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着物生活について、むかし母にきいたこと
2018年4月29日のツイートまとめ。着物を日常的に着る生活に興味があった頃、当番の母にきいた祖母や曾祖母の話。
そういえば、母の祖母(私の曾祖母)は一生着物で過ごして洋服と名のつくものに袖を通さなかったと聞き及んでいる。ただし編み物は身に着けていたらしい。毛糸で編んだショールとか。寒い時には毛糸の腰巻を愛用していた、とこれも母伝いにきいた話。
着物生活に興味を持っていた頃、母を質問ぜめにしたことがある。妊婦さん用の着物や帯ってどうするの? とか。母は戦後(1949年)生まれの人間だが、浴衣やウールのアンサンブルくらいなら本を見ながらさっさと縫えるひと。母の母、私の祖母は着物なら何でも、袴さえ縫えた。母の祖母、私の曾祖母は一生着物のひと。
和裁の資格があるとか、和裁で身を立てていたとか、そういうことではない。昔の、子沢山な農家のおかみさんとして、家族が着るものは何でも作っていたから着物なら何でも、洋裁だって雑誌を見ながらおぱんつまで、布団の皮だって自分で縫ったというのが私の祖母。
祖父の羽織袴まで縫ったと言っていたし。実際、祖父が着なくなった羽織をリメイクした総シルクで真綿(つまりお蚕さんの繭で、絹糸にならない品質のものを叩きのばしてふわふわにしたやつ)入りの半纏なんかを後年、私用にもらったりした。軽くて暖かくてすべすべで、とてもいい半纏だった。
オール着物生活だと妊婦さんはどうするのか? マタニティ着物とかあるのか? 帯は? みたいなことを母に質問したことがある。母がこどもの頃までは、着物や浴衣の妊婦さんを見たことがあると言っていたから。「お腹が大きくなっても打ち合わせを浅くしてそのまま着物は着るし、帯もする」と言っていた。
それでも間に合わないほどお腹が大きくなったらどうするの?前が合わないほどになったら? と訊いたら「着物の脇は深く折込んであるから、ほどいて脇を出せば身幅は出る」と言われた。洋服の縫い代って幅広でも1.5cmくらいだから、そのイメージでいたけれど確かに着物の脇縫い代は広い(当番も浴衣なら自分で縫ったことがあるからわかる)。
和服、ほとんど布地の耳部分を切らないんだよね。衿肩あきのところを切り込むのと、パーツごとに裁ちきる線と、おくみと衿を作るために生地幅を半分に切る以外では鋏を入れない。脇縫い目のところと肩と、衽つけ線の裏には余った生地がたくさん折り込まれている。
体の横幅が増えても減っても、着物を解いて脇や衽に縫い込まれている部分を出したり折り込んだりして縫い直せば体に合うようになる。もっとも衽まで出した場合には衿が足りなくなって生地を継ぎ足す必要が出てくるけれど。だからマタニティ着物という特別なものはなく、お腹が大きくなれば縫い直すだけ。
【2024年追記】
ちょうど2024年は平安時代が舞台の大河ドラマをやっているけれど、あの平安時代の着物は現代の着物よりも身幅も広いし打ち合わせも深いし、妊娠してお腹が大きくなっても特に縫い直しもせずにゆったり着ていたんだろうなと思います。袴も襞をたっぷりとってあるし、脇もかなり大きくあいているし、腰についている紐も長いわけだからお腹が大きければ大きいなりに胴回りに合わせて結べばいいわけです。ある意味合理的。
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