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毎日新聞 大阪4分割218億円報道を「誤報」という方がデマなわけ~大阪都構想・吉村知事のおかしさ

毎日新聞の「大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算」という報道。吉村知事や松井市長をはじめ、大阪都構想推進派(主に大阪維新の会)が一様に「デマだ」とか「誤報だ」と批判した。

その後、市の財政局長は、松井市長から厳重注意まで受け、吉村知事などは毎日新聞をターゲットに、マスコミ批判まで展開している。

中でも、吉村知事のFactCheckを引用したツイートでは、当該記事が「誤報記事」だと断定している。

[FactCheck] 「大阪市分割でコスト218億円増」報道は根拠不明 基礎財政需要額は実際の行政コストと連動せず | InFact / インファクト
→マスコミは第四の権力と言われる。強大な権力者である毎日新聞の誤報記事。住民投票の直前。反対派の活動資料にも。誰が責任を取るのか。(吉村洋文公式Twitter 2020/10/29 22:45)

しかし、これはおかしい。

毎日新聞報道は少なくとも「誤報」ではない

まず、この引用しているFactCheckには、毎日新聞報道が「誤報」だとは一言もかいていない。たしかに「記事をかなり慎重に読まなければならず、分かりにくい。」とはあるが、FactCheckをもってしてと誤報とはいえないのだ。

これは当然である。
というのも、毎日新聞は、市への取材に基づいて記事を書いている。しかも、その記事では「大阪都構想が実現したら、218億円増加する」などとは書いていない。
「大阪市を四つの自治体に分割した場合」218億円増えることについて、「市財政局の試算で明らかになった」と報じたまでだ(以下記事引用) 。つまり
市財政局の試算を、市財政局の言うままに書いた、いわば事実報道的なものにすぎない。

大阪市を四つの自治体に分割した場合、標準的な行政サービスを実施するために毎年必要なコスト「基準財政需要額」の合計が、現在よりも約218億円増えることが市財政局の試算で明らかになった。

「誤報記事」ということがデマ

吉村知事は、冒頭の引用にあるように、「毎日新聞の誤報記事」と断じている。しかし、上に述べたように、少なくとも誤報ではない。

「誤報記事」とすることによって、毎日新聞の都構想に反対する根拠がデマである、と印象づけたいのだろう。事実、都構想推進派には、この毎日報道が「誤報」であるという(誤)認識が浸透しつつある。

しかし、実際には、吉村知事のツイート自体がデマなのだ。たしかに、市の試算の根拠は甘かったのかもしれない。しかし、少なくとも「毎日新聞の誤報記事」ではなく、「誤報記事」としたツイートはこそ「誤情報」なのである。

また、吉村知事のツイートの質の悪いところは、「誤報記事」とFactCheckの記事を引用しながらいっていることだ。これでは、FactCheckで誤報であると判断したと捉えられかねない。

事実は、大阪市財政局の試算が適切でないとしても、毎日新聞の報道は誤報ではないし、FactCheckも誤報だとはしていない、ということである。

また、付け加えておくと、毎日新聞の報道で、コスト増大の根拠は「スケールメリットを失うこと」である。スケールメリットとは、細々行政をわけるより、まとめてやった方がコストが下がる、という単純な論理である。これは否定しようがないが、大阪都構想の問題はここにあるが、これを否定、あるいは解消する具体的方策を維新の会が打ち出せていないというのは事実である。

大阪都構想住民投票後への保険か?マスコミ抑圧への布石か?

大阪都構想が否決された場合、三回目はない、と知事らは公言している。しかし、今回の報道に対するツイートは、あたかも住民投票否決の保険であるようにも思える。
つまり、毎日新聞の報道があったから、負けたのだ、と。

大阪維新の会は、都構想を目的とするワンイシュー政党に近い存在だ。すなわち、三回目の住民投票がないとなれば、否決されれば彼らはそこ(大阪の政治舞台)に残る必要がなくなる。
しかし、(トランプ大統領の郵便投票の否定のように)マスコミに操作された結果の不合理な結果だとかなんとかいって、そこに残る理由を作ろうとしているようにも思える。

また、否決されても可決されても、自分達に抗うメディアはこうなるぞ、と脅しているようにも思える。特に在阪メディアにとって、維新勢力が続く限り、明るい未来はない。

マスコミは第4の権力。では、吉村知事は?

最後に、吉村知事のもはやブーメランとも思えるツイートの中身を指摘しておく。
マスコミは、たしかに第4の権力といわれることもある。第4とは、行政、立法、司法の三権の次の権力、ということだ。 しかし、吉村知事はそもそも三権のひとつである、大阪における行政権のトップであり、いわずもがな権力者である。
毎日新聞の報道が「誤報」というデマを権力者が広め、マスコミに圧力をかける。権力から守られるべき報道の自由、表現の自由。憲法上守られるべき自由を侵害しよう足しているのは、紛れもなく吉村知事本人なのである。

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