにおけるビーツのスープ。
映画『Here』でのスープは森や苔や雨や風と同様、作品にとって大事な主人公のひとつでございます。

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