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ご質問にお答えします(19)プロットにかける時間はどのくらいか

 さてさて、ずいぶん時間が空いてしまってもうしわけありませんでしたが、本日はお寄せいただいた質問にお答えしようかなと思います。もうね、サクサク行きますよ今日は!というわけで、お寄せいただいたのはこちら!

 なるほど。プロットは小説の要ですし、そこをしっかり作らねば、という気持ちもわかりますね。まあ、正直、プロットにかける時間については作家によって千差万別だと思うので、今回は主に、僕の場合こうしている、という回答をしようかなと思います。

 では、お答えしていきましょー。

■僕の場合

 さてはて、僕の場合どうだったのか、というお話ですけれども、僕は小すば新人賞をいただいた『名も無き世界のエンドロール』の応募原稿はほぼノープロットで書いておりまして、結末だけぼんやり決まっていて、あとはキャラもエピソードも構成も書きながら考える、というぶっつけ本番スタイルでやりましたので、質問者さんとは真逆ですね。まあ、プロットという言葉も知らん、という状態だったので、当時はプロットを立てるという概念がそもそもなかったんですけど。

 商業デビューしてからは、プロットをちゃんと立てる作品と、プロットざっくりで書き始める作品と使い分けるようにしておりますね。キャラクターを動かしたい作品は少しプロットの縛りを緩めにしますし、構成とか章割りが大事な作品は、ややきっちりプロットを作ります。作業期間は、短いもので数日、長いもので二、三ヵ月くらいですかね。全体のスケジュールの中ではやっぱり実際の執筆期間が一番長くなるので、プロットにかけるのは、全行程の1~2割程度というところではないでしょうか。

 もちろん、刊行ないし連載なんかが決まるまでアイデアをあっためておくこともありますんで、その期間も合わせたら結構長くなることもあります。

■プロ作家のプロット事情

 
 見出しで韻踏んじゃった(どうでもいい)。

 僕以外のプロ作家さんはどんな感じかと言いますと、これがまあ、冒頭でも述べた通り千差万別でございまして、それはもう緻密にプロットを立てる方もいらっしゃれば、メモ紙に殴り書き、みたいな方もおられます。要は、セオリーなどはなく、自分のやりたい、やりやすいようにやればいい、っていうことなのですよね。
 なので、プロットに時間をかけてがっつり練り込んでいく、というのも一つの形ですし、納得がいかないなら納得いくまでプロットに時間をかける、というのも別に悪かないと思います。

 ただ、プロ作家の場合はそこに「締切」という制約がついて回るわけなのですよね。プロットに納得いこうがいくまいが、作品を出さないことには食っていけない、という金銭事情もありますので、アマチュアの方ほどプロットにこだわり続けることもできません。なので、作品を仕上げなければならない「締切」から逆算して、執筆にかかるであろう時間や刊行までの準備期間を差し引き、残りをプロットの作成にあてるわけですね。

 プロの場合は担当編集さんとやり取りもしますので、スケジュール感なんかは編集さんに相談したり、「プロットの締切」を切ってもらったりもします。例えば、賞レースを狙いに行くような「勝負作」に関しては、事前の取材からプロット立てるまでみっちり数年かける、なんて作家さんもいらっしゃいますので、必ずしも一作のプロットは何ヵ月以内にやらねばならぬ、という決まりはないわけですね。

■持論とおすすめ

 とまあ、「別に自由なんだよね」という答えだと、質問者さんの悩みが全然解消されないだろうなと思うので、僕の持論的なことと、こうしてはどうでしょう?というアドバイス的なお話もしてみようと思います。あくまで個人的な意見ですね。

 まず、プロットを緻密に立てるか、いっそのこと書き始めたほうがいいのか、という点ですが、どちらがいいかについては、モノカキTIPS第5回でお話した「全能神型」「憑依型」の分類で考えるといいのではないかなと。

 「全能神型」の傾向が強い書き手さんなら、プロットは妥協せずにしっかり作り切ることをお勧めします。逆に、「憑依型」の傾向が強いなら、どうせ書いてるうちにプロットと違うアイデアだの展開だの入れるようになりますから、これはもう、軸となる要素だけ作った時点で書き始めてしまってもいいんじゃないかなと思いますね。

 とはいえ、「全能神型」だからと言って、プロットが決まらないことには書き出せない、という状態のままいると、一生かかっても応募原稿は出来上がらないので、例えば、応募する賞の原稿必着日から逆算して、いつまでにプロットを完成させる、といったセルフ締切を設定するといいのではないでしょうか。そこまでに何が何でもプロットを完成させるぞ、と思えばスピードも上がりますし、なにより、プロ作家になったときに必要なスケジュールに対する感覚も鍛えられると思いますし。

 あとは、質問者さんが現在どれくらいのクオリティの作品を書き上げているかがわからないので一般論として言いますけれども、アマチュア作家にとって一番大事なのは、「物語を書き、完成させる経験」だと思うんですよ。プロットにこだわるのは、文章力がついて、自分のスタイルが確立されてきた後。もしくは、何度か新人賞に応募して、受賞まであと一歩というところまで来ているときじゃないかなと思いますね。どれだけ優れたプロットを立てても、小説として形にする力が足りなければ、賞は獲れないわけですし。

 あと、アイデアやプロットにあまりにもこだわりすぎると、落選した作品を複数の賞に送ってしまう、っていうダメムーブをやりがちなんですよね。なまじこだわるともったいなくなっちゃうと思いますけど、アマチュア時代の作品というのは落選したら使い捨てにするべき(プロになってからの再利用はありだと思います)ですから、ひとつのプロットにこだわり過ぎるのは、アマチュアの方に関して言えばどんなもんかね、という印象です。もちろん、これは考え方がいろいろありますので、必ず、というわけじゃないですけど、僕だったら「四の五の言わずにまずは書き上げるべし」が答えになるんじゃないかなあと思います。

■結論

 プロットに費やす時間については、プロでも千差万別なので、質問者さんの執筆スタイル的にかっちりしたプロットが必要であれば、じっくり時間をかけて練り上げることも悪いことではないと思います。

 ただし、プロットにこだわるあまり作品が書き上げられない、というのは本末転倒なので、応募する新人賞に向けてスケジュールを立てて、プロットをここまでに仕上げる、という「締切」を自らに課すとよいのではないでしょうか。

 アマチュアにおいては、プロットのクオリティうんぬんよりも、書く経験、物語を成立させる経験が必要な方が多いと思うので、僕個人としては、プロットにこだわり過ぎず、完成稿を上げる経験をどんどん積む方が受賞への近道じゃないかな、と思います。

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というわけでして、今回はプロットに関するお話でした。そういえば以前、ツイッター上でプロ作家さんたちがプロットを晒す、というのが流行ったことがありまして、僕も乗っかってツイートしたことがありましたね。

 ほかの作家さんもいろいろツイートしておりましたので、探してみると参考になるかもしれないですよー。

 モノカキTIPSでは質問を随時募集しております。小説に関するご質問、その他答えられる範囲のご質問であればなんでも回答させていただきますので、どしどしお寄せくださいませ。

  2月15日に新刊が出ましたー。こちらもぜひよろしくお願いします。

 今作はもう、プロットが締切にぜんぜん追いつかなくて、ほぼノープロットで書き上げた作品です、、、形になってよかった、、、、

小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp