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ご質問にお答えします(10)「正しい日本語を書くためにやるべきこと」

 さてはて、モノカキTIPS、今回もご質問をいただきました。ここのところ、コンスタントにご質問を頂けるようになってきて嬉しいですね。皆さんのお役に立ってますかねえ。

 そんなこんなで、今日のご質問はこちら。

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 シンプルなご質問でございました。高校生の方にご質問頂くのは二度目かな? 若い人に「小説家になりたい!」と思ってもらえているのは嬉しいですね。
 質問の内容は、正しい日本語を書くために普段からしていること、ということで、TIPS第二回を読んでくださったんですかね。そういや確かに、ある程度正しい日本語が書ければ作家になれるよ、とは書きましたけども、どうすりゃいいかまでは書いていなかったかもしれないですね。

 では、お答えして参りましょう。

■僕の場合

 さて、正しい日本語を書くために普段からしていること、というご質問なわけですけれども、実際、今僕が普段何かしているかといいますと、別に何もしていないかなあ、、、、

 というのもですね、まあ、僕の場合は「ある程度正しい日本語」を既に書けるようになったこともあって、このお仕事ができているってのもありますんでね。なので、普段やっていることと言うと、よりいろいろな表現ができるように語彙力を高めようと意識しているくらいかなあー。誤用に気をつけるとか。わからない、知らない言葉を見つけたらすぐ調べるとか。

 例えば、ギタリストとしてプロになるためにはギターを弾けるようにならないといけないわけですけれども、プロになってからは、ギターを弾けるようになるために練習するというよりは、よりうまくなるために、よりいろんな表現を身につけるために技術を磨いていく、ということをするので、「書けるようになるために」「弾けるようになるために」日々何かをする、ということとはちょっと目線が変わってくるかもしれないですね。

 もちろん、ちゃんと練習をしていないと文章も鈍っていくので、毎日の基礎トレーニングみたいなものは必要だと思うんですけれども、プロになると毎日お仕事で文章に触れるようになるわけなので、自然と日々トレーニングしているような状態になっているような気がします。

■正しい日本語を書けるようにするためには

 じゃあ、その「ある程度正しい日本語」を書くためにはどうすりゃいいのか?ということですけれども、これは本当に簡単というか、すさまじく明確な答えがあります。

 プロが書いた文章をひたすら読みましょう。

 もうね、正直これに尽きると思うんですよね。小説でもいいし、新聞でも、雑誌のコラムでも、実用書でも、とにかく何でもいいんですけれども、商業出版されているものをゴリゴリ読んだ方がよいです。できれば、文章をちゃんと意識しながら。

 キモは、「出版されているもの」という点ですね。

 今だと、人が書いた文章は小説投稿サイトやネット記事なんかにも溢れていると思うんですが、そういうところに掲載されているものは、面白い面白くないはさておき、日本語の文章のお勉強としてはあまり適していません。日本語が正しくないから、というとちょっと語弊があるんですが、ネットに載ってるような文章は、「そもそもアマチュアが書いている」とか、「プロが書いていてもチェックが甘い」ものが多々あるんですよね。僕のnote記事なんかも、日本語の文章の勉強としてはどんなもんですかね、というレベルだと思って下さい。

 例えば、小説を出版する時はですね、元々ある程度正しく日本語を操れるモノカキが原稿を書き、さらに推敲した文章を出版社に渡します。毎日膨大な量の文章を読む「プロ読者」である担当編集者がそれに目を通し、さらに日本語のプロ中のプロである校正さんが確認する、という工程を、二回繰り返したものが世に出ています。それでも誤用が残ることもありますけど、日本語としてはほぼ問題なく通用する、という状態で出版されるわけなのですよ。つまり、出版物と同じくらいのクオリティの文章が書けるようになれば、おのずと文章力についてはプロでも通用するレベルになるはずなのです。

 小説ですと、作者特有の文体や言い回しなんてものもあるので、できれば数多くの作家さんの作品を読んで、新聞、実用書の類と読み比べてみるといいと思うんですよね。僕も、今でこそあまり小説とか読まない(資料本読むだけでも結構手いっぱいで)んですけど、小中学校の頃は、アホほど活字の本を読んでいました。図書室で週に5冊くらい借りてましたし。うちはマンガやゲームはなかなか買ってもらえませんでしたけど、なぜか小説は無制限で買ってもらえたので、児童文学に始まり、夏目漱石とか芥川龍之介みたいな近代文学、枕草子や源氏物語といった古典文学、国内外の本格ミステリー、ヤングアダルト、歴史小説、ファンタジー小説などなど、子供のうちにとにかくいろんなジャンルの本を読んだと思います。

 正しい日本語で文章を書きましょう、と言うと、国語の勉強をした方がよいのか? と思うかもしれませんけれども、勉強するに越したことはないとはいえ、文法のスペシャリストになればいいというもんでもなかったりします。僕も、国語の先生くらいちゃんと文法を理解しているわけじゃないですしね。品詞がどうとか、隠喩だ倒置法だ、などなど、学校ではいろいろ習うかもしれませんけど、だいぶ忘れてしまいましたね、、、 なんちゃら変格活用とか。現役高校生の方が詳しいかもしれない。

 でも、そういう「理論」を覚えなくても、読書をすれば、「正しい日本語」は体にしみこんでいきます。逆に、文法などいちいち考えなくても、書いた文章はある程度正しい、というところまで行かないとだめなんじゃないかなあ。

 例えば、自転車に乗ろうとしたときに、「右足を乗せて体重を乗せる」「次にどれくらいのタイミングで左足に体重移動する」なんてことをいちいち順序だてて考えながら乗っている人というのはいないと思いますし、自転車に乗るために物理から勉強する、なんて人もまずいないと思うのです。とにかく乗ってみて、感覚を掴めばみんな乗れるようになりますし、一度乗れるようになってしまえば、しばらく乗らなくても体が乗り方を記憶しています。小説家にとって、文法的に正しい日本語を書く、というのはそういうもんじゃないかなあと思います。

 なので、まずはとにかく本をたくさん読むことです。そしてたくさん書くこと。小説でもいいし、日記でもいい。自分で書いたものは、何度も読み返してみましょう。そうやっていくうちに、自然と日本語の文章は書けるようになっていくと思います。

■結論

 そもそも、ある程度正しい日本語の文章が書けないとプロにはなれないので、「小説家」として本を出している方々は、そのレベルはもうすでにクリアしていると思います。プロになれば毎日文章に触れる生活になるので、「プロでいること」が、より文章力を高めるトレーニングになります。

 プロを目指している方々が文章力を磨いていくためには、とにかく、本や新聞、それも、作者だけでなく、編集や校正の目を通った、商業出版されているものを読みましょう。できる限り、偏らずにいろいろなジャンルを。

 もちろんね、小説としてのクオリティを求めると、日本語だけ書けりゃそれがすべてというわけではないので、創作論とか、技術的なことをちゃんと学ぶということも有効だと思いますけど、こと、基礎的な日本語の文章に関しては、やっぱり本を読むことが一番じゃないかなあ。読んで、書く。その繰り返しが、一番の近道だと思いますよ!

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 今回は、もう終始「本を読め!」で終わった気がしますけれども、まあでも、多くの作家さんが同じ事をおっしゃるので、間違いないことなんだろうなあという気がしますね。ぜひ、たくさん本を読んで頑張ってくださいね。

 モノカキTIPS、引き続きみなさまからのご質問をお待ちしております。お気軽にご質問をお寄せくださいませー


 読書の練習に、僕の本などいかがでしょうー よかったらぜひ。


 

 
 

小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp