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【NY Times】「ニューヨーク市、80万人の外国籍者に地方選挙の投票権を付与」邦語訳

 本記事は、ニューヨーク・タイムズ紙の「New York City Gives 800,000 Noncitizens Right to Vote in Local Elections」(無料記事)を翻訳したものである。

ニューヨーク市、80万人の外国籍者に地方選挙の投票権を付与

By Jeffery.C Mays and Annie Correal
2021年12月9日

 ニューヨーク市は、80万人以上の合法的な居住者に投票権を与える条例案が市議会が圧倒的で承認されたことにより、地方選挙での市民権を有さない人の投票権を認める全米最大の都市となった。
 これにより、ニューヨーク市は選挙権をめぐる議論の最前線に立つことになり、市民権を有さない者の投票を明確に禁止するなど、選挙権の制限を加える動きがある州とは対照的である。

 この条例案は、市議会が市民権を有さない者に投票権を与える権限を持っているかどうかを疑問視したビル・デブラシオ市長の反対を押し切って承認された。法律の専門家は、この条例案が法的な問題に直面する可能性があると予想する。
 市民権を有さない者は、今から1年後に投票登録を開始することができる。市議会によると、2023年1月9日から地方選挙での投票が可能になるとのことである。

 この条例案は、グリーンカードや米国で就労する権利を持つ人々に影響を与えるものであるが、州や連邦の選挙での投票権を与えるものではない。この条例案の発起人であるイダニス・ロドリゲス議員は、この法律によって、ニューヨーク市に住み、税金を納めているより多くの人々が、市の運営方法について声をあげることができるようになると述べる。
 ロドリゲス氏はインタビューで、「選挙に当選したいと思っている人は、この法案の影響を受ける地域で、上流階級の地域と同じ時間を過ごさなければならなくなる」と語った。
 この法案の反対者は、市民から権力を簒奪することになり、合法的な居住者が米国市民権を得るための意欲を削ぐことになるという。

 コロラド州、フロリダ州、アラバマ州では、昨年、米国市民権を持つ者のみが投票できるとする投票案が承認された。ノースダコタ州とアリゾナ州では、すでに市民権を有さない者の投票を正式に禁止している。

 非市民の投票権を認める取り組みに反対するために2019年に設立された団体「Americans for Citizen Voting」は、今週、ニューヨーク市議会に書簡を送り、議員たちに法案の否決を促した。
 「これは全米で高まっている動きなので、私たちも声をあげる必要があると感じた 」と、同団体の代表であるクリストファー・アープス氏は述べる。「私たちは移民に反対しているわけではなく、移民がこの国を築いてきたと信じている。移民がこの国を作ってきたと信じてる。ただ、投票権を得る前に市民権を得るべきだと考えている」。

 デブラジオ氏は、この法案に拒否権を行使しないと述べている。この法案は、30日以内に署名されなければ自動的に法律となる。
 市長は、市民権を有さない者の投票は国が認めなければならない権利であると主張したが、多くの専門家はそうではないとする。

 バーモント州とメリーランド州の町では、すでに市議会選挙での市民権を有さない者の投票を認めている。サンフランシスコでは、市民権を有さない者が教育委員会の選挙で投票することができ、イリノイ州、メイン州、マサチューセッツ州のいくつかの自治体でも市民権を有さない者の投票を認めることを検討している。
 ニューヨークでは、次期市長のエリック・アダムス氏が、グリーンカード保持者の地方選挙での投票権を支持すると発言し、条例案の可決を促している。しかし、彼もまた、市議会が市民権を有さない者に投票権を与える権限を持っているかどうかを疑問視している。アダムス氏のスポークスマンは、就任後にこの法案を検討すると述べた。

 専門家によると、ニューヨーク州憲法は、市民(権を有する者)に投票権を付与しているが、市民権を有さない者の投票を明示的に妨げてはいない。ニューヨーク市の教育委員会の選挙では、2000年代初頭に教育委員会が廃止されるまでは市民権を有さない者の投票が認められていた。

 木曜日には、ブロンクスの議員であるマーク・ジョーナイ氏が、条例案を委員会に差し戻す動議を提出し、法案の承認を阻止しようとした。ジョーナイ氏は、法案の30日要件ではなく、1年の居住要件を設けるべきだと考えていると述べた。
 30日の居住期間を持つ人々は「短期滞在者」であり、「永住者」ではなく、「貢献者(contributor)」でもないと、条例案にノーを突きつけたジョーナイ氏は言う。
 市長移民局によると、合法的な永住権(グリーンカード)保持者、または就労許可を持つ成人ニューヨーカー推定80万8000人のうち、13万人がドミニカ共和国出身、11万7500人が中国出身だという。
 ブルックリンの議員であるローリー・カンボ氏は、この条例案がアフリカ系アメリカ人の投票力を弱めるのではないかと疑問を呈した。反対票を投じたカンボ議員は、「この法案は、ニューヨーク市の勢力図を大きく変えることになる」と語った。
 クィーンズ区の次期議員であるティファニー・カバン氏は、カンボ氏の主張を「分裂を招く」と言った。
「一部の人々の投票権を拡大しても、他の人々の投票権を弱めたり、汚したりすることは一切ない」と彼女は語った。

 法案を委員会に戻すという動議は、市議会の議場で活発な議論が行われた後、失敗した。議会議長のコリー・ジョンソン氏は、法案に修正を加えれば、この議会の会期中に法案を採決する十分な時間がないため、「技術的に死んだ状態」になってしまうと述べた。この法案は、33対14の賛成票で可決され、2名が棄権した。
 この条例案では、選挙への対応について批判を受けているニューヨーク市選挙管理委員会が、市民権を有さない住民のために別の有権者登録用紙を発行し、市の役職のみを対象とした投票用紙を提供することになる。

 9歳のときにドミニカ共和国からブロンクスに移住し、DACAと呼ばれるプログラム「Deferred Action for Childhood Arrivals」によって国内での生活と仕事を認められているエヴァ・サントスさん(32歳)は、条例案が可決されたときに、安心感と安堵感を覚えたと言う。
「私たちには代表される権利があり、代表されて声を上げるだけの貢献をしてきたことを、他の自治体に示す大きな一歩だと思います」とサントスさんは語った。「私たちは他の人と同じニューヨーカーなのですから」。

【原文】


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