イギリスの無料!医療事情 来ない救急車 かかってこない折り返し電話 ご近所さんちに寝袋持ち込む勇気 苦しい時に助けてって言えますか?081/360
昨日の記事に引き続き、バタコのご近所さんでテキサス出身75歳ジョーさん@旦那さんを亡くして1年半 の武勇伝です。
旦那さんとの死別の悲しみで、抗うつ剤や睡眠薬なども出されてるジョーさん。
ある晩、パニック障害のような症状が出て
全く眠れなくなり「とても一人ではいられない!」
と、外に出たのだそうです。
・・と、書くと、一度きりだったように聞こえますし
ジョーさんも、事細かに、どのくらいの頻度で
みたいなことは言わなかったのですが
ある一時期、それは毎晩続いたんだと思うのです。
イギリスが世界に誇る?医療費無料
バタコの田舎では、赤ちゃんは「みんな」
たった一つの病院で生まれます。
イギリスの国家医療サービス機関NHSが
全ての医療を無料で提供しており
出産はそこで、ということになっているからです。
え?無料?パラダイスみたい、と思いましたか?
決して否定はできないです・・
が・・
半径xxキロ以内の「すべての患者が」
基本的にはこの病院で見てもらうということです。
・・いや、物理的に、無理がありますよね
ただ、病院に行くのは「重篤な場合」ということで
普段の診察は、個々の街にある「診療所」の仕事。
「重篤な」つまり救急車が要る案件は
「すべてたったひとつのこの病院から救急車が出てる」ってことです。
ご想像の通り、とてもじゃないが足りません。
救急車が来るまで1時間はデフォルト
もしかすると「出払ってます」と数時間
つまり、フツーに車を持っている世代は
たとえば自分のコドモだったりしたら
自家用車で病院に向かう方が普通です。
多分そのほうが (到着は) 早い。
あ、でも、そうやって来たヒトが行列を作ってるから
やっぱり、病院に行ってすぐ診てもらえるわけじゃなく
待合室で数時間、とかもデフォです。
コレがパラダイスの現実。
・・「パラダイスに見えて、ふたを開けると、実は?」
ってまぁよくあるハナシだと思いますが・・
※日本の医療がカンペキだとも思わないけど
なんだかんだ言って本当によくできてる、
とバタコなどは感心してみてます
救急車は999番
さて、救急車はダイアル999番です。
心臓発作、脳卒中とかはこれでしょうね
転倒もこれです、
「シロウトが抱き起してはいけない」というのが
介護職の資格試験ではしつこくたたき込まれました。
←介護者が腰を痛める案件が多すぎるから
救命救急隊員が2名がかりで起こします。
もう一つの緊急医療相談111番
でも「それ以外」案件のために111番は存在します。
医師または救急救命士などの有資格者が対応。
診療所に行くよりはもっと深刻だけど
999番までではナイ。
この案件を引き受け、場合によっては実際の病院へと誘導し、つまり救急車への負担を軽くするための番号が111。
ここ数年でつくられたものです。
バタコも一度かけたことがあります。
ちなみに、「イギリスは医療が無料だから」と
(周辺国から)「病気になったらイギリスに行こうツアー」
みたいな事態になってた時期があります。
「国民の納税で支えられている『無料』医療」を
納税していない他国民が勝手に受けに来る、ということです。
これを取り締まるのに大変だった時期もあるようです。
Gメンみたいな「取り立て人」が存在してたそうです。
なのでまず111番に電話すると国民背番号
(というか、NHSの個人ID番号) を聞かれます。
ジョーさんがある夜、どうしようもなくて111番に電話したとき
おそらくはこの確認作業があったことでしょう・・
そこを乗り越えたうえで
ジョーさんの話を聞いて「担当者がかけなおします」
という対応だったそうですが
・・さいごまで電話は鳴らなかったそうです・・
24時間以内に返信、のはずが全く返信がないネットドクター
それで思い出しましたが、
病院だけでなく「地域診療所」も
近辺住民の無料アポをさばくのにあっぷあっぷしており
キャパオーバー気味なので
「診療所に来なくて済む!
ネットでドクターに相談!制度を開始します♪ジャジャーン!」
「返信は24時間以内!!」
と言われて使ってみたら
なしのつぶてで一切返信ありませんでした・・
そんなもん・・
どんだけの費用をかけて開発したんか知らんけど・・
無料電話が頼れなかったから寝袋で突撃
さて、ジョーさんは111番にかけてみて → ダメだ
となった後の手段として
ある夜、家を出て、ご近所顔見知りのドアを叩き
「ひとりではパニックになって眠れません誰かが居ないと。
床で全く構わないのでアタシのこの寝袋で寝させてもらえませんか」
と押しかけて一夜を過ごしたのだそうです。
この時は80代のご近所さん。
イギリスの手厚い?社会保障
そして、ある夜は数軒隣の
「推定20代のシングルマザー」
この方の住んでるおうちはイギリスならみんな知ってる?
カウンシルハウジングと呼ばれる
カウンシル=地元自治体が買い上げた住居
で
要するに「生活保護受給状態」にあるひとびとに対し、
自治体の決めた基準をクリアした場合
無償または超・格安家賃で住めるタイプの住宅。
いつ見ても、なぜか住民が入れ替わり激しく
交差点なのに、なぜか訪問者のクルマが
「明らかに違反だろっ」て位置にドーンと停まって住民と立ち話してたり
住民は頻繁にドアんところに座ってタバコ吸っている
みたいなカンジです
そしてこれは「近所の陰口」としてジョーさんが引用してましたし
実際、よく耳にするハナシなのですが
「あの娘は住むところをゲットするために未婚の母になったんだ」
という見解も (本当かウソかバタコにはわかりません) あります。
イギリスには「就職できるアテもないし実家には住めないし」
といううら若い女性が、生活資金を得る手段として!?
「未婚の母として生活保護を受けカウンシルハウジングに住む」
という非公式・裏就活?ルートがある
というのが割と社会通念的に言われます。
←すみません、異論・例外はモチロンあると思います・・
ジョーさんはそこのお家のドアを叩き
シングルマザーの彼女に
「一人ではとても眠れませんただ床を貸してくださるだけで結構。
寝袋持ってるから一晩泊めてください。」
と言い、入れてもらって
まだ歩けない女児のベビーベッドがあるコドモ寝室の床で
一晩を過ごしたのだそうです
彼女とはそれから、道で合うとあいさつを交わす仲で
彼女はジョーさんに
「Anytime... またいつでも困ったらどうぞ~」
と言ってくれるんだそうです 😉
シングルマザーさんはどんな方か全くわからないですが
ヒトはたぶん誰でも「困った人を見ると助けたい」と思う生き物で
そこには確かに「絆」が生まれたんだと思います。
前回、ジョーさんとバタコが馬が合うのは多分、イギリス生まれじゃなくて
「異邦人」だからだ、と書きましたが、
ジョーさんは旦那さんの生前、地元「保守党支持者の会」に属してていわゆる富裕層にも知り合いの多い、見方によっては「いい暮らしをしてるヒト」とも言えるでしょう。
そんなヒトがどんどんとドアを叩いてやってきて
入れてあげたシングルマザー彼女の心意気や
もしかして「疎外感」を感じてたかもしれない彼女に
「ご近所さんを助けてあげる機会をむしろ与えてあげた」
この外国人ならではのジョーさんのフラットさ、物おじしなさが
良い空気を作ったんじゃないかな~とバタコは思いました。
イギリス人で「保守党より」のひとが「生活保護受給してるらしい」ひとに助けを求めるなんてゼッタイ有り得ないような気がします。
もとからジョーさんは、勇敢なヒトだと思っていましたが
改めて、真の勇気を持った女性だなと感じ入りました。
(外国人だから、と条件を割り引いたとしても)
もし彼女が自分の母だったら
※確認してませんが、ジョーさんは
遠くの街や外国に住む自分の3人の娘には
多分一言も話してないはずです
私は本当に母のことをを誇りに思うだろう、と
バタコはジョーさんに伝えました。
ひとりで頑張れることよりも、フラットに助けを求められることの方が、「勇気のしるし」なのかもと思うこの頃なんです
遠くの親戚より近くの他人
それにしても、前回の記事にも書きましたが
「遠くの親戚より近くの他人」
自分の娘には絶対見せられない姿を
ご近所さんには晒(さら)して助けを求めたという・・
自分もひとりの「むすめ」として「ハハ」として
考え込んでしまうようなエピソード・・
ジョーさんが選んだのは数軒隣の家で一夜を明かすこと。
まだ、それでも
「寝袋持って歩いてる姿を見られたくない」
と
夜が明けると早々に自宅に帰ったのだそうです・・
※この話を聞いた時に (徒歩5分以内なんだし)
「あら~バタコんちに来てくれればよかったのに」とも思いました
「辛いことあったらいつでも来てね」
って、もっと強調しておけばよかったなとも思いましたし
でも、よくよく考えると、
「変な噂にならないよう、意図的に『女性一人暮らし世帯』に行く
ことしか、頭に置いてなかった」のかもしれない・・
あと、コドモが翌日学校に行くような世帯や
朝から仕事に出勤する世帯を避けたのかもしれません。
おそらく、とっさとは言え頭の中では綿密なチェック項目を
参照してたんでしょうね・・
ジョーさんは
「この経験を他人に話せるようになったのも最近・・」
と言ってました。
アナタは苦しい時ひとりで抱え込まずに、
「助けてください」とただそれだけを、すぐそばに居る人に訴えることができますか?
ではまた明日!
*********************************************************************************■関連記事:ご近所ジョーさんと看取りについて話す
■関連記事:バタコがジョーさんとおともだちなのは、故郷の両親への罪滅ぼしの意味合いもあるようです・・
■関連リンク:生活保護について、実はほとんど何も知らないバタコがとても勉強になったのはコチラのブログ記事。Emiさんありがとうございます!
■関連記事:バタコが救急車初体験したハナシ
この記事について「イギリスの医療制度について書いて欲しい」とリクエストをいただいておりまして、大変遅くなりましたが、今回は現地レポとしても書いてみました。
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最後まで読んでいただいてありがとうございます!