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日々の泡沫

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ささやかな日常の雑感、備忘録
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2022年2月の記事一覧

真夜中のアリクイ

真夜中のアリクイ

 夜勤明けの仕事帰り、コンビニで缶ビールと柿ピーを買って未明の住宅地を歩いていると、不意にケモノが目の前を悠々と横切った。ある家のガレージから一方通行の道路を渡って、反対側の家の庭へ。
 犬猫ではない。タヌキでも、ハクビシンでもないようだ。近所の空き家の荒れ果てた庭にタヌキのつがいが住み着いて、角から頭だけだして、仲良くこちらをうかがっているのに出くわしたのは、10年も昔になるか。しかし、もうこの

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「ヘビとサソリ」サソリの章

「ヘビとサソリ」サソリの章

 生理的嫌悪ということでは、会社の同僚だった山王丸さんのことも忘れ難い。転職すれば、去る者日々に疎しで、慕っていた上司や可愛がっていた後輩のこともしだいに忘れてゆくものであるが、山王丸さんの記憶は墓場まで持って行くのだろうな、とふと思う。転職ばかりの半生で、どこに行ってもソリの合わない人はいるし、サイコ野郎、ハラスメント上司、犯罪者も見てきたけれども、嫌悪を催すことにかけては随一であった。中途採用

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「ヘビとサソリ」ヘビの章

「ヘビとサソリ」ヘビの章

 蛇蝎の如く嫌う、あるいは、嫌われる、という表現がある。ヘビとサソリが、当たり前のように嫌われ者の代表選手になっているのは、何故なのか。ここでの嫌うというのが生理的嫌悪感であることに注目したい。人は、獅子虎の如く忌み嫌うとは、決して言わないのである。
 もちろんヘビやサソリをペットにする人もいるだろうが、極めて少数であり、それは進化のちょっとした揺らぎのようなものでないのか、敢えて生理的嫌悪感を克

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生理的嫌悪感について

生理的嫌悪感について

 生理的嫌悪感について語るのは、難しい。思い出すのは、あるライターが、元プロ野球選手について、顔には生理的な嫌悪を感じるけれど、解説は良いなんて書いた一件である。当の解説者が「親から貰った顔、傷つく」と反応したことからちょっとした騒動が起こり、結果、記事は修正、それから削除、編集長が謝罪に追い込まれたように記憶している。

 顔に生理的嫌悪を感じるというのは、ルッキズム云々の前にそもそも失礼であっ

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