心配性と医療と老化

 先月受けた健康診断でコレステロール値が高く、一度病院で診てもらってくださいと結果通知表に書いてあった。通知表を手渡されたとき、看護師さんもそう言った。本当に診てもらう必要があるのか私にはわからないのだが、そう言われると心配になってしまう性分だ。とくに昨年から今年と大変な思いをしたので、神経質になってしまう。

 気にしない人は気にしないんだろう。でもわたしは、もんもんと気がかりだったので健診センターに連絡して看護師さんと話してみた。「急を要するわけではないけれど一、二ヶ月の間に一度行ってはどうか」との助言だった。 

 ちょうどかかっている大学病院の検診もあったので、その先生にも聞くと、専門外なので一般の病院の方に行ってくださいとのこと。あ、そう。

 その翌日、郵便局へいく道すがら、内科クリニックがあったので、なんとなく診療時間でも見てみるかと入り口の案内の前で立っていたら、看護師さんが外から帰ってきて通りかかった。話しかけられて、健康診断でコレステロール値が高かったので一度診ていただこうかと思って…云々と言っていると、「いいですよ。お入りください」と促され、ぜんぜんその気がなかったのに、勢いにのまれてそのまま院内へ入ってしまった。

 手続きして待っていると、ほどなくして私の名前が呼ばれた。診察室に入って医師と話す。

 わたし「健康診断でコレステロール値が…一度病院で診てもらえと…」
 医師「無視すればよかったのに」
 わたし「えっ」
 医師「値は?」
 わたし「xxx」だったと思います
 医師「oooまでが問題ない範囲だから」
 わたし「….(心の声)その範囲超えてるけど」

 やはりそうか、と思った。医療関係者に何を聞いたって、それは大したことないから心配しなくていいよ。病院も行かなくていいよなんて誰も言わない。リスク回避をいちばん優先するから、必要ないかもしれない検査でもやる方に考える。

 だから、心配性なわたしとは相性がわるい。芋づる式になってしまう。

 医師との話はつづき、身長が1cm以上縮んでいた、腰がしびれる、なんて言ったもんだから「そちらのほうが気になる」とのことだったので、尿検査と血液検査に加えてレントゲンも取ることになった。診療代がかかるな、とチラと思った。ちなみに身長について、それまでに医師2人と看護師さん1人だったかべつべつに聞いてみたら、みな「年齢的に自然です」との反応だった。

 採血してくれた看護師さんは、レントゲンは骨しかわからないからMRなら詳しくわかるという。もういい、もう散々そういう検査したからいい。いやだ。口には出さないけどね。それから整形外科で見てもらうといいといわれた。何年か前に通ったけどなんの役にも立たなかったです。言わないけど。

 待合室で待つ。

 再び診察室に入る。レントゲンの結果を示しつつ医師がしゃべる。あれがこう、これがこう、と明らかになり、悪化した場合は手術、とか怖いことをいう(悪化しない場合のことには触れない)。予防するには?と聞くと「方法はありません」

 そう。

 病院に行くとだいたいが気落ちする情報ばかりなわけで、老化だから仕方ありませんとかいわれるのよ。なのに、病院行けといわれるのよ。ツライのよ。

 心配を煽る情報にまんまと引っかかって(引っかけるつもりはないでしょうけど)物事を大きくしてしまうパターンがあるのは自覚している。

 二日続けて病院で採血…なんか疲れた。また検査結果を聞きに行かなきゃならない。

 無視すればいいのに、っていわれても、無視していいところと、無視してはいけないところの判断は素人にはできないよ。諸事情もあるし。だから行ってみたの。

 病院は病院を呼び、検査は検査を呼ぶ。

 もちろん病院で診てもらうことは大事だと思う。老化というにはまだ早いけれど、たしかに老いの入り口に入ったことを実感する今日このごろ。自分なりの病院との関係をつくっていくことが必要になったんだと思う。もの悲しいな。

 健診のとき、わたしの後に結果を受け取っていた男性を覚えている。同じく、看護師さんに病院で診てもらうよう説明されたけれど、「行かなくていいだろ」って言ってた。看護師さんはそれに対して「ちゃんと行ってくださいねー」と念を押した。あのおじさんは「気にしない」を選んで、何かあったらそのとき診てもらうのでいいって方針なんだな。

 気にするのと気にしないのと、どちらがいいのかはわからない。気にしすぎてたら日々の幸福度が下がってしまうものね。病院に行かなくてずっと引っかかってしまうなら行ったほうがいい。振り回されちゃうけど。

 …ああ、あのおじさんはそういうのが煩わしくて嫌なんだ。だからまるっと省くんだ。そんなことに労力を使うより美味しいものでも食べてるほうが気分いいもんね。それもとってもいいと思う。

 さてさてわたしは何を食べようか。


 


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