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老いて読み返したい一冊は?(小原信治)

僕のラジオ構成術

 猫と暮らしたことがない。猫だけじゃないな。犬とも暮らしたことがない。人間以外の生き物とひとつ屋根の下で暮らした経験が、僕にはない。正確に言えばほとんどない(母がインコを飼っていたことはある)。

「渋谷のラジオの学校」(2020年8月5日放送分)はそんな話で始まった。収録開始早々ヘッドフォンの向こうから藤村さんの猫の鳴き声が聞こえたから、だ。
「僕が話し掛けていると思っているみたいなんだよね」
 藤村くんがやれやれという調子で言った。鳴き続ける猫を止めようともしない。怒ってもしょうがないしね。それが思い通りにならない生命と共生していく上で学んだことだと彼は言う。人間の言葉が通じない生命。思い通りにはならない生命。試されている僕ら。話はウィズ・コロナへとスライドし、やがて「コロナは宇宙人との共生の予行演習説」へと飛躍していく。着地点を探しながらゆるゆると飛び続ける僕らの会話。時折り鳴く猫。その情景を思い浮かべながら話していたら、頭の中である曲のフレーズが鳴り響いた。

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