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【第4回】小すば新人賞応募締切直前!応募原稿を送る時に注意することスペシャル!

 さて、僕がいただいた小説すばる新人賞の応募期限が今月末に迫ってまいりましたのでね、今回のモノカキTIPSはちょこっと趣向を変えまして、「小説新人賞に応募する際の、誰も教えてくれない細かいこと」を語ってみようかなあと思います。
 ハウトゥー本もね、いかにして面白い小説を書くか、というところまでは教えてくれますけども、応募原稿をどうするといいのか、みたいな、「そんなの自分で考えろよ」的なとこまでは教えてくれないんですよね。でも、新人賞に原稿を送った側は、もしや「原稿が読みにくい」という理由で落とされるのでは、、、とか、そもそも原稿届いてるんだろうか、とか、そういうこまかーいことが気になって仕方がなかったりすると思うんですよね。

 なのでまあ、今回は「僕はこうやって新人賞獲れたので、細かいことは案ずるな応募者諸兄」ということを語っていこうかなと思います。「こうすると有利やぞ!」とかではないのであしからず。

 なお、僕が応募したのは「小説すばる新人賞」のみなので、他の公募新人賞では若干違うところもあるかもしれませんのでね、そこは応募要項をしっかり読んで、取捨選択して頂けるといいかなと思います。

■原稿の体裁について

 いまどき、なかなかオール手書きで小説を書くという人も少ないと思いますので、体裁についてはWordなどのソフトを使うことを前提としますね。手書きの人はね、もう、男らしく(?)400字詰め原稿用紙に、ペン書きで、読める字で!というだけでございますからね。

(1)フォント
 原稿のフォントについてはですね、基本的には「OSに標準インストールされている明朝体フォント」でいいと思います。Windowsを使っているなら「MS 明朝」、Macなら「游明朝」「ヒラギノ明朝体」あたりですかね。
 気をつけたいのは、「プロポーショナルフォントは使わないこと」という点ですかね。等幅フォントを使わないと、一行の文字数がずれてしまう、といったことが頻発しますのでね。Windows信徒の僕は応募原稿に「MS 明朝」を使いましたし、今の原稿も全部そうです。文字サイズは10.5ptでございます。いいの。こういうベタなセッティングでいいんだよ。

 たぶん、ゴシックやらメイリオやらで送ろうが、セリフだけをかわいいフリーフォントに変えようが、原稿は読んでもらえますし、内容がちゃんと良ければ受賞できないこともないと思います。でも、基本はプレーンな明朝体でシンプルに挑戦したほうがいいと思いますね。このnote記事みたいに、太字で強調表示、とかやめましょうね。

(2)印刷設定
 小すば新人賞の場合は、一ページ当たり40×30という規定があるのですけれども、標準の余白設定で印字すると、文字間がスカスカになって結構見にくくなるんですよね。まあ、いいんですけどね。規定には沿ってるし。
 僕の場合は、小すば新人賞の応募要領に「右肩綴じ」の規定がありましたので、用紙の上の方に少し余白を取って、用紙下方に文字を寄せる感じで印刷したと思います。細かいことですけどね。

(3)文字数・行数
 Word使っている人は特になんですけども、これが非常に曲者でありますね。ソフトによっては自動的に文字数・行数を調整してしまう機能があって、よく見るとページごとに行数が違う!なんてことがよくあります。使っているソフトの自動調整機能をすべて切って、一ページ当たりの文字数・行数が一定になるようにしておきましょう。特にね、WordですよWord。Wordの野郎。余計なお世話機能のオンパレードで、文字数も行数も固定したはずなのに、どういじっても「へんなとこで改ページされる現象」とか起きて、ほんとに「この機能をデフォルトの設定にしたの誰や!」とブチギレたくなることもしばしばでね。複数の機能を切らないといけない、とかあるのでお気をつけあれ。
 Pagesとか一太郎ってそんなことないの、、、?

 なお、応募要領で指定がなければ、「禁則処理」については自動設定してもいいと思います。「行頭に句読点がつく場合は前行の最後に移動する」とかね。その場合は、一行が規定の文字数+1になっても大丈夫でしょう。僕は大丈夫でした。

(4)ページ数(大事
 印刷するときは、各ページのフッターにページ番号(ノンブル)をかならず印刷しておきましょう。これね、綴じひもが緩んでバサーン!とかなった時に、ページがわからなくなるとかなりの悲劇なので、忘れずに入れてください。自分が準備してる途中でバサーン!ってなった時も助かりますから、自衛のためにも。
 僕が応募原稿をプリントアウトしたときは、80枚くらい印刷してからノンブルがないことに気づいて、泣く泣く一からやりなおしたという苦い思い出がございます。

 なお、表紙を1ページ目にカウントするかどうか論争があったりしますけど、まあ本文の順番がわかればいいので、要領に記載がなければ正直どっちでもいいんじゃないかなと思います(たぶん)。サイトによっては、表紙はカウントしないのがマナー、みたいな記述も見かけますけどね。表紙にノンブル入れたやつは選考外!とかはさすがにないと思います。

■添付資料について

(1)プロフィール
 応募要領にある情報は、ちゃんとすべて書いて送りましょうね。「本名の俺と創作者たる俺は異なる存在だから本名は書かない」とか、「この小説は僕の中の別人格が……」などとパンクなことを言い出すのは止めましょう。だいたいね、本名伏せちゃったら賞金を振り込んでもらえないですからね。
 あと、連絡先を書き忘れた場合は、「受賞しても連絡とれなそうだから選考外!」となる可能性もありますので、こればっかりは忘れずにちゃんと書いておきましょう。

 あとね、年齢ね。サバ読むのは止めましょうね。これはねえ、正直言うと確かに、「全く同じクオリティの作品」が二つあったとしたら、50代よりは10代の方が伸びしろがあると判断される分だけ有利、というのはどうしてもあるんじゃないかなあ、とは僕も思うんですよ。実際はわかんないですけどね。でも、それを狙ってサバ読んだところで後々かならずバレますし、結局足枷にしかならないのでね。若いものには負けん、という気概で。

 経歴なんかもね、盛らず偽らず、正直に書きましょうね。

(2)梗概
 これがね、わりとよく話題になるんですけども、長編の賞については梗概をつけるよう規定しているところが多いと思うんですよ。あちこちで言われているにもかかわらず未だに勘違いしている人がいるらしいんですけど、梗概は物語全体の「要約」なので、オチも含めて最初から最後までしっかりまとめましょうね。「〇〇はついに〇〇を手に入れるのだがーー(結末は本編にて!)」みたいな終わらせ方をしないようにお気をつけを。そういうのは、本になる時に編集さんが考えます

 オチのどんでん返しをバラしたらびっくり感が薄れて評価下がるんじゃないか、などと心配する人もいると思うんですけど、下読みさんも編集部の人も選考委員の先生もプロなんで、まったくもって心配無用です。
 苦労して考えたオチやトリックを数ページであっさりバラす、ということに抵抗感があるのはよくわかるんですけども、梗概は正しく審査するための補助資料なわけなんですよ。フィギュアスケートでも、予め自分のプログラムを審査員に公開するじゃないですか。「ここで4回転のコンビネーション入れたら審査員ビックリやで!」「だからプログラムは本番まで絶対秘密や!」とかいうスケーターいませんからね。前もってわかっていても、羽生結弦選手ばりの美しさで4回転を飛べば、審査員もちゃんとびっくりしてくれます。梗概も同じことです。同じかな?

 あと、梗概だけさらっと読んで落とされてしまうのでは?という疑問を持つ方もいるかもしれませんけど、どんな新人賞でも、応募作は必ず本文を全部読む、が基本になっているはずですので、梗概そのものが受賞・落選の分かれ目になることはまずないんじゃないかなあと思います。

 ただね、面白い小説は梗概も面白いんだと思いますし、面白い小説を書ける筆力がある人は梗概もうまいこと書けるはずなので、基本的には「梗概が面白い=本編も面白い」という方程式が成り立つわけなんですよ。なので、梗概が面白い作品が受賞に近づく、というのはあるのかなと思います。「俺の作品は梗概にすると面白そうに見えないから本編だけで勝負したい」とか、「梗概だけは上手いこと書けないし、不利になるくらいならつけたくない」とかいう人は、そもそも本編もダメだと思います。

 ちなみに、僕の受賞作も後半にちょっとだけひっくり返すような展開がある作品だったんですけど、梗概はちゃんとしっかりオチまでいれて添付しましたのでね。それで有利不利とかはなかったんじゃないかと思います。


(3)400字詰め原稿用紙換算枚数
 各賞には既定の応募枚数がありますけども、「400字詰め原稿用紙換算」という表現を使っているところが多いと思います。
 こいつがまた曲者でして、「総文字数を400で割る」ではいかんわけなのですよ。改行とかあるから。なので、おすすめは「一度完成原稿の文字数を、20×20にしてみる」というカウント方法ですね。改ページなど整えれば、総ページ数=原稿用紙換算枚数になりますし。

 僕はですね、改行等も計算に入れてくれる外部の文字カウントツールを使って原稿用紙枚数への換算をしたんですけど、どうもカウントするときに「特殊記号を文字としてカウントする」というオプションがついちゃったみたいで、改行記号を一文字としてカウントしちゃったんですよ。その結果、400枚弱だった原稿が420枚くらいと表示されちゃいまして、実際の枚数の方が少なかった、ということになってしまってですね。まあ、それで失格になる、ということもなかったんですけど。

 ただ、僕の場合、記載した原稿用紙換算枚数が間違っていても既定の枚数内にはずっぽし収まっていたのでよかったですけど、枚数がギリギリの場合は気をつけてくださいね、これ。

(3)いらんものつけない
 小説に限らず、応募をするときは応募要領に沿って言われたものを言われたまま素直につければいいのですよ。そして、いらんもんはつけなくていいのです。

 人物紹介(イラスト付き)とかね。
 相関図とか地図とか。


 これもね、付録で説明せんでも本文からちゃんとそういったものが読み取れる、というのもたぶん評価の対象でしょうから、そんなもんつけてもなんのプラスにもなりませんのでやめましょうね。

■送付方法

(1)綴じ方
 これは、各賞の要領に準拠、なんですけども、縦書き原稿の場合は、「右肩綴じ」が一般的かなと思います。「右肩」なので、用紙の四辺のうち右上ですね。ここにパンチなどで穴を開けて、紐やカードリングなどを通して綴じます。紐とカードリングはどっちがいい論争もあるようですが、僕は紐綴じにしました。たぶんどっちでもよいのです。ほどけたり外れたりしないものを選びましょうね。あと、原稿が破れないように注意を。

 やめた方がいいと思われる綴じ方その1は、ステープラー(ホチキス)綴じ。だいたいね、応募原稿って原本を回し読みするんじゃなくて、コピーしたものを選考する人に渡すことが多いのですよ。なので、ステープラーでがっちゃんこすると、編集部の人が針をはずしてコピーして綴じなおす、ということをしないといけなくなりますんでね。短編ならまだしも、長編ではやめておいた方がいいですね。

 その2は、ダブルクリップとかワニクリップ。編集部からゲラが来る時ってだいたいダブルクリップ留めなんで、じゃあ応募原稿に使ったってええやないか、と言いたくなりそうなもんですが、応募要領で「綴じろ」と言われている場合は、クリップは「留めてるけど綴じてないじゃん」ということになりますのでね。

 あと、どうも凝り過ぎちゃって、ファイルやバインダーに綴じたり、自ら製本したものを送る人も中にはいるようですけど、前述の通り原本はコピーを取ることがほとんどですので、凝った綴じ方しても邪魔でしかなく、当然なんのプラスにもならないのでやめましょう。

(2)送り方
 原稿の送付について気をつけるのは、応募締め切り日「必着」か、「当日消印有効」かですね。特に「必着」の場合は、締切日翌日以降に届いたものはその年の選考対象外になっちゃいますから、輸送のタイムラグも考えて送付方法を選ばないといけなくなります。駆け込みで送るんじゃなくて少し余裕持たせて送りゃいい話なんですけど、やっぱギリギリまで改稿したい!ということもあるでしょうし、よく考えましょう。

 あ、応募のタイミングが「早い方が有利」「〆切直前の方が有利」論争もあると思いますけど、まあー関係ないと思います。ちなみに、僕は〆切一週間前くらいに送ったかなあ。

 もう一つね、たぶん皆さんがやきもきするのは、自分の原稿が本当に編集部に届いているのか、というところだと思います。僕が小すば新人賞に応募した頃は、小すば編集部から「受け取りましたよ」というはがきが頂けたんですけど、今はもうはがき返信制度は廃止されたようなのでご注意を。実家にはがきが来て、お母さんにペンネームがバレて恥ずかし乙女、みたいな重大案件が続出したからでしょうか。

 でも、かといって「僕の原稿到着しましたか?」なんて編集部に電話を入れるのは、冗談抜きでめちゃくちゃ嫌われると思いますので、基本的には自ら到着確認ができる手段で送るのが良いと思います。レターパック、簡易書留、宅配便などね。こちらも、応募要領をよく読んで選択しましょう。あ、送る時は絶対に元払いで。


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 ということでございまして、今回は新人賞応募時のこまかいアレコレについてお話いたしました。

 応募にあたってはね、応募要領をよく読んで、細かいことをちゃんと気にしながら丁寧に応募原稿を用意する心がけが大事、というのが大前提であるよ、とはいいつつ、でも小さなミスがあってもあまりくよくよ気にし過ぎずに選考結果を待ちましょう、ということでございます。まあ、送った原稿が多少折れてたり汚れてたりしていても、作品が圧倒的に面白かったら間違いなく受賞しますからね。


 さて、今年の小すば新人賞は、どのような作品が受賞しますやら。

 わたくしの受賞作はコチラ。

小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp