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【一挙公開】指宿市フリーランス限定コワーケーション体験参加者レポート

去る2021年12月8日(水)~11日(土)の4日間、鹿児島県指宿市のコワーケーション体験プログラム『ゆるっとほぐれる、指宿市。Freelance ”Co”workation』に参加してきました。

『ゆるっとほぐれる、指宿市。Freelance ”Co”workation』では、指宿市内のどこに宿泊、滞在しても自由。どのように時間を使うかも自由。つまり、かねて提唱している「個人」が「余白」を愉しむ建付けになっていて、そこがあえて「コワーケーション」と称している所以。

関係者曰く、

企業ありきの日本型ワーケーションではなく、個人が主体的に選択して行動する「コワーケーション」というものを、受け入れる側の指宿市のみなさんにも、広く知っていただきたいと考えてつけられたものです。

まさにぼくがずっと主張している「コワーケーション」の趣旨と一致していて、当然、参加したわけです。

その際、指宿市に提出したリポートを、関係各位のご了解を得てここに公開します。例によって長文です。

なお、このブログは「いぶすきFreeelanceマガジン」に「置きブログ」(この記事の最後に書いてます)として収録されています。

では、参ります。

【1】指宿市でのコワーケーションについてのご意見・ご感想

(1)魅力や良かった点

今回、指宿でのコワーケーションでよかった点は、(わざわざワーケーションのために企画されたのではない)地元で日常的に開催されているイベントへの参加が許されたこと、そしてその後の懇親会で地元の方と交流できたこと、これに尽きます。

私が常々考えている、その地にとっての理想のコワーケーションとは、風景や食事、土産物などの観光旅行の視点から企画された一過性の消費を期待するものではなく、そこに暮らし仕事をしている人たちとのリレーションをつなぎ、仕事に限らずさまざまな活動をともにする関係を結ぶ機会を作ることです。

そして、リモートワーカー(来訪者)とローカルワーカー(地元)をつなぐことで協働もしくは共創関係を構築し、その地域に継続的に価値を生む仕組みを作るきっかけにすることがサステナブルな町づくりに貢献すると考えています。と同時に、その地にそのローカルワーカーがいることが、またそこを訪れる理由にもなります。そこに「ヒト」がいて「コト」があるから関係が続くのです。その拠点となるのがコワーキングスペースです。

言い換えると、我々は客ではなく、「仲間」になりたいから、その地を訪れるのです。

実は私は昨年11月に鹿児島県のワーケーションモニター体験に参加した際、3日間、指宿に滞在した経験を持ちますが、その際、レンタカーでひとりで観光名所を巡ることに徒に時間を費やして、コワーケーションの最大の醍醐味である、ローカル(地元)の人たちとの交流を愉しむことがほとんどできませんでした。

宿泊したホテルには「コワーキングスペースがあります」とのことでしたので、期待して伺ったのですが、そこにはただデスクがあってWiFiが飛んでいるだけで誰もいず、ほぼ半日を誰とも言葉を交わさず、一人ぽつんと仕事しました。

日頃出会うことのない人たちとの出会いと対話が、自分の人生に新しい1ページを作ることの重要性を知っているコワーカーの自分にとっては(だから、コワーキングを運営し自らもコワーカーであるのですが)、わざわざそこを選んだ意味が全くありませんでした。これは、「コワーキング」というものをリモートワーカーの「コミュニティ」ではなく、単なる「作業場」としか理解していなかったからだと思います。

唯一、コミュニケーションを楽しめたのは、2日目にコワーキング「wacca.」さんにおじゃました時だけでした。

ホテルにコワーキングを整備する場合は、宿泊客だけの利用に限定するのではなく、地元地域のワーカーの利用も可能にして、そもそもローカルのワーキングコミュニティとして運用されるのが理想ですが、往々にして地方のホテルはそこまで考えが及ばないか、そのノウハウを持ち合わせておりません。(ちなみに、沖縄県名護のホテル「ゆがふいんおきなわ」さんでは、地域住民のコワーキング利用を受け入れています)

そんな体験もあったので、今回は、最終日の長崎鼻(後述)以外、遠方の観光地を巡ることは極力控え、指宿駅を起点として自転車か徒歩で移動できる範囲内をゆっくり探索し、可能であれば地元の方と言葉を交わすことで、日常の指宿を感じ取ることにしました。

私はコワーキングがローカル(経済)の活性化に非常に大きな役割を担うと考えていますが、そもそもコワーキングには以下の5つの価値があります。

・Accessibility(つながり):必要な時に必要な人につながる
・Openness(シェア):お互いに助け合う
・Collaboration(コラボ):役割を分担してチームで仕事する
・Community(コミュニティ):コラボがいくつもできるとコミュニティとして機能する
・Sustainability(継続性):コミュニティとして機能するとローカル経済を駆動するエンジンとなり、その地域の継続性が増す

これらの価値を共有する大前提として、コミュニケーションが欠かせません。

そこに集う多種多様な人たちが、相互に持てるものを提供して補完しあってコトを成す。これがコワーキングの本質であり、その根幹には「相互扶助」の精神がありますが、そのために必要なのが、他者とのつながりをタイトにするコミュニケーションです。

コミュニケーションによってつながった人間関係は、その後のさまざまな活動において大きく作用します。幸いなことに、今はインターネットがあり、SNSがあります。リアルに一度しか会ったことのない人でも、その後、SNSでつながりを続けることは可能です。なにか要件があればメッセージを送ることで相互に交流できます。今回、指宿のコワーケーションのことをお知らせいただいた今柳田さんが、そのいい例です。これは20年前にはなかった人間関係の姿です。

その最初のきっかけを作ることがコワーキングの大きな役割です。そして、コワーキングにおいて開催されるイベント(セミナー、ワークショップ、プレゼン大会、あるいはパーティ形式の交流会など)がそのきっかけとして大いに役立ちます。

今回、【フリーランスプレゼン交流会(2)】、【語る会】、【フルタイムじゃない働き方を考える】に参加でき、発言の機会をいただいたことは、まさにコミュニケーションから始まる人間関係を結ぶための貴重な体験となりました。テーマに対して共に考え意見を述べる。それは取りも直さず「仲間」であることの証左です。また、その後の懇親会では、さらにお互いの人となりを知ることになり、人生の新しい1ページが加わりました。

今回のコワーケーションにおける最大の良かった点は、指宿に「仲間」を得たことです。

(2)改善点やご要望

・コワーキングスペースの整備

上記のとおり、コワーキングスペースはその地域のコミュニティの拠点となる、いわばインフラであり、ハブであり、ローカル経済を活性化するためのエンジンです。そのコワーキングを、規模の大小はどうあれ、リモートワーカーが適宜、選択して利用できる労働環境として、複数、整備する必要がまずあると思います。

現時点で、指宿市におけるコワーキングは「wacca.」さん以外にないと認識しています。これを複数にすることで、それぞれ個性の違うコワーキングができ、それぞれがコワーキングを軸にしたコワーカー(リモートワーカー)の活動をサポートすることで、地元経済を活性化し、サステナブルな町づくりが加速できると考えます。

「wacca.」さんも、自らがデザイナーである今柳田さんの運営によるスペースですが、地元でクリエイティブ系の仕事をするワーカーを中心にコワーキングスペースを開設する事例は、どの地方都市でもよくあります。ただ、ひとりではなかなか難しいことでもあります。ですので、まずコワーキングを起ち上げる仲間づくりからするのが肝要です。

私は、各地の地方自治体からお声がけいただきコワーキングあるいはコワーケーションをテーマに講演していますが、その際に必ずお見せするのが、この「コワーキング曼荼羅」です。

コワーキング曼荼羅Ver.3.2

コワーキングは単なるIT系のワーカーの作業場ではありません。都市圏から流れてくる情報だけを鵜呑みにしているとそういう誤解が生じますが、実はこの図にある8つのテーマに沿って活動する人たちのために活用される「仕組み」であり「スキーム」です。コワーキングとは、いわばインフラであり、ハブであり、ローカル経済を活性化するためのエンジンであると書いたのは、そういう意味です。

事実、都会より地方におけるコワーキングでは、これらのテーマがワンストップで行われています。そして、これらのテーマはセミナーのテーマにもなり、また、起業のテーマにもなり得ます。例えば、育児する母親たちが情報や知見を共有するイベントが開催され、そこでの対話がヒントになって新しい育児支援ビジネスが起ち上がる、その小さなステップを踏む機会をコワーキングが作るのです。

これは前述の「コワーキングの5大価値」におけるコラボレーションです。このことを前提に、8つのテーマのどれかに主軸を置く、いわばカラーの違うコワーキングスペースをいくつか整備し、かつ、相互に連携させることで交流機会を増やし、地元のワーカーの参加意識を高めることが必要です。

なお、同じ地域に同じ事業者ができることを競合関係と考える向きもありますが、ことコワーキングに関しては競合ではなくて協働、もしくは、共創関係に落ち着かせることが可能です。そもそも、コワーキングの「Co」は共同という意味です。この理念を理解しない人も一部たしかにいますが、本来は「Openness」の精神でお互いに補完し合うべきです。

なお、この辺は、自治体が旗を振るほうが賛同者を集めやすいのではないかと考えています。

コワーケーションの前に、まずローカル(地元)にコミュニティを育み、少しずつ輪を広げていく。その過程でコワーケーションを絡ませることで外部からの流入を促す。この流れをスムーズにするためにも、コワーキングスペースの整備が望まれます。

前述の通り、私は地元のワーカーとの交流に重きを置いていますが、その拠り所になるのがコワーキングです。少なくとも私のコワーキング仲間は、そのローカルに複数のコワーキングがあれば、時間の許す限りどのコワーキングも利用しようとしますし、私もその一人です。そうすることで、「仲間」を得るチャンスが増えるからです。リモートワーカーとローカルワーカーが接続する機会を多く設けることは、コワーケーションの要諦でもあります。

なお、私は官民協働型のコワーキング開設・運営を推奨しており、そのための講座も編成し、地方自治体向けに提案しています。宣伝めいて恐縮ですが、以下のサイトも参照ください。

ローカルコワーキング共創塾

・ヒトとコトの見える化

観光業界が先導する日本型ワーケーションでは、自然環境や名所旧跡、アクティビティなどをアピールするものが多いですが、コワーキングを拠点とするコワーケーションの場合、その参加者が最も興味があるのはその地の「ヒト」と「コト」です。

その地で活動している、面白いヒト、変わったヒト、尖ってるヒト、進んでるヒト、ちょっとおかしいヒト。こういうユニークな人たちの起こしている「コト」に惹かれて人はやってきます。結局、人が人を呼びます。そして町を再設計するというのは、人が人を呼ぶ構造にするということです。

ですが、その地にどんな人がいて、どんなことをしてるのかを、一か所で分かるように情報発信しているサイトは、意外とないものです。それが見える化されれば、そこを訪れる理由ができます。それが(どこの地方にも)ないがために、「場所」の情報だけを頼りに予定が組まれる、自然、観光目線の企画になる、これが実情です。

観光目線の企画は、あまり大きな変化がないものです。ですが、ヒトとコトは変化する可能性が高いです。その分、管理運営は手がかかりますが、変化するからこそ、コワーケーション志向のワーカーの興味を惹きます。ここも、民間の事業者が単独でするのではなく、自治体が主体となって「指宿ヒト・コト情報サイト」を運営することが妥当と考えます。

場所やモノではなくて、ヒトとコトにフォーカスして、指宿を表現する、そういう意識が必要と思います。


・温泉という町のパーツの再整備

ひとつ気づいたのは、リモートワーカーにとって魅力的な温泉地としての演出が見当たらなかったことです。

指宿といえば温泉、というのが定評だと思いますが、かつての昭和の時代の観光旅行の感覚のままで止まっているように感じました。それは、施設が古いということではありません(むしろ、それは他と差別化できる有利な要件です)。かつては、いったん旅館(と、その周辺)に入ればそこで食事も温泉もワンパックで楽しめたのではないかと思いますが、我々は「移動」します。移動する間に出会う出来事に期待しているからです。言い換えると、「いきあたりばったり」でOKなのです。

コワーケーションでフォーカスすべき対象は、企業の社員(による団体旅行)ではなく、フリーランサーをはじめとする、自分の時間と仕事を自分でコントロールできる個人のリモートワーカーです。企業ではなく個人です。

そういう意味で、移動する間に遭遇する「温泉」というパーツが、町全体を構成する要素としてバラバラである、という印象を受けた、ということです。コワーケーションに参加するリモートワーカーを、指宿の売り物である温泉に誘導するための導線を引いておくのは、決して無駄ではないと思います。(これは後述する、自分で組み合わせることを楽しませる、につながります)

なお、一点、残念だったのは、宿泊した宿が近隣の公設温泉を利用することになっていて、その温泉の営業時間が21時までであり、20時半までに入場しなければならなかったことです。そのため、日によってはいったん夕方に宿に帰り、風呂に入ってからイベント会場に向かう、ということもありました。9時−5時で仕事を終える会社員ならいざ知らず、自由に時間設定することに慣れているリモートワーカーにとっては、往復の時間ももったいないですし、そこまでのリズムも狂ってしまいます。上記の「パーツを整備する」に絡みますが、希望を申せば、24時間いつでも入浴できる温泉があれば満足度はかなり高いと思います。

【2】今後より良くしていくためのアイデア

・自分で組み合わせることを楽しませる

日本型ワーケーションでは、ほとんどの場合、わずか2泊3日ぐらいの日程で、観光やアクティビティなどがすし詰めになっています。そこに仕事も加わるので、バケーションどころか、気の休まる間がありません。観光目線で企画するとこうなってしまいがちです。

それがために、会社にワーケーション制度があるにも関わらず、その制度を利用しないで、個人でこっそりワーケーションを愉しむ会社員も現れてきています。要するに、企業主導のワーケーションは忌避され、ようやく日本でも個人が自律的にブッキングするワーケーションが行われるフェーズに入ってきているということです。

その場合、受け入れ側は事細かくプランを設計してパッケージにして押し付けるのではなく、ワーカーが滞在中のスケジュールを自分で作ることを楽しんでもらうためのパーツだけを用意しておくのです。

我々が提唱しているのは、滞在期間は少なくとも1週間、できれば2週間(海外では1ヶ月、2ヶ月が当たり前ですが、日本では一足飛びにそこまでは無理として)。その間、仕事をこなしつつ、日常にあえて「余白」を作る。その「余白」にはあらかじめ予定は入れないでおく。「余白」は日頃の慌ただしい生活から離れて、静かに内省する時間を持ち、心身ともにリフレッシュするために使う。けれども、訪れた先に興味を覚えるコトがあれば、その「余白」を利用して直ぐに行動に移す。ここで、ローカルとの接続が行われる。

パーツとは、くどいですが、ヒトとコトです。どんな人がどんなことをしているか、これを見える化して、パーツとして提案することが肝要と考えます。


・地域課題解決型ワーケーション

どの地方都市にも課題はありますが、それを市民だけの閉じたコミュニティの中で解決を図るのではなく、外に開いて、県外からも参加者を募ることで、新たな活路を見出そうとする試みも各地で行われています。

例えば、2020年1月16日から1ヶ月間実施した長崎県五島市の地域課題解決型ワーケーションは、家族含めて62名が参加(3泊以上9泊以下)し、現地でワークショップを12回開催し、延べ223名が参加しました。このワークショップで地元の課題を取り上げ、参加者と地元住民が一緒にディスカッションしています。ここで重要なのは、このワーケーションの参加はすべて自費だったということです。つまり、その地に起こっているコトに関心のある人は、たとえ補助金がなくともやってくるのです。

ちなみに、五島市立福江小学校では体験入学を無料で実施したので、子供連れの参加者にも好評でした。こうした、かゆいところに手が届いている施策も重要です。

加えて、ワークショップでは、東京圏から参加したIT企業の方が地元住民にネットショップ構築のセミナーを開いたり、一方で地元の漁師が都会の人に釣りを教えるという、スキルシェアが行われましたが、ここで注目すべきはそのワークショップに参加した地元住民の中から、五島市の課題を解決するため6名が創業したという事実です。

スキルシェアは、そのためにリモートワーカーをコワーケーションに誘致する、格好のコンテンツになりますし、そこで得た知識なり技量なりでフリーランサーとして仕事をしようという人が指宿にも増える可能性はあります。観光目的で一過性の消費を期待するのではなく、継続的に地元経済を回すための仕組みをワーケーションの中に組み込むことが、サステナブルな町づくりに貢献します。


・セミナー・ワークショップ・勉強会の企画・開催

すでに「ディーリンクス」さんでも「wacca.」さんでも、各種のイベントは行われていると思いますが、上記でも述べた「スキル」を身につける、つまり、仕事に直結するテーマのセミナーやワークショップは、地元のフリーランサーの連携を強めるためにも必要です。

誰かのビジネスの「お客さん」を集めるためのイベントも有意ですが、それよりもむしろ、それぞれの得意分野を持つフリーランサーの育成と、彼らの協働関係の構築をサポートする意味で、セミナーやワークショップを継続的に開催するべきと考えます。

基本的な入門編的講座から、時節に応じた、業界のトレンドをキャッチアップする最新技術をテーマにあげて、まずは週に一本、開催してみます。

また、講師が講義するセミナーという形式ではなくて、参加者がお互いに教え合う「勉強会」のほうが、参加者のハードルが低いこともあります。そのうち、この中から講師になる人が出てこないとも限りません。要は、彼らが活躍できる場を提供するということです。

私が2010年に神戸でコワーキングを起ち上げた当初、まだコワーキングの意味も世間では認知されていない頃、誰も来ないので企画したのが仕事に直結するセミナーです。週に必ず1本、開講するようにして、「あそこでは、しょっちゅう何かやってて、人が出入りしている」というムード作りをしました。くどいですが、人が人を呼びます。

しかし、毎週、ひとりで企画しているとテーマ(ネタ)が切れてきます。そこで、何かのセミナーに参加した人に片っ端から「いま、何を学びたいか」「興味のあるテーマは何か」「抱えている課題は何か」を訊いて回りました。そこからテーマを見つけて、講義できる人を紹介してもらって、結局、その年は年間で60本やりました。要するに、彼らを巻き込んで「仲間」にするのです。

参加者も初対面でも、同じテーマに興味を持つ者同士ですから、すぐに仲良くなります。参加者同士、参加者と講師が交わすコミュニケーションです。そこからコラボが起こったり、別の勉強会の開催になったり、ついには気が合う者同士で会社を設立するケースも出てきました。

セミナーやワークショップなどのイベントは、人を集めつなげるのに有効です。上記の「地域課題解決型」とはまた別に、純粋にスキルアップ的な趣旨でコワーケーションのプログラムに組み込んでも面白いと思います。

先日、沖縄の大宜味村でのコワーケーションでは、神戸から私の友人も講師として参加し、地元の人たちにネットショップの開業や、スマホでできるYouTube動画の作成、編集方法などを講義しました。講師になった彼も、そうして大宜味村とのつながりができたことを喜んでいます。


・移動手段の解決

地方に共通して存在する課題が、移動手段の少なさです。今回、長崎鼻まであえて路線バスで移動しましたが、たまたま乗ったバスの運転手さんが話好きな方で、コミュニケーションを求めている私にとっては非常に楽しい時間を過ごせたのはよかったものの、その運転手さんも言うように、バスの便数はどんどん減っているとのことでした。

これは、JRにも言えることのようですが、一方でレンタカーも台数に余裕があるわけではなく(事実、滞在中の空き車両はゼロでした)、こと移動に不自由を感じてしまいます。また、半日だけ借りた自転車も17時までに返却のことと、何度も念を押されました。

例えばですが、長野県千曲市で実行されている、車や自転車の配車をワンストップで利用できる、LINE連携アプリを用いた独自システム〈温泉MaaS〉は参考になるかもしれません。以下のサイトの、2つ目の段落にその事が出ています。

『株式会社ふろしきや』が提供する、“垣根を越える”〈千曲市ワーケーション〉とは


こうした取り組みは、いち自治体だけではなかなか難しいかもしれません。事実、千曲市のこの事例では、日本マイクロソフト社とLINE社が関わっています。

ただ、この取り組みが、地元で開催されたアイデアソンから出てきたアイデアであり、ワーケーション参加者達が全国からリモート開発をして完成させたということに注意を払っておきたいと思います。つまり、リモートとローカルの協働により解決策が実行されているということです。

これは、前述の五島市の「地域課題解決型」ワーケーションの変形でもありますが、指宿に縁をつないだ他府県のリモートワーカーに参加を呼びかける企画はやる価値があると思います。


・季節労働型リモートワーク

これも、「地域課題解決型」のひとつですが、そのローカル地域の不足している労働力を、コワーケーションに参加するリモートワーカーの手を借りることで解決する、というものです。

愛媛県八幡浜市のコワーキング「コダテル」さんでは、昨年、コロナの影響で地元のみかん農園の収穫期にアルバイトを呼べなくなりました。そこで、利用者のひとりが執筆や動画編集を生業としているフリーランスの友人たちに声をかけました。彼らは、パソコン1台で仕事をしており、本業の時間も自由に調整できるからです。

「コダテル」さんは、古民家を改装したコワーキングで、2階は宿泊施設になっています。そこに滞在しながら、みかん農園で働きつつ、かつ、自分の仕事も1階のコワーキングでこなす、というコワーケーションを企画し、見事、収穫を終えています。

そのことを書いた記事が下記です。

コダテル[愛媛県八幡浜市]/coworkingpress

実は今年も同様の企画が進められているそうです。

指宿の、特に農業、漁業、林業など、昨今、労働力不足が課題になっているさまざまな事業者から情報を収集して、コワーケーションに組み込むのは地方都市だからこそできることだと思います。

特に都市圏に暮らすリモートワーカーの中には、土をいじりたいという人が多いので、一度、企画されてはどうでしょうか。


・アプリ開発

前述の「温泉という町のパーツの再整備」に絡んでですが、例えば、市内の温泉地をマップにしてこれらを巡るスタンプラリーを企画し、温泉ごとにポイントを発行するアプリを開発するのも一考です。この場合、ポイントは地域通貨として市内で使用できるようにしておきます。

併せて、そのアプリに指宿の最新情報を配信する機能も実装しておけば、指宿に滞在中だけでなく、スマホにインストールしている限り、帰ってからも引き続きリレーションをつなぐことができます。つまり、アプリが指宿との縁をつなぎとめてくれ、そこに配信される情報を見て、また指宿を再訪する導線を引くことも可能です。

さらに、前述「移動手段の解決」の千曲市の〈温泉MaaS〉の例のように、このアプリの企画・開発にアイデアソンを絡ませて、地元だけではなく、広く県外からも開発者の参加を募るのも有効です。彼らは、自分の能力が役に立つと知れば、一定の受け入れ体制(期間、会場、宿泊や食事、等)を整えておけば、喜んで参加してきます。これも、県外のリモートワーカーとのつながりを作るイベントとして有効です。

・置きブログ

私が最近、各地で推奨しているのが、「置きブログ」です。

よくゲストハウスを利用すると、ノートブックに宿泊客が思い思いに書いてあるノートがありますが、あれはそのゲストハウスに行かなければ読めません。また、各自が自分のブログにバラバラに書いても、そのローカルのいわば資産にはなりません。つまり、新しい人のつながりを作れません。

そこで、そのブログをローカルの人が管理するマガジン、例えば「指宿マガジン」に保存して、どこからでも誰でも閲覧できるようにする、そうすると、今度、指宿に行きたいなと思っている人の検索にヒットし、それまで縁がなかった人の目にも触れる可能性が出てくる、それがきっかけで新しい人とつながるができる、というアイデアです。

noteを使えば、ブログを書いた人も自分のブログとして保存できつつ、こうして他の人のマガジンにも収録できます。これを使わない手はないと考え、コワーケーションでは「置きブログ」を推奨しています。

以上、参考になりましたら幸いです。

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ということで、今回は行政へ提出したリポートを転載してブログ記事としました。日本型ワーケーションではない、ローカルに真に価値あるコワーケーションを検討される全国の地方自治体の参考になりましたら幸いです。

なお、コワーケーションの実施については何なり下記までお問い合わせください。

ito[@]cahootz.jp

それでは。

※定期購読マガジンを配信しています。


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