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【No.14 クッキー屋さん起業までに思ったこと②】

前回、会社員を辞めて、以前やっていたフリーライターではなく、クッキー屋さんを選択した話を書いた。

改めて読んでみると、フリーランスが年齢的にも難しくなって消去法的にクッキー屋さんを選んだようにも見えなくもない。実際に会社員になる前には、起業をした女性、あるいは起業しようとしている女性など、様々な働き方を選ぼうとしている方たちに書くというスキルを提供して、応援するという活動をしていた時期もあって、社会に受け皿がないからといって、起業を推し進めようとしている政策に多いに違和感を持っていた。

わずかな支援金を出して起業させ、自分自身の収入や生き方に責任を持たせようというのは違うのではないか。女性が様々なライフステージを経ても快適に働き続けられる受け皿をまず準備すべきだろう。子供という社会の宝を生み育てた女性たちが復職できない、できたとしてもずっと現役を通してきた人に比べてブランクというハンデで安く買いたたかれる現状をなんともできない政治を政治と呼べるのかっ!と憤ってもいた。

だから、何としてもフルタイムで働きたかったし、ブランクを覆せるだけの実力を示せばいいのではないかと思っていた。しかし、そんな心意気は1年で砕け散り、体調を崩して病院のベッドで自分に何ができるのだろうと考えた経緯については、筆者の過去の記事を見ていただきたい。

子供3人と自分が生きていくだけに、どれほどのお金が必要なんだろう……。そう思ったときに思いついたのは、クッキー屋さんだった。振り返ってみると、私にとって「書くこと」と「(お菓子を)焼くこと」は人生の両輪のように常にともにあるものだった。すぐに結果が出ない「書くこと」で悶々としたらマドレーヌを焼く、パンをこねながらコピーを考えるということをずっとずっと、子供が生まれる前からやっていた。

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もしかしたら、不況などのたびに今まで仕事を発注してくれていた出版社や制作会社がライティングを内製化して、ふと気付くと仕事が減っていたときに傷ついていたのかもしれない。自分の実力不足を指さされている気がして……。決して認めてこなかったし、認めたくなかったけれど。

だから病院のベッドで暇に任せて作った事業計画はフリーライターではなく、クッキー屋さんだった。幸いにも実家に使っていないキッチンがあった。水回りを触らなければ一部屋を修繕するのには、そんなに資金は必要ないのではないかと思って、退院してすぐに見積をお願いした。

保健所に問い合わせると、清掃しやすい(水洗いできる素材の)床材と、食器を洗うのとは別に手洗いがあれば良いという。床材を張り替えるのは10万円以下、手洗いをつけて壁紙を張り替えるのに25万円程度。それに最低限のステンレスの棚を2つほど購入して、準備は整った。

消去法ではなかったにしても、「毎日毎日クッキー焼いていて、飽きないかな!」というのが唯一の不安材料だったが、それも今のところ解消されている。甘いものって人の心をホッとさせる効果がある。

文章でももちろん、人を勇気づけたり、温かい気持ちにさせたりすることはできるけれども、一旦文章が手元を離れてしまうと、どんな風に受け止められているのか、知る機会はわずか。広報をしていると名前、顔出しをしているせいか、「ファンです」と言ってもらえることもあるけれど、ほとんどの仕事では名前も出さないために、自分の原稿がどんな風に編集され、読者の手元に届くのか、あまり分からない。というか、あまり気にしすぎるときりがないので、メールに添付をして送った後は決別した気分でいる。

だから、クッキーをオンラインショップで販売し始めて、メールや直接、感想を聞くことができて、恥ずかしくも嬉しい。わぁ~、こんな風に私のお菓子を食べてもらうことができるんだな、と色んな気づきがある。

主婦の趣味程度だろう、と言われることもあるけれど、そういう揶揄は中指を立てて忘れよう。とりあえず3年やってみよう、と決めたからには真剣にお菓子と向き合おう(時折こうやって書く。人生の両輪だから、ね)。

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