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「 TikTokをめぐる米中ハイテク戦争の背景」

今日Twitterに入った途端、「TikTokをダウンロードしてクーポンをもらおう!」というツィートが現れて、驚愕した。

新型コロナウイルスのおかげで、家にいる時間が増え、ネット上で過ごす時間も増えているが、そこに米中ハイテク覇権戦争が絡んできているのだ。
もはや人ごとではない。

私たち一人一人にとっても「米中ハイテク覇権戦争」は、身近な問題なのだ。

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TikTokはご存知のように短い動画をアップして人気のある中国の動画投稿アプリだが、今、その信頼性には、大きな疑問符がついている。

8月6日、トランプ大統領は TikTokに関わる取引を45日後に禁止する大統領令に署名した。
これは個人にも適応されるので、このままでは、アメリカの個人もこのアプリを使えなくなるということだ。

現在は、TikTokのアメリカ事業をマイクロソフトやウオルマート、オラクルなどが買い取る交渉が進んでいるようだが、中国側も、TikTokのA Iなどに使われている中国の先端技術の海外移転を制限するなど、防衛手段を講じている。

アメリカは、 TikTokのアプリをとり入れた瞬間に、個人の情報が親会社のバイトダンスに掌握され、その情報が中国政府に流されうると安全保障上の危機を訴えている。

つまり、このアプリを入れることで、個人情報が知られるばかりか、メールなどの内容も筒抜けになり、その中で弱点が見つかれば、利用して、脅され、中国へのスパイ行為を強制されかねない、ということだ。

また、投稿した動画から個人や友人関係を洗い出し、本人特定に結びつく危険もある。

アメリカには若者を中心に約一億人のユーザーがいると言われる。
今年6月のダウンロード数は世界1位だった。(米センサータワー調べ)

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TikTokや管理会社バイトダンスは、「これまで、ユーザー情報を中国政府に渡したことはない」と主張するが、中国には「いかなる企業も個人も政府の情報収集に協力しなければならない」という『国家情報法』という法律があるのだから、今後、圧力をかけられた際に情報を渡さないわけにはいかない。
何しろ、経営者が政府からの要求をはねつければ、法律に違反したとして断罪されるのだから。

アメリカのポンペイオ国務長官は「中国製アプリはプライバシーを脅かし、コンピューターウイルスを広めて、政治宣伝や偽情報を拡散している」と警鐘を鳴らしている。

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現在、アメリカやオーストラリアでは中国人スパイの摘発が続いている。
スパイは献金を通じてその国の政治に関わったり、ハイテク企業の技術者を取り込んで、先端技術を盗んだりしている。

アメリカでは、2018年中国のスパイとみられる男が拘束された。彼はアメリカ有数の航空宇宙関連メーカー「 GEアビエーション」の技術者に接触し、最新のエンジン技術を盗もうとしていた疑いがかけられている。
また、他にも多くのアメリカ国内で働く中国系のエンジニアや研究者との連絡網を作ろうとしていたとされる。

オーストラリアでは、中国の情報機関が、総選挙に中国系男性をメルボルン郊外の選挙区から立候補させようとしていたと報道の報道がなされ大騒ぎになった。
男性は与党・自由党の党員で高級車のディーラーだった。中国の情報機関の関係者とみられる実業家が、男性に選挙資金として100万豪ドル(約7400万円)の提供を申し出たとされる。
この男性はオーストラリアの治安情報局「ASIO」に相談した後の3月、ホテルで死亡しているのが見つかった。死因は不明だ。

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オーストラリアのモリソン首相も「深刻に憂慮すべき悩ましい事態だ」と、危機感をあらわにしている。


最近の中国に神経を尖らせているのはアメリカや豪州だけではない。
インドは7月に59の中国のアプリの利用を禁止したが、9月2日には、さらに118の中国のアプリやゲームを禁止するとした。

アリババのモバイル決済アプリ「アリペイ」も禁止される。

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日本でも、これまで埼玉県などの地方自治体が県からの情報を伝えるために TikTokを利用していたが、一部の県民からその危険性を指摘され、使用をやめた。

これらのアプリの怖さは、パソコンやスマホに侵入し、メールの中身を覗かれるだけでなく、位置情報から、勤めている会社を特定し、「将来役に立ちそうな人物」が特定されることにある。
さらにアリペイなどを使用すれば、どんなホテルに、いつ泊まったかも把握され、あらゆることを材料に、恐喝の手段として使われる危険性がある。

アメリカは、テンセントが運営する「ウィーチャット」も禁止する。

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同様に、ユーザーの個人情報が中国政府に悪用されることを危惧しての対策だ。

特に会話の内容によってはそのまま恐喝材料にもなりかねない。
一方、日本ではようやくこれらのアプリの危険性が認識され始め、今後の対策を考える部会ができたばかりだ。

個人で危機感を抱いている人は少数派だ。

情報は自由に流されるべきだが、個人のプライバシーが、どの国であろうと当局にいつの間にか渡され、利用されることは非常に危険だ。
それが、全体主義の「中国当局」となると、非常に危険だ。
香港問題で明らかになったように、中国政府に人権意識などないのだから。

もし、今後、このようなアプリを使ってみたいと思ったら、取り入れる前に、ぜひ、「自分の全ての情報がどこかの国の当局に握られ、いつ、どこに(誰と)行き、何を買ったかまで把握される危険がある」ことを十分考えてみてほしい。

綺麗な花にはトゲがある。

甘い話には裏がある、のです。

ようやく週末。良い週末をお過ごしください!😉💕

台風の進路にあたる方は、どうかお気をつけて。

拙著「エルドアンのトルコ」には、「米中貿易戦争」、だけでなく、それがハイテク、安全保障をも含む『覇権戦争』である事、これまでの経緯も詳しく書いてあります。😉💕 

まさに今に至る『新冷戦』の始まりから読んでいただけます!!😉

今世界で何が起きつつあるか、将来私たちの生活がどう変わっていくのか、知るためにも是非、読んでみてくださいね!😉💕

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