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小説|違和感からなにを紡ぐか〜未来の見つけかた〜

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違和感からなにを紡ぐか①〜未来の見つけかた〜

違和感からなにを紡ぐか①〜未来の見つけかた〜

2年前のいま頃、僕はヨーロッパへと向かう飛行機の中にいた。

パリで行われるJapan Expoというイベントと、ロンドンで行われるHyper Japanというイベントに、参加するためだ。

当時僕は会社で、新規事業の立ち上げを任されていて、日本発世界で何か新しいビジネスはできないかと、模索していたのだ。

海外出張というと聞こえはいいが、はじめて訪れるヨーロッパに胸は高鳴っていて、パリとロンドン

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違和感からなにを紡ぐか②〜未来の見つけかた〜

違和感からなにを紡ぐか②〜未来の見つけかた〜

その女性が言っていたのは、Japan Expoのことだった。彼女の話によると、パリの日本人はボランティアで協力したりすることはあるものの、基本的には関心の少ない行事ということらしい。

考えてみれば、代々木公園のタイフェスに東京在住のタイ人が全員来るわけもない。当たり前のことなのだが、僕にはややショックだった。日本という箱に日本人をなるたけ詰めこみたかったのだ。

そのあと当たり障りのない会話をし

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違和感からなにを紡ぐか③〜未来の見つけかた〜

違和感からなにを紡ぐか③〜未来の見つけかた〜

D A V I D G U E T T A

ポスターの下には、そう書かれていた。世界No.1といわれるDJの名前だ。イビザに来る前、ウェブで見た記憶がある。推定年収はたしか28億円だった。

タグホイヤーといえば、ブラッド・ピットや、クリスティアーノ・ロナウドといった有名人が起用されるブランドだ。なのに彼はどうだろう。ポスターの顔には、剃り残しらしき青ヒゲが目立っていた。

世界中のパリピが

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違和感からなにを紡ぐか④〜未来の見つけかた〜

違和感からなにを紡ぐか④〜未来の見つけかた〜

オタクとパリピ。パリで感じた違和感。イビザの空港で感じた違和感。

僕はずっとオタクの境界線を、意識していた。中学の頃から、クラスの人気者グループとオタクグループの間を、要領よく行き来する、連絡係のような人間だった。海外でも無意識に自分の居場所を探していたのかもしれない。

だからパリで感じた違和感にも、人一倍敏感だったのだ。Japan Expoかスポーツバーか。自分はどちらが似合う人間か。仲間は

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