短歌 2022秋冬
2022春夏に続き、半期に一度のペースで書きためた短歌をまとめて並べてみる。
ひとりでぽちぽち気が向いた時につくっているだけなので量は多くなくて、感情がぐらっと傾いたときに器からこぼれた気持ちが短歌のかたちになる、というのがわたしのつくり方みたい。
では早速行くぜっ。
《フラフープ》
トラックに家財が積まれゆくそばでフラフープ回し続けている子
傘2本上履き体操服抱えダッシュで踏切抜ける学ラン
かぼちゃプリン、キーマカレーの上の黄身、満月、こたつのミカン、ラッキー！
ものすごく美人な姉がそこそこの男を連れてきた日の食卓
それぞれの地獄があるね大晦日 タイムラインに身を寄せ合って
《噓泣き》
困ってるあなたの顔が見たくって今してるのはちょっと嘘泣き
「寒いね」とひとこと伝えることですらできぬ私にクリスマスなど
話したいこといーーっぱいあったのに全部忘れちゃったよ困った
おやすみと送る代わりに君のいる方角に向け唱えるおやすみ
あなたって言う事なしね ゆるやかに飛行機雲は下降していく
《最後の晩餐》
結局は梅おにぎりでいい セブンプレミアムので最後の晩餐
あったかいココア飲みたい森永の自分でいれたやつじゃないのを
いくら乗せ だし巻き卵がふるえてる いのちがひとつ、いのちがふたつ、
ゆでたまごみたいな色の指先で ぱり、ぱり、ぱりとゆでたまごむく
死ぬ前にわたしが何食べたいかとか考えたこと一度でもある？
《定期おトク便》
Amazonを定期おトク便にするべきか散々悩んでいるうちに死ぬ
徳用の柔軟剤がまた切れる頃までどうせ生きてんだろな
愛想笑いひとつもうまくできなくて ボッコちゃんよりダメな人間
「悩みごといっぱいある」なんて言えるあなたは末っ子でしょう
ぬいぐるみと手を繋ぎながら寝付く夜 きみは棺に入れるともだち
《リメンバーミー》
歴代の恋人たちの全員がピアスをくれてこれで７つ目
先生は生徒に恋をしないため、片想いのみ許容されます。
ちょっとだけ一目惚れしたその人と大喧嘩して離婚する夢
帰り道 傘さして飲む缶チューハイ あと繋ぐ用の手だけ足りない
フォーエバー・マニック・ピクシー・ドリーム・ガール リメンバーミーリメンバーミー
ざっくり自作解説もつけてみる。
《フラフープ》師走になると、にわかに他所の人の様子が気になる。いつもよりちょっと注意して近所を散歩しているだけで結構ドラマティックな場面に出くわしたりする。人間はどんな人でも多かれ少なかれ愛憎に満ちていて、面白い。
《嘘泣き》aikoを聴いて青春を過ごしたおかげで、日常がすぐメロドラマになってしまう。熱心なaikoジャンキーの方ならこれを読んで私の好きな曲がきっと分かっちゃうね。
《最後の晩餐》食べ物が出てくる歌を集めた。「最後の晩餐リスト」に食べたいものを書きためていて、もうテーブルに乗りきらない量になってきている。しあわせの賞味期限はたまごと同じくらいで、思ったよりもちょっと長いけど油断するにはちょっと短い。
《定期おトク便》ずっとAmazon定期おトク便で豆乳を箱買いしていたんだけど、何か月も先まで配送予定が決まっているのがなんとなく怖くなって、解約した。明日のことも分からないのにと思いつつ、毎日そう思っているうちに今年ももう年の瀬。
《リメンバーミー》私は人並みよりは多めにピアスが開いていて基本はずっと同じピアスを付けっぱなしにしている。それらは全て自分で買ったもので、もしかすると元恋人たちへの反抗なのかも。
春夏をまとめたときに何となく予感していたけれど、ここ半年の日常は、おおむね薄曇りまれに晴れ時々大雨のちまた曇りで、できたものを見るとまさにそういう塩梅……よりかは少し、あっけらかんとしているかも。
わたしにとって短歌はこぼれた感情の結晶で、結晶は身から解き放たれて、少し離れて眺めることができるから、単純に綺麗だなって思えて良い。その距離が、あっけらかんさに繋がっているんだろうな。
並べて気付いたけれど、わたしは短歌をつくるとき、多少の「論理の飛躍」を織り交ぜるのが好きみたい。そういう発想の飛ばし方の癖というか傾向があって、それが上手くできたものがお気に入りになる。
短歌、これからも続けていけるといいね。
2022春夏はこちら
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？