ご質問にお答えします(26)クセのあるキャラを造形するには?
いやー、なんかこう、すんごい久しぶりに今回、モノカキTIPSにご質問をいただきましてですね。僕のnoteのメインコンテンツなはずなわけですが、めっちゃくちゃ更新滞っておりましたね。
もうね、自分でなにを書けばいいのかわからなくなってきておりますので、みなさまのご質問頼りの他力本願でやらせていただいております。
……質問ください。
ということで、今回のご質問はこちら!ばばん!
読んだ方がブチギレ、、、、
一体どんなキャラか逆に気になりますし、読んだ人がブチギレする、つまり激しく読者の心を動かしているという意味では、ある種キャラ付けもしかっり成功しているのではないかと思いますが、問題は、それが作者が意図するものではない、ということでしょうかね。強烈クセキャラだけれども、愛されるくらいのキャラを書きたい、というご希望でしょうか。
毒にも薬にもならぬキャラを書くくらいなら、読者をブチギレさせるくらいのパワーのあるキャラを書けるほうが素晴らしいのではありますが、さすがに、中盤で作品をぶん投げられては本末転倒なわけなので、クセ強キャラを多用することでお馴染み(?)の僕が、自著のキャラたちをこうしている、という点を二、三ご紹介しようかなと思います。
それでは行ってみましょー。
■読者がブチギレる理由
今回、質問文には「努力が極端できないキャラ」と書かれたのみで、具体的にどのあたりの表現が人をキレさせたのか、というところには言及がありませんでしたが、十中八九、こうだろうと思うのは、そのキャラが出過ぎなんだと思うんですよね。
主要キャラクターということで出番が多いのもしかたないのでしょうが、そのキャラが登場する度に、質問者さんがが律儀にキャラの設定を守り、「まったく努力できない姿」をキッチリ書きこんだんだと思うんですよ。ただ、読者は、自分が共感できないキャラに対して敵意を持つ、という一面がありますので、そういうキャラの行動を、敵意を持って読んでいる、ということになります。
そのキャラが強烈に立っていればいるほど、「努力できないこと」という、人としていかがなものかという特性が鼻につき、読むたびにイライラします。職場にそういうやついるとめちゃくちゃストレスじゃないですか。そういう、自分の中のネガティブな経験と結びつきやすかったりするんですよね。真面目な人ほどそういう傾向は強いと思います。
キャラの登場回数が多く、そういうイラつく場面が何度も来ると、イライラが蓄積して、ついには爆発、途中で作品をぶん投げる、ということになるわけです。つまり、そのキャラを登場させる頻度とかクセの程度のさじ加減を間違えている、ということですね。
■クセ強キャラを活かす方法
(1)読者が共感できる余地を作る
いかにクセ強キャラの中であっても、クセだけじゃなくて「まともな人間性」を持たせることで、読者に共感してもらえる余地を作っておく、というのは大事です。クセとか非常識のみで出来上がってるキャラなんて人は愛せないんですよ。あの、イカレ野郎界の代表選手みたいな『バットマン』のジョーカーですら、根の方には人間性がちゃんと見えますからね。狂気と正気は紙一重なわけです。
今回のキャラは、「努力ができない」というかなりアレな性格ですが、それだけだとただムカつくやつというだけになってしまいます。なので、実はものすごく正義感は強い、とか、猫がめちゃくちゃ好きですごい詳しいとか、バカみたいに信念が強い、とか、読者が少しでも肯定的にとらえられる性格・特性を持たせて、どこかのタイミングでそういう性格が垣間見られるシーンを用意してあげるとよいと思います。
(2)バックボーンでギャップを作る
「努力できない」ということに、何らかの理由を持たせてあげる、つまり、背景情報を作っておいてあげるということも大事です。
それが読者も納得できる理由であるなら、ある程度イラつきを抑えることもできるわけです。物語中盤、読者のフラストレーションがたまってくるあたりで、すっとこういうガス抜きを入れてあげると、そこから終盤くらいまでもってくれたりします。
極端に努力できない理由をうまくつけてあげて、そこにエピソードとかドラマを持たすことができるとよいんじゃないかと思います。
(3)ワトソンをつける
これも王道ですが、クセ強キャラには、「常識人のバディ」を与えて、ペアで行動させるといいと思います。
かのクセ探偵シャーロック・ホームズは典型的な性格クソ悪イギリス人なわけですけれども、常識人・ワトソンの存在があることで、アクの部分が薄まり、天才的な頭脳というよい部分が目立つようになります。
なので、「極端に努力できないマン」にも、ずっと付き合いのある親友などをそばにつけてあげて、実はいいやつなんだよ、的なフォローを入れるようにしてあげたり、イラつきを読者の代わりに本人にぶつけてもらったりして、読者のフラストレーションを適度に抜く役を担ってもらうといいと思います。
また、少し難しくなりますが、「ド級の変人」と「自分では常識人だと思っているの変人」の組み合わせもわりと面白くなることが多いです。
(4)セリフを工夫する
さて、(1)で述べたような「まともな人間性」というのはどこにでるのかというと、一番はセリフじゃないかと思います。
読者をイライラさせるような言動の中に、ぽつんと人間性の見えるセリフを入れてあげることで、読者の敵意をそらす効果があります。会話相手のワトソンをうまいこと使って、会話で人間性を伝えるようにするといいでしょう。
だいたい、クセの強い人って、人を怒らせる天才である反面、人懐っこかったりかわいらしいことを言ったりする人たらしでもあるんですよ。憎めないやつ、みたいな。じゃなかったら人に嫌われて、引きこもるしかなくなるので。
物語に登場する人物は、クセが強くても人と接点のある人だと思いますし、「こいつはなんだかんだ捨て置けない」と人に思わせるような性格なんだろうと思います。そういう性格がにじみ出るようなセリフ回しを考えてみてください。
■結論
クセ強キャラは、そのクセの強さゆえに強力に読者への印象付けができたり、物語をありえないくらい動かしてくれるパワーを秘めた存在ですが、いかんせん劇薬であるために、用法・容量を間違えると、読者にストレスを与えるだけの存在となってしまいます。
質問者さんの小説では、後半になるとようやくそのキャラを好きになれた、という評価があるので、ようするにそのキャラの成長ストーリーが作中に含まれているのだと思いますし、キャラが成長するまでの間、読者を離さない工夫が必要かな、と思いました。
キャラの濃ゆさは、その濃ゆさだけを目立たせると食傷気味になりますので、今回お話したやり方なども参考にしつつ、どうにか緩急をつけて読者のストレスのガス抜きをして、後半読者を引っ張っていけるといいんじゃないでしょうか。
でも、読者がキレ散らかすくらいのムカつくキャラを書けるというのは一つの才能だと思いますので、そっちはそっちでうまく使えば、きっと小説を面白くしてくれると思いますよ。
ということでございまして、本日はここまで。
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小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp