2ndアルバム『羽の意味さえ』セルフライナーノーツ(前編)
さて!前回に引き続きセルフライナーノーツ企画第二弾!!
私の2ndアルバム『羽の意味さえ』の全曲解説をやっていきたいと思います。
(前回は1stアルバムについてやりました。一応リンク貼っときますね↓)
で。
このアルバムは曲数が10曲と多いので、前編後編に分けてお送りしたいと思います。今回は前半の1〜5曲目までの解説をお届けします。
前回同様、楽曲を聴きながら楽しんでいただけると幸いです。
サブスクへのリンクを貼っておきますね。
↑Spotifyの方はこちら。フリープランでも聴けるっぽいですよ。
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概要
2022年11月19日リリース。
前回の『最初のキッチン』のリリースから約一年後、10曲入りの2ndフルアルバムとしてリリースしました。
だいぶDAWの操作や曲作りの感覚にも慣れ、楽曲の展開や含みなどさらに幅を広げて、全体的にエモーショナルな雰囲気が漂うロックアルバムに仕上げてみました。
あっけらかんとした明るさよりも、ほんのちょっとだけ暗い・冷たい・メタリックなサウンドにミクちゃんの素っ頓狂な歌い方が絡むような……まあエモいです!私はそう思ってるんですが、リスナーのみなさんからしたらどうなんでしょうね。
アルバム全体のテーマとしては『どこまで行っても幸せになれない人間』です。重っ!!そんな病んでたわけじゃないんですけど、この時期に聴いてたのがニルヴァーナやレディオヘッド、邦楽だとハスキングビーやニコチンみたいなそんな感じでした。
暗いというよりほんのちょっと含みがあるというか、そんなサウンドを目指してましたね。
ジャケットイラストはメアリーさんという方の作品です。
https://twitter.com/maryo0v0o
青い薔薇を持つ天使が虚ろに真っ直ぐを見つめていて、とても印象的ですね。
実は私なりの構想があって当時はそのテーマに沿って描いてもらってたんですが、なんか違うなーと思うようになってしまって……
メアリーさんの過去作品(このイラスト)を参考にして描いてもらっていたのですが、だんだんとこの作品をそのまま使わせてもらった方がいいんじゃない?と思うようになってしまって、メアリーさんに交渉して使用権を分けていただくことになりました。
そこで「ちなみに、このイラストのタイトルって何なんですか?」と私がお尋ねしたところ、返ってきた答えが『羽の意味さえ』だったんです!!
それにビビっ!ときてしまって、もうそれそのままこのアルバムのタイトルにしていいですか?と交渉したところ、快くOKをいただいた次第なんです。
なんか運命的なものを感じたんですよね。
ほら、羽って2枚あるじゃないですか。それで2ndとかけてあるっていう。
あとなんか含みがあってエモい(語彙
結果的に最良の選択だったなと、今振り返ってもそう感じます。
のちに、2023年に一旦配信サイトから取り下げた後にリマスターを施し、現在は再び聴けるようになっています。
本格的に活動の場をサブスクに移したかったのと、後々ベストアルバムを作ったときに他の曲との音量差が気になるということで敢行しましたが……これも散々迷いました。
なんかどこかで「リリースした後でも一旦取り下げてエディットできるのがインディーの強みだ」みたいな記事を読んで吹っ切れた感じです。
デモ音源
今回フルアルバムをリリースするにあたって、1曲目はこの曲にしよう!って決めてました。いきなりバンドの解散がテーマになってて、そこからバンドサウンドが続いていったらおもしろいんじゃないかなって。しかも『バイト代が消えてゆく』が冒頭って(笑)。リアルですね。
内容はほとんどフィクションです。ほとんど(笑)。
実はDTMやボカロを始める前は、DTMなんてバンドに劣ってるものだと思ってたし、ボカロも生身の人間の歌にはかなわないものだと思ってました。でも自分がこの世界に飛び込んでみて分かったんですが、そこに優劣なんてものは存在しなくて、DTMのカルチャー、ボカロのカルチャーとして独立していて。私自身がバンドでコケてしまって今があるので、所詮逃げた先にあったものという認識があったのですが、それが誤りだったということに気づいたんです。
バンド活動をやっていて、こんな嫌なことがあった、こんなボーカルに悩まされたというストーリーをボカロが歌うという、皮肉というか決意というか、そんなこんなでこれから数曲始まるんですけどどうでしょうか?みたいな。
もともとはバンド活動の楽しさをみんなに伝えたい!というのがコンセプトだったんです。これは本当です(笑)。
ケチャップ&マヨネーズ
えっと…これは……遊びで作りました(笑)。
少しヘビーな曲が欲しかったというのと、日本語版の初音ミクでどれだけ英語が歌えるのか試したかったんです。あとはスラップもできたしEm⇄Eの切り替えも自然にできたし……それまで作ってきた曲から思い切って別の方向に行ってみようとしましたね。
ココバットとかレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいな90年代ミクスチャーをミクちゃんが歌ったらどうなるんだろ?っていう好奇心がまずあって(笑)、歌詞にいろいろオマージュなんかを取り入れて……いつの間にか出来上がってました。
あんまりボカロでこういう曲調なくないですか?とことん流行を追いかけない…という姿勢を表現したかったんだと思います。当時の私は。
あ、あと『ここで予期せぬクラッシュ』のとこは本当にDAWがクラッシュして大ショックでした!!結構作り直しましたね。そのときからコマンドキーでしょっちゅうデータを保存するクセがつきました。よかったよかった。
ギターはLがメサのモデリング、Rがメタルゾーンで、全てパワーコードで弾いてます。たぶん。確かそうだったはず。ライブで2曲目にこれやったら絶対ウオオー!!って盛り上がりますよ。誰かやってください(笑)。
ステルクリエイション
いつだっけかのボカコレに参加した思い出深い曲です。最初にAメロが思い浮かんで、これはいいメロディー構成だなーと色々温めながら作り進めた感じです。テーマは『転生を繰り返すボカロPと、置き去りにされるボーカロイド』。ちょっと悲しい曲になっちゃいました。
突如現れたルーキーがいきなりホームラン!ってシナリオに憧れて、ダメならアカウント作り直して再チャレンジ…って、創作の本質というか、ファンや作品を置き去りにしてる気がするんですよね私は。それで仮にチヤホヤされたとして、その先に何が待っているのでしょうか。なんとなく大物になれそうな、モヤッとした期待があるのでしょうか。
そんな淡い期待を打ち砕くような曲を作ってみたのですが、思ったより伸びなくて(笑)。まあそりゃそうですよね。淡い期待を打ち砕かれたのは私自身だったというオチです。
曲自体はバランスよくできたんじゃないでしょうか。8ビート主体だったりベースもルート弾きばっかりで、シンプルに疾走感がある曲を目指してみました。詰め込もうと思えばいくらでも詰め込めるんですけど、あえて空虚な感じを残しましたね。
歌詞もマジメに作りました。いつもはマジメじゃないんかい!!ってツッコミは置いといて(笑)。
『掃いては捨てるクリエイション』なんて今思えば禁句ですよね。ごめんなさい(笑)。
ZOO UNLUCKY
これはですねー……今回のアルバムでは個人的に一番気に入ってる曲です。よくがんばった自分!(笑)。メジャーキーなのにどこか混沌としててスリリングな曲をやりたかったんですね。いつまでたっても幸せになれない。明るい曲のはずなのに、ずっと目の前が霞んでるというか……全然楽しくない。そんなイメージです。歌詞もそんな感じで世界観も言葉選びもわざとめちゃくちゃにしました。
最初"THE UNLUCKY"ってタイトルだったんですけど、THEだとパンチが足りないってことでZOOにしたりして……そこから膨らませていった感じです。
当時レスポールを買ったのが嬉しくてそれ1本で録ってます。実はずっと歪んだパワーコードが鳴っててちょっとロック色も出してみたんですけど……やっぱこういう曲はストラトの方が合うのかな。ブルースドライバーでちょっとガラガラした音を狙ってみました。ドラムも遊び心出せて…えっと……すごいよかったです(笑)。
ベースはプレベにフラット弦張ってピックで弾いてます。これがドンピシャですごく扱いやすい音でしたね。また他の曲でもこういう音使いたいです。
実はこの曲には裏テーマがあって、ドラクエ5で主人公に選ばれなかったビアンカの心情が含まれてるんです。人生も、こうなりたかった!こうであってほしかった!の連続なのかもしれないですね。
さよなら吉祥寺
ここでいきなり吉祥寺とか出てきて、急に現実に引き戻された感がありますよね。
このタイミングで弾き語り曲を入れたのは実は理由があって。元々この曲はボーナストラックとして最後に入れる予定でした。ですが後に続く曲からドラムのソフト音源が変わっていて。それまでのドラムの音を一旦忘れてもらうために、敢えてここにこの曲を入れてみました。あとはスーパーカーとか銀杏BOYZとか、その辺の影響ですね。
ギターを初めて弾いて……作曲を始めてわりと最初の段階でなんとなく作った曲だった気がします(よく覚えてない…)。歌詞は心情というより情景というか、雪が降った冬の夕方〜夜にかけてのスン…とした空気感をイメージできるように作りました。きっと別れの曲なんでしょうね。ええフィクションです。きっとフィクションです。
本当はアコギか、もしくはギターにアコースティックシミュレータかけて弾きたかったんですが、結局クリーントーンにコーラス・リバーブをかけて弾いています。
これはこれで独特の『寒さ』のようなものが表現できたんじゃないかなと思います。
余談ですが、2023年にアルバムのリマスター版を出しましたが、この曲だけは手を加えていません。エンハンスする必要性を感じませんでした。
……ということで、前半はこれにて終了です。
次回は後半を書いていきます。
ここまで書いてみてふと思ったんですが……
私ボカロPっぽくないよね(笑)。
ほら、もっとボカロPってniconico中心で動画とかと絡めたり、もっと整ったEDM的なサウンドメイキングされてるじゃないですか(私の勝手なイメージ)。
多分なんですけど、そもそもプロモーションの方向性がボカロリスナーやniconico勢に限定されてないんですよね。
邦ロック好きな人にも全然聴いてもらいたいんで。
ボカロ好き・ミクちゃん好きにももちろん届けたいって思いはあるんですけど、動画で勝負してないのとスマホのスピーカーでのリスニングを想定してないので、ちょっと距離はあるのかもしれないですね。あと調声もしっかり肉声寄りなんで。
なんにせよサブスクでいろんなメジャーアーティストの方々と同じ棚に入ることができる世の中になったわけで。
そんな中で少しでも手に取ってもらえる機会を増やすために、存在感をもっともっと出せるようにがんばりたいです。ね。
かおりP
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『バンドサウンドクリエイター・かおりP音楽論』不定期更新です。
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↑ソフト音源という枠組みを通り越して、今や私の大切な音楽パートナーとなったボーカロイドについてのエッセイです。
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