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弟とADHD#1 天才が生き辛い世界

こんにちは!かおりです。
今回は私の2歳下の弟の話をしたいと思います。

私の弟はADHD

弟が幼稚園生の頃だっただろうか。弟は、母に連れられて療育センターへ通うようになった。私はいつも弟の検査を待っていた。母にどんな検査をするのか聞いたら、「IQのテストと脳波の検査をするのよ」って言っていたけどよく分からなかった。

でも、弟が『普通の子』とは違うっていうのは知っていた。思い通りにいかないと暴れたし、空気を読まない発言をしたし、こだわりは強かったし。

弟は毎朝薬を飲んでいた。リタリンだとか、コンサータっていう名前だったと思う。その他にも脳波を抑える薬を飲んでいた。小学校を卒業するまで、毎日毎日飲んでいた。そして定期的に療育センターに行っては、脳波を検査していた。

なんでこんなに検査をするの?薬を飲むの?って何度か母に聞いたことがある。母は「他の人よりも気持ちを抑えられない事が多いから、その為の治療なのよ。でもね、弟のIQは他の人よりもずっと高くて、得意な事もあるのよ」って言っていた。

弟は天才

私は弟を天才だと思っていた。
弟は小学生の頃、地理や歴史の事を何でも知っていた。中学にあがる頃には大学入試問題を解いていた。高校生になると国会中継を聴きながらラノベを読んでいた。県内トップの県立高校でテストは常に上位20人以内だった。
相変わらず人の目は見れないし、ボソボソ喋るし、人の気持ちは分からないけど。

自分から変わった

大学に入学した弟が「スキーサークルに入った」と報告してきた。私も母も驚いた。
まず、彼は人と関わるのが苦手だ。ごく少数の彼を理解してくれるコミュニティだけで生きてきた。高校でも、部員2人の数学物理部と、部員3人の囲碁将棋部に所属していた。それが部員40人のサークル、しかも『普通の人』ばかりのコミュニティに自分から入ったのだ。
次に、彼は人生で1度もスキーをしたことがなかった。スキーどころか雪山にも行った事がなくて、リフトにすら乗った事がない。
弟は言った。「俺、なにかやらないと、ずっと家でゲームして、4年間引きこもりになりそうだから」。
結局彼は、4年間スキーサークルをやりきった。結構ガチなサークルで、冬は2〜3ヶ月家に帰ってこなかった。正月も雪山でバイトをしながら合宿。卒業する頃には、スキーなんとか検定をちゃんととってきた。卒業の時にもらった色紙には『弟先輩は見た目怖い、毒舌、でも教えるの上手でした』って書いてあって、ちゃんとコミュニティに属していた証をみて、ちょっと嬉しくなった。

就活は惨敗

最難関大学で優秀な成績、文系なのに独学でプログラミング言語を3つ習得していて、TOEICも700点以上、景気もいいのに、弟は30社以上の企業から落とされた。
面接官の目を見て話せないんだろうなっていうのは予想がついた。ある日「もう就活しない」と半泣きで帰ってきた事があって話を聞くと、就活の時に受ける性格診断みたいなので「あなたは異常な数値です」って面接官に言われたそうだ。

私は弟に手紙を書いた。「私は君が天才だって知っている。でも多くの人事は凡人だから君を理解できない。君を理解できない企業になんか行かなくていい。もっと君と同じレベルで高度な会話をできる企業を探すべきだよ。諦めないで。」

弟の就職が決まった。規模は大きくないが、東大京大東工大卒しかいない、その道の天才達が集まる企業だった。弟は嬉しそうに「社長が面接をしてくれたんだけど、この分野とこの分野に関して1時間も話してしまった。凄く楽しくて、もっと色々聞きたいと思った」と言っていた。天才を天才だと見抜いてくれる人がいて凄く嬉しかった。

日系大企業には凡人しか集まらない

私は弟と逆だ。凡人を極めた凡人。
中学高校とオール5。現役で都内国立大学に入って、それなりの成績をキープ。運動部に所属して、飲食店でバイトして、明るくて、友達も多くて、企業面接が得意で。就活で受けた東証一部上場企業は全て内定をもらった。そのうちの、東証一部上場メーカーに就職を決めて、首席で入社して新入社員代表挨拶を務めて、役員に気に入られて。
でもなにも秀でたものがない。弟のように、ずば抜けた才能が何もない。弟よりできる事といえば、周りと調和をとって物事を進められるだけ。それだけで、社会的には凄く評価されている。
100人以上いる同期をみても、皆、調和のとれる人ばかり。弟みたいな天才がいない。凡人しかいない。

天才が生き辛い世界

私は弟に海外へ行く事を勧めている。
先述の通り、日本という国は『調和』をとれる人間を評価する。大切な事ではあると思うけど、その世界では天才が息をし辛い。才能があるのに、それが評価されない。発揮されない。

弟は現在、データサイエンティストとして働いている。ITのトップ企業から弟の会社へ転職する人が多いらしく、色々な話を聞けて、技術を知れて楽しいそうだ。「うちの会社は、他人に興味がない人が多いから、俺に向いてる。」

弟にはこれからも、才能を殺さないで活かしてくれる人と新たなものを創造してほしいと思っている。弟はADHDであるからこそ、他の人と違った視点で、他の人よりも豊富な知識で、世界を見ていると思うから。

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