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公式戦デビュー-25歳の冬-

45歳現役プロアスリート猪頭香緒里の自伝 #3

トレーニングするゲレンデが、八方尾根スキー場と決まり、シーズン・インとなりました。
八方尾根スキー場は、ゲレンデのコースを覚えるまで、数日かかりました。
そして、その豊富なコースと斜度に魅了され、早朝からリフト営業終了まで、毎日滑り続けました。

ほとんど休みなく一日中滑っていたので、身体は悲鳴を上げていたはずなのに、楽しさのアドレナリンが疲労を上回り、疲れを感じない日々が続きました。

そして、レース感覚をつかむため、地区大会の日程までに、参加できるレースにはエントリーしていくことにしました。
大会情報を調べ、公式の大会から非公式(いわゆる草レース)の大会まで、日程が重ならなければ、可能な限りレースに出場しました。
車でレースに参加したのですが、遠ければ前泊(車中泊を含む)して参加しました。

当時、スマホは普及してなかったので、スキー場までは、本(地図帳)でルートを調べ、運転していきました(カーナビも無かったので)
お陰で、当時の愛読書は日本地図でした(笑)

何より、初めての冬の車泊は、刺激的でした。
泊まる場所での、トイレの確保は絶対だし、食料も確保しておかなきゃいけない。
エンジンを切って寝るので、もちろん寒い。
ゲレンデの駐車場で車泊しようものなら、早朝の除雪車のエンジン音で目が覚める。

車泊している選手もチラホラいて、どういうふうに過ごしているのか、さり気なく参考にしたりしました(笑)。

物心ついてからキャンプ経験すら無い私にとって、毎日がサバイバルで勉強でした(笑)
だから、夢中になったのかしれません。

そのうち、レースで何度か会う選手もいて、話をするようになり、さらに知識が増えていきました。

そんな日々を過しているうちに、地区大会の日がやってきました。

登録チームが大阪なので、西日本地区でレース参加でした。
レースに参加する為、西日本へ行くと、スキー場の斜面が八方尾根スキー場に比べて緩く、自分が凄く上手になったと勘違いする状況でした。

ついつい、調子に乗ってしまいました。
地区大会で上位に入って全国大会へ行けると、勘違いしたまま地区大会がスタートしました。
1回戦、2回戦と勝ち進んでいき、順調と思っていたのですが、段々と緊張の影が忍び寄ってきて、身体が動かなくなり、…転倒。

思い描いていた未来が一瞬で消えた瞬間、頭が真っ白になりました。
ウソでしょ…?!

これが、現実。

初めて、敗北を感じました。
悔しい気持ちで溢れました。
これが、負けるって事なんだ…。

今まで、勝負事から逃げてきた(関わってこなかった)人生だったので、勝つことも無ければ、負けることも無かったのです。

悔しい、もっと練習したい。次は勝ちたい!!
熱い感覚に、勝負の楽しさを感じました。

負けたからこそ、さらにモチベーションが上がってきました。

来シーズンは絶対に全国大会へ行く!!!

その熱い気持ちが、シーズン後半のモチベーションとなり、来シーズンに向けて、練習だけでなく、情報集めもしっかりとできました。

こうして、全国大会へ出場することなく、25歳の冬は終わりました。

しかし、気持ちはすでに、来シーズンに向かっていました。



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