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ご質問にお答えします(7)「兼業でも作家になれる?」「ファンタジーのコツは?」

 いやー、最近、ご質問をちょこちょこお送りいただけるようになりまして、ネタに困らず嬉しいですね。今回も質問回答編でお送りしようかなと思います。

 では、今回のご質問いってみましょー。

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  はい、ということで、高校生の方からのご質問でした。高校生で夢を持って活動しているというのはえらいですね。僕はなんかもう、とにかく毎日眠いだけ、という高校時代を過ごしていた気がします。
 さて、具体的なご質問内容は二点。まず一つは、仕事と両立しながら小説家になれますか?というものと、ファンタジーを書くにあたってのコツがありますか?というもの。なるほどなるほど。

 ではお答えいたしましょう!

■兼業で小説家になれるのか?

 このご質問に関してはですね、もうはっきりとした答えが出せますね。

 なれます!

 といいますか、定職につかずにいきなり作家になった人の方が少数派だと思います。中にはね、学生時代に賞を獲って卒業と同時に専業になった作家さんとか、仕事はせずに執筆に専念してデビューした作家さんもいるんですけど、大多数は仕事をしながら応募原稿を書いたり、投稿サイトに投稿したりしてデビューを掴み取った方だと思います。
 なんならね、兼業のプロ作家さんもめちゃ多いんですよ。昼は普通に企業で働いて、夜に執筆して、みたいな。作家として売れっ子であっても、別のお仕事を続けているという方もいらっしゃいます。

 ただまあ、仕事にもよるかな、というところは正直ありまして。僕は、今は専業なんですけれども、デビュー時は兼業でした。もちろん、しばらくは兼業作家としてやっていくつもりだったんですけど、僕が当時勤めていた会社は結構忙しい会社で、なおかつ勤務地が遠くて通勤にめっちゃ時間がかかりまして。ちょっとね、執筆時間を捻出するためには睡眠時間を削らなければならなくて、二年で体ぶっ壊しちゃったんですよね。
 なのでまあ、執筆時間を取れるように仕事を工夫する、という必要はあるかもしれません。通勤時間をなるべく短縮するとか。残業の少ない仕事を選ぶとか。

 昔はいざしらず、今は新人賞を獲ったり、投稿から書籍化が決まったりして小説家デビューという夢を叶えても、出版元の編集者がまず最初に言うことは、「仕事を辞めないでください」であることが多いです。

 というのもね、デビューして即大ベストセラー、一気に人気作家へ、なんていう人ならいいですが、多くの新人作家は、なかなか仕事も来ないし、そもそも書くスピードもまだまだ遅いしで、収入的に厳しい状況に陥ることが多いのです。僕も、専業一、二年目なんて、ゴリゴリ貯金を切り崩して生活していましたからね。
 プロ作家さんにね、「小説家になるには何が必要ですか」という質問をした時、結構みなさん、口をそろえて「預貯金」と言いますね。やっぱりこう、金銭的に追い詰められてしまうと心に余裕がなくなって、創作に集中できなくなりますから、生活の糧というのはとても重要です。

 それからね、すごく厳しいことを言うようですが、「小説家になりたい」という人のほとんどは小説家になれずに終わりますから、そうなった時に、仕事もない、社会勉強もしてない、という状態では、将来的に困窮することもあります。ちゃんとお仕事を持った上で、空いた時間をうまく使って執筆活動をした方がよいと思いますよ。

 社会人としての経験は小説にも必ず活きてきますから、就職して働くことも夢に向かうための一つの方法なのだ、と思った方がよいと思います。

■ファンタジーを書くコツ

 さて、こちらはちょっと僕には難しいご質問。というのもですね、僕はいわゆる「一般文芸」と言われるカテゴリの中で書いているモノカキなんですが、エブリスタやなろうなどのサイトに投稿している方は、「ライト系」という括りの中で書いていらっしゃる方が多いと思います。まあ、一般文芸とライト系・ライト文芸と言われるものに明確な線引きはないんですけど、それでも、ざっくりとした区別はあって、それぞれ作品に求められるものが違うように思います。
 
 僕のような、「一般文芸」界隈のモノカキに求められるファンタジーというのは、どちらかというと現実世界の中に、少しだけ「ありえない要素」を入れるようなものです。僕の作品でも、「予言」「超能力」といった要素が日常に入り込んだものはあります。

 質問者さんがどういう「ファンタジー小説」を書こうとしているのかはわからないのですが、昨今、エブリスタやなろうで流行している「ファンタジー小説」は、ゲームやアニメで描かれるようなファンタジー世界をベースにしたものが多いと思います。一般の人に「ステ振り」だの「タンク」だの言ってもまず理解不能ですが、このジャンルを好んで読む方々にはおなじみの概念なので、そういった概念や世界観を共通のプラットフォームとして物語が作られているように見えますね。ただ、こちらは現代の一般文芸におけるファンタジーや古典ファンタジーとは理屈や作法が違うので、ちょっと僕は「コツ」というものを語れないんですよ。正直、わかんないから。

 ただ、一つだけ、どんなファンタジー小説にも言えることだと思うので、「コツ」としてお伝えしておきますけれども、ファンタジーを書くために一番必要なのは、「リアルを知る」ことだと思います。

 現実世界の出来事、理屈、法則を知らずに書いたファンタジーは、やっぱり中二病の妄想臭くなるので、たくさんの人が読んで面白いものにはなかなかなりません。今は、ある程度読者の共通理解を元にしたライト系ファンタジーが流行っていますが、これも読み手の世代が変わった瞬間に流行りが変化してしまうので、今流行っているものしか書けない、という作家は淘汰されてしまいます。もし将来的に息の長い作家を目指すのであれば、ちゃんと「リアル」を知って、そこからファンタジーを生み出せるようになっていった方がいいと思いますね。

 ちゃんと「リアル」を書ける作家さんは、ライト系を主戦場にしていたとしても、一般文芸としても質の高い作品を書ける方が多いんですよ。ライト系から一般文芸に移ってきてベストセラー作家になった作家さんも多いですし、どちらのカテゴリで書いても面白い作品を書ける方がやはり生き残っているように思います。

 古典ファンタジーの金字塔「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」の作者、トールキンなどは、現実の言語学の勉強もきっちりしていて、エルフ語などは文法から発音まで、まるまる言語そのものを作っているわけですよ。他にも、自然科学、物理学、歴史学などなど勉強して、ようやく、ファンタジー世界をリアルなものとして書くことができるようになるわけです。

 なので、「ファンタジー」を面白く書くには、現実世界を舞台にした「リアル」な小説も面白く書けるようになった方がいいと思います。そのためにも、大学に行って勉強する、社会人として働きながらいろいろ経験する、というのは大事なことかもしれないですね。

■結論

 働きながらでも小説家は目指せます!なので、まずはちゃんと働きましょう。そしてしっかりお金を貯めて、いつか専業になる時の資金を用意しておくことをお勧めいたします。

 それから、ファンタジーについて。今現在、投稿サイトで流行しているようなジャンルのファンタジーについては、僕は書いたことがないのでコツと言えるものをお伝えはできないのですが、もし、将来小説家として食べていくことを夢とするなら、ファンタジーとは真逆の「リアル」をちゃんと書けるようにしておいた方がよいんじゃないかなと思います。ファンタジー小説の執筆の傍ら、現実世界を舞台とした小説を書く練習もしてみるとよいのではないでしょうか。


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 さてさて、今回はちゃんとお答えになったでしょうか。まあ、参考程度に読んで頂いて、自分の思うように執筆してみたほうが良いかなと思いますけどね。夢がかなうとよいですね。

 随時、質問募集中でございます。どしどしお寄せくださいませー


 ファンタジーではないですが、新刊も引き続きよろしくお願いします^^

小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp