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ご質問にお答えします(16)「世界観の設定にどれくらい時間をかける?」

 おう、いつの間にやら世は7月になっておりました。今年も半分終わりですよ。年始からいろいろあったはずなのに、もう記憶が遠い。こわい。どんなホラーより怖い。

 ということで、時間は大事にしつつも、また頂いたご質問に答えていこうかと思います。今回のご質問はこちら!どばん!

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 ということで、執筆歴九年というなかなかのベテラン(?)さんからのご質問。文庫本3冊分というと、1200~1500枚くらいのお話を書こうとしている、ということですかね。すごい。僕もそんな大ボリュームのお話書いたことないですね。あと、あらすじとか構想を2時間も聞いてくれる友達がいるというのはうらやましいです。たぶん、編集者さん相手でも、そこまで長時間聞いてくれる人はいないかも、、、

 貴重な友人は大事にしましょう。

 さて、質問内容で言うと、「一つの物語の世界観設定にどれくらい時間をかけていますか?」「プロット立てた方がいいですか?」ということですかね。

 ではお答えしていきましょう!

■僕の場合

 僕の場合、ものにもよるんですけれども、企画が持ち上がった時点でざっくりした世界観を考え始めて、そこから世界観とプロットを一緒に具体化していくことが多いかなあと思います。たぶん、ざっくりとしたものが出来上がるのは、1か月前後であることが多いですかね。まあ、他の仕事と重なるとか、そういう事情で期間が延びることもあります。

 自著ですと、正味の時間を一番かけたのは、『KILLTASK』で、プロット込みで大体2か月ちょいくらいですかねえ。逆に一番短かったのは『怪盗インビジブル』で、世界観は約1時間(編集さんとの打ち合わせ時にほぼ全部決まった)、プロットは5日くらいで作ったと思います。

 僕はあえてプロットを立てずに書くこともあって、デビュー作の『名も無き世界のエンドロール』は、完全にノー設定・ノープロットで書き上げておりますし、続編の『彩無き世界のノスタルジア』は、あってないようなプロットをサラッと作った状態で書き始めていますね。プロ作家といえども、必ずしも世界観やプロットを緻密に組み立てた作品ばかりではない、ということですね。

 ただまあ、プロの場合は締め切りというものがあるので、世界観の設定にばかり時間をかけてはいられない、という事情があるのですが、アマチュアで、かつ応募するわけでもない完全趣味の作品であれば、別に自分のやりたいだけ時間をかけていいと思うんですよ。僕もね、実はファンタジーもの大好きで、いつか書かせてもらえるんじゃないかと温めている設定があるんですけど、たぶんしょっぱな考え始めたのが中学の頃くらいだと思うので、かれこれ25年も作り続けているんですよね、、、 しかもまだプロットにも行けてない。執筆を始める前に死にそうですが。

 たぶん、本格ファンタジーを主戦場にしていらっしゃる作家さんだと、設定に数年かける、とか、構想二十年、みたいな作品もあると思います。完結までに何十年もかかる作品もザラですしね。

 なのでまあ、あまり僕のスケジュール感は参考にならないかもしれないですけれども、回答としては「1か月くらい」になるかなと思います。

■プロットは立てた方がいい?

 早々に結論が出てしまったのでここからは余談ですけれども、プロットどうしようか、みたいなお話。

 質問の中に、ご友人から「伏線が多すぎる」と言われた、という部分があるんですが、これを解消するのが「プロット」であったりします。

 たぶんですけれども、ご友人的には、まだ「アイデア」の段階で伏線の話を聞いて、「ほんとにそれ、全部回収できるん?」という感想を持ったのではないかなあと思うんですよね。もし、そのお話のプロットがある程度しっかりできあがっていれば、この伏線はここで回収される、という設計図がある状態なので、「多すぎる」という感想は出てこないと思うんですよ。別にね、伏線なんてなんぼでも張っていいですからね。問題なのは、伏線を回収できないまま終わることなので。

 文庫3巻分になるお話だと、プロットが未完成でアイデアベースの状態で書き始めていくと、だんだん整合性の壁にぶち当たることになると思います。プロットを立てることで、ある程度ストーリーの軸が作れますから、長編になればなるほど、プロットというのは有効じゃないかなと思いますね。全体的なバランスの調整もできますから、よくありがちな「序盤だけ異常に細かく書きすぎ」みたいなことを防止する効果もあると思います。

 それから、想定している伏線が機能しないとか、その伏線にこだわると別の矛盾が出てしまうとか、プロットを立てることによって、自分でもいろいろ見えてくるところがあるのではないかなと思いますね。執筆時に、はっ、これあかんやん、て気付くと、筆が止まっちゃいますからね。仕事なら何とかして進めなきゃ、ってなるんですけど、アマチュアの場合、ここで止まったまま挫折してしまう、ということがあるあるじゃないかなと思うんですよね。

 ただ、趣味ならいくらでも時間が取れますから、そういった矛盾が出てくるのもまた一つの楽しみと考えて、ゆっくりちくちく読み返し&書き直しをしていくのも楽しいと思うんですよ。もし、質問者さんが、趣味ではあるものの作品のクオリティは上げたい、絶対に完結させたい、と思うのであれば、プロットを立てた方がいいかもしれないです。が、まあ、厳密にやらなければならないものではないので、ほんとに自由にやっていいと思いますね。

■結論

 僕は、今はだいたい1か月くらいで世界観&プロットを作っています。が、もし自分が長編ファンタジーを書くなら、構想に数年かけるんじゃないかなと思うので、そこは思う存分かけてもいいのではないかと思います。

 プロットも、立てた方が物語の「形」はきれいになりますし、執筆時も書きやすくなるとは思います。でも、アマチュアの、それも趣味の執筆であれば、締め切りもないですし、その時々の筆の走りで物語を変えて行ったりすることも面白味だと思うので、ノープロットで書き始めても意外と面白い展開が生まれたりするのではないでしょうか。

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 まあ、ぶっちゃけ、書き手にとっての「ファンタジーを書きたい」って、物語よりなにより「設定を作るのが面白い」ということが往々にしてあるのではないかと思うので、楽しみながら書き続けてみていただけるとよいのではないかなと思いました。ぜひぜひ、大作を書き上げてみてください。

 モノカキTIPSでは、みなさんからのご質問を随時募集しております。聞いてみたいことがある方、お気軽にご質問をお寄せくださいませ。


 集英社文庫ナツイチもよろしくお願いします。


小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp