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誰も私を決められない

7月にミスター慶應SFCのファイナリスト発表があってから本当に一瞬のうちに3ヶ月が過ぎ去って、10/10にはファイナリストが発表されます。
楽しいことも辛いこともあったと言いたいところですが、楽しいことしかない3ヶ月を過ごさせていただきました。
グランプリ準グランプリが発表される前のニュートラルな状態で振り返っておきたかったので筆をとりました。

私は女性に振り分けられる身体に生まれて、女性として活動をしてきました。私は私自身でしかなく、どうやって区切られても篠原かをりとしか認識することはできないのですが、今後もしばしば女性として扱われて生きてゆくと思います。
今の社会には女性だから男性だから、或いはそれ以外だからと押し付けられている型があります。
私も女の子なのに昆虫が好きなのは変わっているだとか、若い女性であるというだけで彼氏がどうたらとか、後先考えずに行動する私自身の性質に対して男勝りだとか色々な偏見を聞いて育ちました。
誰かの在り方を他の人が決める悪習を次の世代に社会を手渡す時に少しでも薄めたいと思っています。
性別以外にも様々な属性でくくられて、"こうあるべき"や"こうに違いない"という枠組みで締め付けられます。
容姿や信条、年齢や国籍、セクシャリティや集団内の役割などあげればキリがありません。

私は多くの場合、しみじみ味わうタイプのオタクなのに、テンション高くまくしたてることを毎回期待されたり、奇人変人として振舞うことを求められたり、本当はコスメオタクで派手好きなのにそいつの思い描く生物オタクであることを押し付けられインナーカラーを染められすっぴんでテレビ出演するように言われたりします。ブスなのにテレビに出るなとかブスなのにそんな服を着て大丈夫なのかとか、知ってる単語で構成されているとは思い難いほど意味の分からないことも言われます。
ミスターコンに出るとまるで私のそれは公のものであるかのようにセクシャリティについて問われることもあります。

挙げ句の果てに眼鏡なのに留年していることに驚かれたりもします。
眼鏡は高偏差値やインドアとの根拠とはなりません(正確には一定の紫外線が視力維持に役立つのでアウトドアを好む人は視力が維持されやすいという研究はあります
留年の理由が「二人組作ってと言われることに怯えているうちに体育の単位取得がギリギリになって、そこに追い討ちをかけるように入院した」という、いかにも""それっぽい""ものであっても眼鏡は関係ありません。たまたま私がそうだっただけに過ぎないのです。

ミスターコンに出るにあたって私の目標は「埋没すること」でした。
その目標は見事達成できたと思います。
この目標が負け惜しみにも勝ち誇りにもならないために結果発表を前にして総括の文章を書くことにしました。
女性に振り分けられる身体で、尚且つ男性として強く自認する訳ではない人間がミスターコンに出るという、今は珍しいケースの期待に応えるほどコンテストを盛り上げず、やはりミスターコンは眉目秀麗な男性のものであると断言されるほど支持を得られなかった訳でもなく、本当に普通のミスターであったと思います。
埋没したいと思っていた理由は、今後当たり前のものになって欲しかったからです。
良くも悪くも注目されてその後に影響を及ぼす初期の事例として、ミスコンより注目度の低いミスターコンに女性が出ることで"女性だから"票が集まったと思われたくはなかったからです。
そして、"女性なのに"ミスターコンに出ていることが私の魅力だとも思っていません。

同じミスターコンの参加者が次のように述べていました(※知らない誰かから聞いたら生物学上の定義から渾々と詰めていきたいと思う発言ですが、私自身は限りなくただの篠原かをりとして曖昧になった結果だと捉えているので敵意はなく、会うと愛嬌のある陽気な青年です

ミス・ミスターコンテストに男女の区別がなくなったたら、間違いなくグランプリは生物学上の女性(おちんちんを所有していない者)が総取りするため、僕みたいな者は路頭に迷い込み、票数に抹殺されてしまうよぉ😭ピエン
#自分の価値観を押し付けた多様性
#差別と区別は違がうんじゃないの

私は女性に振り分けられる身体を持っています。
でも、私がミスターコンに出場することで目に見えた変化はありません。
何か恐るべきことも起きませんでした。
ただ今年のミスター慶應SFCには私の形をしたミスター慶應SFCNo.2がいました。
多分、来年も再来年も何も起こりません。
いつか、ミスターコンでグランプリをとる人は男性に振り分けられない身体をしているかもしれません。
でも、それはその人が魅力的でその年のグランプリに相応しい人だっただけなのです。

応援してくださった方の中には普段の私を知っていて、ミスターコンでの私も応援してくれた人もミスターコンを通して私を知って応援してくれた人も元々毎年ミスターコンを楽しみにしていて今年の推しとして私を選んでくれた人もいます。

私はミスターコンを何も変えないありきたりなミスターでした。
でも、もし少しでも変えられるなら、伝えたいことがあります。
今自分に与えられた枠組みに息苦しさを感じている人はたくさんいると思います。
私もかっこつけたくて仕方ないのに配られたカードの貧弱さによって滑稽なところばかり見せてしまう人間です。
メディア露出する時には眼鏡に黒髪に白衣とステレオタイプの理系生物オタクの装備を与えられます。
私の身体に男性器はなく、大学ミスターコンの中では最年長で生物オタクで人見知りで斜に構えて容姿へのコンプレックスを拗らせた人間です。
それでもミスターコンに出ました。
私がそうしたかったからです。
誰かに許されるからではなく、どう振る舞いたいかという自分の意思だけでそんな勝手な枠組みを打ち壊して好きなところを歩いてください。
その道が少しでも歩きやすいものであるように一緒にバールのようなものを持ち寄って勝手な枠組みを壊していきましょう。

最後にミスターコンでの私を応援してくれた方々、ミスターコンに出ても変わらない私を見てくれた方々へ
私の屍で道を作るという覚悟で望んで出場したミスターコンで、まさかここまで嫌な思いをすることなくラスト1週間を迎えるとは正直思っていませんでした。
本当に優しくされた記憶と楽しかった記憶ばかりで世界に対して身構え過ぎていたことを知りました。
私の居場所になってくださってありがとうございます。
ミスターコンの3ヶ月は本当に一瞬ですが、一瞬は私の一生の大切な一部です。
当初より掲げていた「最初よりフィナーレで、フィナーレよりその先でずっとかっこよくある」という目標を達成し続けるべく生きていきます。
これからも"私"を私以外の誰にも決めさせるつもりはありません。

#ミスコン #ミスターコン #エッセイ #コラム

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