あたたかく包まれて【感想文の日⑧】

こんばんは。折星かおりです。

今回感想文を書かせてくださったのは、優まさるさんです。

永遠の17歳、ゆぴさんの「何歳だってはじめるのに遅いことなんてないですよ!!!」という言葉に背中を押されてnoteを始められたという優さん。短編やエッセイを中心に書かれたnoteは読みごたえたっぷりで、この一週間、読みかけの本もそっちのけで読ませていただきました。楽しかったです……!ありがとうございます。

それでは、ご紹介いたします。

■あかり

映画が始まる前、客席のあかりが落ちるときに"私"が回想する、娘の"あかり"のこと。幼いころには抱きかかえて電気のスイッチを押させていたこと、無意識に部屋の電気を消しては"あかり"に怒られていたことなどの日常のシーンの中に、切なさややるせなさが見え隠れします。何度も読み返しては考えたくなる、不思議なお話です。

まずはご指定いただいたこちらの記事から。たくさんの方がコメント欄で触れられている通り、人によっていろいろな解釈の仕方があるお話だと思います。しかもそれは、読み返すたびに変化する。ただ、その中でも変わらないのはきっと、"私"と"あかり"を繋ぐ、あたたかい愛。

今回読ませていただいて、冒頭と終わりの部分が映画館になっているのがとても素敵だと思いました。ぱちん、と切り替わってしまう蛍光灯ではなくて、観客を静かに引き込み、そっと日常に戻す、じんわりと灯るあのオレンジ色のあかり。読み進めるにしたがって濃くなる切なさを最後には温かく彩る「あかり」の描き方に、ため息が出ました。

■一階の部屋とチャルメラ

25年ほど前、優さんと奥さまが初めて借りた部屋にまつわるエッセイです。当時暮らしていたのは、畳の部屋がふたつと名ばかりのキッチンで構成されたこじんまりとした部屋。狭くても機能的で日当たりも良い部屋だったけれど、チャルメラが聞こえればすぐに駆け出せる「一階」というのもお気に入りのポイントだったそう。

個人的にすごくすごく好きでした。ささやかな暮らしの中にひょこり現れる、小さな幸せ。ラーメン鉢を抱えて駆け出すおふたりの姿が目に浮かぶようでした。後半で描かれる、その部屋からの引っ越し前夜のパートにもぐっと心をつかまれます。まるで夜中に食べるラーメンがじんわりと染み渡っていくような、身体の内側からぽかぽかと温かい気持ちになりました。

ぴらる~ら、ぴらる~ら~ら~。

誰もが知っているあの音を、こんなに可愛らしく感じたのは初めてです。これまで私は「ちゃらり~ら、ちゃらりらりら~」派だったのですが、今後は積極的に「ぴらる~ら」を使っていきたいです。だってこちらのほうが、断然おいしそうですもの。

私の住んでいる町でもチャルメラを聞く機会はすっかりなくなってしまいましたが、食べておけばよかったなぁ、と思います。きっと、いや、絶対おいしいですよね……!

■汚くて、カッコ悪いぼくが、傘を差しかけられて

社会人一年目の優さんを変えた、ある雨降りの日の記憶。困っていた優さんへ傘を差しかけてくれたある女性とのやりとりをきっかけに「とても汚かった」という優さんが変化していく様子が、気持ちよく描かれています。

時間にすればたった数分間の出会いですが、たくさんの感情がぎゅっと詰まっているように感じました。疲れ、諦め、戸惑い、焦り、驚き、ときめき、憧れ、感謝……。たった数分、されど数分。目まぐるしく変わる気持ちが輝いています。見かけの変化だけではなく大切な気づきにもつながった、という振り返りにも、熱いものがこみ上げます。

そして、その時は気づかなかったけど、いろんな人が、ぼくに傘を差しかけてくれていたことに気がついた。
会社の上司、先輩、同僚、クライアントの方々、時には、近所のおばちゃん、飲み屋の大将、タクシーの運転手さん、いっぱいの人たちがぼくに傘を差しかけてくれてたんだ。さりげなく、カッコよく。

私もそっと、傘を差しかけられる人になりたいです。

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