ご質問にお答えします(11)「小説として面白い文章とは?」
さてさて、前回はとてもシンプルなご質問をいただきましたけれども、今回はやや長文のご質問をいただきました。
いくつかご質問の要素があると思いますので、整理しましょうか。
①文章を書くことが好き。でも、だからといって小説を書く必要はあるか?
②単に文章を書くことが好きというところから、人に読んでもらうことが好き、という気持ちに持っていくにはどうすればいいか?
③小説として面白い文章とはどういうものか?
ということでよろしいでしょうか。主にこの3点を念頭に置いて、今回は、個別の回答ではなく、全体を包括してお答えしていこうかなと思います。
■自由にしていい
いきなりなんだか元も子もないような回答なのですけれども、文章を書くことが好きで、小説を書いてみようかなあ、と思うのであれば、まずはあれこれ悩む前に、書いてみればよいと思います。小説という形にこだわらないのであれば、エッセイでもいいですし、詩でもいいですし、形はどんなものでもよいのではないでしょうか。
文章を書きたいとは思うけれど、それが小説である必要があるのか?と思うのなら、それは別に小説でなくても全く問題ないので、ほんとに自由に、自分の思うままにいろいろな文章を書けばよいと思います。散文でも自由律詩でも何でもいいのです。
今はただ文章が書くことが好きなだけかもしれませんけど、小説を書いてWEBで公開するなどして、色々な人に読んでもらったり、感想を受け取ったりしているうちに、「読者さんを楽しませたい」と思うようになるかもしれません。そうすれば、おのずと「人をどう楽しませるか」という文章の書き方に変わっていくと思います。
小説として面白い文章とは?というご質問もありましたが、小説の面白さは文章の面白さだけで決まるわけではないので、文章だけを気にしても、「文章が面白い小説」になるだけで、「面白い小説」にはならないんじゃないかな、と思います。例えば、お笑い芸人さんのネタを文字に起こせば、言い回しが面白かったり、笑える表現がちりばめられてはいると思います。でも、「小説」として面白いとは言い難いですよね。
今は興味がないことかもしれないですが、いずれは、ストーリーを組み立てる、題材を選ぶ、伝えるべきテーマを考える、といったことにも楽しみを見出していかないと、人に読んでもらった時に「面白い」と言ってもらえるような小説にはなかなかならないと思いますね。こればっかりは経験なので、まずはやっぱり考えるより書いてみることですね。案ずるより産むが易し、というやつだと思います。
■読者ファーストという価値観
さて、質問者さんがこれから「面白い小説」を書いていこうとするのであれば、現時点で決定的に足りていないところがあると思います。それは、読み手の気持ちになって文章を書くということ。書き手としてのホスピタリティの問題です。
面白い小説、面白い文章というのは、「読み手側がどう感じるのか」「どう思うのか」という視点を持った時に、生み出すことができるようになるものだと思います。例えば、論文に対して「小説のような文章ですね」と言われたのであれば、たぶん、文章はとても綺麗だったのかもしれないですけど、論文は「シンプルに論旨を説明する」ことが求められるものなので、誉め言葉として受け取ってはいけないんじゃないかなと思います。
読者のことを考えるのであれば、「論文として読みやすい文章を書こう!」と考えるのが作家の思考回路じゃないかなあ。こういう場合、己の文体・作風を貫き通す、というのはあまり美点ではありません。自分の文章に確固たるアイデンティティを求めることも大事ですけども、TPOに合わせて最適な文章を書くというのも、モノカキとしての技術ではあります。
例えば、今回の質問文に、「(質問内容が)散漫になってすみません」という一文がありましたが、自分でそう感じたのであれば、断りや謝意を入れるのではなくて、散漫に見えないように質問文を修正してみる、というのが「読者ファースト」の考え方じゃないかなあと思います。
自作の小説を誰かに読んでもらいたいと思うのであれば、読み手の気持ちを第一とするよう、意識改革をする必要があるのではないかと思います。質問者さんの場合、他者に気を使ったり、自分の文章を客観的に見たりすることはちゃんとしていらっしゃると思いますので、もう一歩先に進んで、読者ファーストの文章を書くという価値観を大事にしてもらえたらいいのではないかなと思います。
■結論
文章を書くことが好きで、自分のために趣味で書くのであれば、細かいことを考える必要はないので、好きなように、小説でも、エッセイでも、自由に書いてよいともいます。なんなら、自分が気持ちよくないものは書かなくてもいいわけですしね。
でももし、「人に読んでもらえるような面白い小説」を書きたい、と思うのであれば、文体や表現、プロットを気にする前に、読者の視点に立ってものを考えるという、「読者ファースト」の意識が必要だと思います。
プロの作家さんもいろいろいらっしゃるので、とにかく自分の文章を磨くことだけに注力して、読者に媚びることはせん! みたいな考え方の人もいないわけではないと思いますが、その結果生み出したものが「面白い小説」になり得るのは、稀有な才能の持ち主だけだと思います。普通、作家さんはみなさん、ちゃんと読み手のことを考えて文章を書きますからね。
まずは、自分が文章を通して人に何を伝えたいのか、そしてどうやったら伝えられるのか、というところから考えてみてはいかがでしょうか。小説を書くことに、対象となる相手を想定するのです。そうすれば、自然に「面白い小説」のための文章が書けるようになるんじゃないかなと思います。
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ということで、今回はちょこっと厳しいことも言ってしまったかもしれません。でも、ある視点を持つだけで、書く文章が劇的に変わるんじゃないかなあ、と思いましたのでね、参考にしてもらえたらいいなあと思います。
ということで、引き続き、モノカキTIPSではみなさんからのご質問をお待ちしております。どしどしお寄せくださいませー
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小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp