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1月6日

どんな場所にも笑顔があって、幸せがある。
その幸せを守るために僕は生き続ける。

どうもラブ&ピース&俺です。

今日は昔の話をしたいと思います。

話は13年前に遡る

ブクブクブクブクブクブク

チャポ、シャカシャカシャカシャカシャカ

豆腐、わかめを入れたお湯に味噌が溶かれた瞬間俺は誕生した。
そして生まれた瞬間俺は悟った、

「あ、僕って出汁とかとってないお手軽に作れるやつだ」 

こんなにはやく人生の挫折を味わう人はいないだろう。できれば俺が味わうより、人に味わってほしいのだが…

「しかも、豆腐とわかめとかスタンダードすぎんだろ。せめて長ネギぐらいは入れてくれよ!」

一縷の望みを抱きながら、再び煮立つのを待つ。

玄関先に煌びやかなツリー。
テレビはクリスマスソング特集をしている。

そう、今日は12月24日。
クリスマスイブだ。

「クリスマスイブの夜に味噌汁って変わったやつだな…」

「よし出来た」

年季の入った器へと注がれ長ネギの夢も泡になって消えた。

「もうはやく飲んでくれよ、、、」

ポタッ、ポタッ

2粒の雫が俺の水面を揺らす。

「なんだよ、冷めるだろ、早く飲んでく…れ、よ…」

そう言いながら見上げた時には、もう水面に大雨が降り注いでいた。

「おじいちゃん、おじいちゃんっ…」

おいおいどうしたんだよ、どういうことだ?
全く意味がわかんねえ

「おーい、泣いてんじゃねーよ!はやく飲めー」

「そうだよねっ、いつまでクヨクヨしてたら天国のおじいちゃんに怒られちゃう。

…………って味噌汁が喋ったぁ!!!!!

「え、俺の声聞こえてるの!?」

「うん、なにこれ!どうなってるの?」

「こんなことあるんだな…初めてだ」

「えっ、どうなってるの!えっ、えぇー!!!」

「あんま騒ぐんじゃねえよ、てかお前もっと出汁からとったり具いれたりしろよ!!」

「う、うるさいっ!私はこれが好きなの!!」

本当に困った女だぜ…

「てかお前その顔メイクぐちゃぐちゃだぞ、ほら俺飲んで落ち着け」

「でもっ、でもっ」

「何があったかは俺にはわかんねぇけど、これだけは言える」
「人生って味噌汁みたいなもんなんだよ、最初はまっさらな水だけど、いろんな具と出会って、いろんな出汁に影響されて、でも最後は自分の決めた味噌で色をつけていく」

グズンッ、グズンッ

「だからよぉ、はやく俺飲み干して、前向けよ」

「………うんっ!私もう下向かない!」

「よし、それでこそ俺のママだ!!」

「ありがとう、お味噌サンタ」

「なんだよその名前!」

「クリスマスだからサンタだよっ!」

「変な名前。」

「えー可愛いじゃん。お味噌サンタ」

「まーとにかく元気出てよかったな」

「う、うん!」
「ねー、お味噌サンタ。私が飲み干してもまた私のとこに来てくれる?」

「いつかくるさ必ず。その時はもっと具入れてくれよ!」

「うんっ!」

「あと涙禁止な俺が塩辛くなっちまう…」

「うんっ!ありがとうね味噌汁サンタ!」

そう言うと女は涙を我慢して勢いよく味噌汁を飲み干したのであった。

めでたし、めでたし

「えっ、おばあちゃん、何この話?」
「何って、味噌汁輪廻転生物語じゃよ」
「味噌汁輪廻転生物語!!!?」
「感動するじゃろ?」
「聞いたことないよ、なにそれ!?」
「わしが昼間考えたクソラノベじゃよ」
「わしが昼間考えたクソラノベじゃよ!!!?」

皆さんもうお気づきのように、今日は何も起きませんでした。
これが僕の1月6日である。

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