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選書、書棚づくりの楽しみ。

わたしは日々図書館で働いている。あたらしい図書の購入のための選書も大事な業務のひとつである。おおよそ、市民や学生や広い一般利用者のために選書をしてきたのだが、その際に気をつけていることは「いかに自分の趣味を隠して選書するか」である。

ただ黙って予算内に本を選んでいたら、自分の好きな本、作家、ジャンルのものに、当然偏る。わたしだったら、人文系、特にアート、心理・人生訓系、紀行(いつでも旅に出たいので)、音楽、喫茶や街歩き、本屋の本などである。

市民の図書館の場合、利用者からリクエストをもらい、購入することも多いのだが、一部の背積極的な読書家の個人の書棚にならないように とは、過去に先輩から教えられたものだった。

自分の趣味を隠して選書するとは、なかなか難しく、ただ自分の趣味のものを選ばないというだけではすまない。わたしが先ほどあげたアートや喫茶などの本を避けて、マッチョな本とか経済の本とかそういう真逆のものばかり選んだとする。当然、それはそれでとても偏った内容になってしまう。

この点、個人の書店さんの選書というのは、もっと個性的であろうと思う。
特に古書店、新刊古書店などTSUTAYAや三省堂やジュンク堂とは違うんだぜという書棚にならなければ、おもしろくない。いくら興味深いイベントや名物店主がいたとしても、書棚がイコールそのお店なのである。好きな本、自分のおきたい本をもとにそこから膨らませて、つくりたい書棚を構成してくというのは、とても楽しそうである(もちろん、すごく頭をつかうことかもしれないが)。

さて、先日わたしもお世話になっている霞が関のamistさんの二階にある新古書店(古書と新刊書がミックスされておいてある書店)ホォルさんで、うちの飼い猫のこんちへのクリスマスプレゼントに絵本を買った。
ホォルさんではその少し前にクリスマスギフトにいかがというテーマで、かわいらしい絵本などが入荷されていたのだが、店長はじめくんに紹介されたその本ではなく、絵本の棚に並んでいた別のかわいい子猫の絵本を買ってしまった。

ふだん、ホォルさんで児童書はあまり見かけない気がするが、わたしは絵本やこどもの本が大好きなので、クリスマスをきっかけによい絵本に出会えてとてもうれしい。


『いたずらこねこ』バーナディン・クック レミイ・チャーリップ

「猫に絵本をよみきかせる」というアイデアだけいただいて、うちのこんちは大人だけどしっぽの先がコンロの火についていても気が付かないぼんやりした猫なので、子猫がはじめて亀に会って驚くというかわいらしい内容のものにした。こういう目的で書きました、とあつらえられたものを避けてしまう性格だからかもしれない。それから、こんちは右にむかって進もうとしていたのに、抱き上げて左へ向きを変えるとそのまま左に走っていくような猫である。

選書の話に急に戻るが、そんなわけなので、適当に自分の趣味のものも忍ばせつつ、万遍なくあまりニッチな内容の本でないものを選んでいくことになる。汎用性のある本ばかり選ぶとそれはそれでファミレスやTSUTAYAのような書棚となり、とってもつまらない。趣味よく、適当に一般的で、適当にクセがある本。内容と棚に並んだ時に「いいな」と思える書棚(見た目もとても大事なのである)を選ぶことが楽しいのである。
書棚をつくることは人のいる空間をつくることで、空間によって人を育てるということができる。

本が好きというと、読書が好きだとか製本が好きだとか思われる方が多いのだけど、鉄道マニアにも撮り鉄、乗り鉄など色々種類があるように、わたしは断然書棚好きの本好きであると思う。


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