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カラフルなこの街で【感想文の日㊲】

こんばんは。折星かおりです。

第37回感想文の日、今夜感想を書かせてくださったのはミーミーさんです。

昨年5月にnoteをはじめ、毎日投稿を続けていらっしゃるミーミーさん。大好きな競馬や阪神タイガースのこと、ご主人や息子さんとの何気ないやりとりなどを時にコミカルに、時にしっとりと綴られています。コメント欄もいつも賑わっていて、ミーミーさんがnoteをたっぷりと楽しまれていることがひしひしと伝わってくるようです。改めて、ご応募くださりありがとうございます!

それでは、ご紹介いたします。

■3億円あったら

部活の朝練、授業、研修、会議、夕方の部活、夜になってようやく手を付けられる教材研究……。約15年前、中学校の先生として働いていたミーミーさんはハードな毎日を送っていました。夜9時を回ると先生たちはみんな職員室でグッタリとし、ぽつりぽつりと世間話が始まるそうなのですが、ある日「ねえ、今、宝くじあたったらどうする?3億円」と尋ねられて……。

きっと誰もが一度はしたことがある「宝くじが当たったら」という想像。世界一周、別荘を買う、それとも堅実に貯金?思いを巡らせてわくわくするけれど、社会人なら一番に気になるのはきっと、仕事のことですよね。ミーミーさんたちも一度は「やめちゃおうぜ!」となったそうなのですが、どうしても気になることがあったようです。

「まあ、今のクラスが終わるまではね、ちょっとこのまま働こうかな」という先生が現れました。

すると「そうだな、俺も今の子たちが卒業するまでは・・・」という先生も。

新しい情報も飛び込んできます。「〇〇の弟が来年入ってくるんだって」「へえ、来年かあ!楽しみねぇ。じゃあ、来年〇〇の弟を見るまで」

挙句の果てには「今の子たちが卒業して高校の制服姿を見せにきた時に俺たちがいなかったら可哀想じゃない?」という話にまでなり・・・

先生たちの溢れんばかりの愛に、温かい気持ちがこみ上げ、頬が緩みます。今持っているクラスのみならず、生徒の弟も見たいし、卒業後の姿だって見たい。私が生徒だったとき、先生は話をするのにちょっぴり緊張してしまう存在だったけれど、きっとこんな気持ちで向き合ってくださっていたのだと想像します。

お話の終盤に描かれる息子さんの様子もまた、可愛らしくて素敵です。「大好き」を表すことができる息子さんと、息子さんの成長した姿を見ることを「夢」と綴る先生、そして、あのとき先生たちが語り合った「愛」を思い出し、その関係を温かく見守るミーミーさん。先生たちへの感謝がまっすぐに伝わり、私も拝読しながら、教えてもらった先生たちの姿を思い出しました。

■初めて食べてもらった時のあの気持ち

ミーミーさんの弟さんが所属していた野球チームでは、試合がある日のお昼ご飯を保護者が手分けして用意することが恒例になっていました。ミーミーさんのおうちの担当は、毎回決まって「大量のおむすび」。同じクラスの男の子や知り合いがそのおむすびを食べる姿を見て、ミーミーさんは「自分が作ったものを誰かに食べてもらう緊張感」を味わったのだといいます。

自分が作ったものを誰かに食べてもらうことって、緊張しますよね……。失敗していないことが分かっていても、ものすごく手間をかけたものではなくても、最初の一口は固唾をのんで見つめてしまいます。

野球部員の中には私と同じクラスの男の子や知り合いがたくさんいて、なんだか私が作ったもの(それも私の手で握ったもの)を食べてもらうのが照れくさかったのを覚えています。みんながワイワイと食べてくれて嬉しいような恥ずかしいような。ドキドキしましたね。

自分が握ったおむすびを頬張る、同じクラスの男の子。ユニホーム姿で、いつもよりちょっぴり雰囲気も違っていたりして。「嬉しいような恥ずかしいような」と綴るミーミーさんの言葉に、甘酸っぱい気持ちも感じてきゅんとします。

そして時は流れ、ミーミーさんの息子さんにも「初めてのおむすび」を味わってもらう日がやってきます。場所は近所の居酒屋、相手はお父さんとお母さん。ぐるぐると巡る優しい時間に、おなかも心も満たされたような温かな気持ちになりました。

■初めて誰かを心底羨ましいと思った日のこと

子どもの頃、近所に住んでいたとても美しい女の子。接点も多くはなく、小さなころからデパートのチラシなどでモデルを務めていた彼女を、ミーミーさんは「違う世界の人」と考えていたそうです。けれど、大学生になって思いがけない場所で彼女と出会い……。

幼い頃から「別格」で「違う世界の人」だった彼女との不思議なめぐりあわせが綴られたこちらの文章。今回読ませていただいた中で、個人的に最もぐっときた作品でした。昔はただただ「可愛いなあ」という気持ちで見ていた彼女。再び出会ったのは、好きなバンドのアルバムのカバー写真でした。

だけど、いざ憧れのバンドのアルバムのジャケットになっている彼女を見た時に(ああ、美しければこんな夢みたいな機会に恵まれるのだ)と、ハッとさせられました。

アルバムを聴きながら歌詞カードを眺めて、
羨ましくて泣けてきて。

ただ綺麗なものだけではない、さまざまな感情が渦巻く「羨ましい」という気持ち。カバーモデルを務めた彼女は「遠い存在」でありながら、それでもやはり「近い存在」でもあったのではないでしょうか。

せつないわけでも悲しいわけでも寂しいわけでも悔しいわけでもない。
ただ心底羨ましかった。

包み隠すことのない文章からは、ミーミーさんの気持ちが痛いほどに伝わってきます。こちらの胸の奥もひりひりと痛むけれど、それだけではなくて。強く磨かれたものが光を放っているような力強さも感じる、まっすぐな文章がとても魅力的でした。

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毎週土曜日の「感想文の日」、感想を書かせてくださる方を大募集しています!(1~2日程度、記事の公開日を調整させていただく場合があります。現在、4/3以降の回を受け付けています)

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