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がんを診る医師が最も辛さを感じる瞬間とその対応方法を学ぶ~SHARE-CST受講記~

患者さんにがんの再発や転移を伝えるのって難しいし、自力で上手くできるように練習をするのはさらに難しくないですか?こうした話は患者さんはもちろんですが、医療者にもかなり心理的ストレスがかかることが知られています。

医療におけるこうした難しいシチュエーションのコミュニケーションはトレーニングにより上達することが知られています。そのトレーニングコースの中にコミュニケーション技術研修会(CST)があります。これまでに2007〜2016年までの10年間に 1,360 名の医師が受講し、効果が示されています。

今回はその中でもCST-AYAを受講しました。これはコミュニケーションのトレーニングの中でもAYA世代へのコミュニケーションスキルのトレーニングを提供するプログラムです。

例えば悪い知らせとは具体的には以下の3場面が設定されます。いずれも日常診療で我々がよく経験する場面でありますが、これらは患者さんだけでなく、がん診療医も仕事をやめたくなるくらい辛い瞬間としてあげられる場面です。

・がんの診断を伝える
・再発・転移を伝える
・抗がん剤の中止を伝える

実際のトレーニングは模擬患者さんを相手に外来のシミュレーションを行います。この際に悪い知らせを行う際のSHAREプロトコールに沿って行うようにします。以下から研修会のテキストがダウンロードできます。

テキストには面談のシチュエーション別に具体的な注意点や言葉遣いの例が提示されています。実際は表の通りに言う必要はなく、自分の言葉に言い換えて練習しました。

プロトコールの表から具体的にこうした表現を使う、このスキルを使う、ここに配慮するなどを参加者で相談しながら目標を設定し、実践していきます。今回は特にAYA世代の対応を織り交ぜながら練習をすることができました。若い世代の患者さんはライフステージ上、多くの役割を担うことが多かったり、周りに類似の体験をした方が少ないなど、面談時に配慮する点が増えます。その後、実際にやってみてどうだったかを共有しつつ、スキルを試していきます。

模擬患者さんはいろんな性格の方を演じてくれます。実際の演習を通して、寡黙な方、努めて明るく振る舞っている方、悪い結果を淡々と聞く方、実際の臨床でお会いする患者さんのさまざまな反応を演じてくれます。医師も人間ですから苦手な場面というのはあると思いますが、その対応も相談しながら経験することができます。参加者や講師の先生から場面別の対応方法のアドバイスを受けることができました。

シミュレーションの素晴らしいことは、リアルタイムでアドバイスをもらい、やり直したり、別のパターンを試すことができます。現実ではありえませんが、これらによって自分の面談を客観的に見てもらい、それに対する患者さんの反応を学ぶことができました。

講習を受けた翌日から外来ごとにテーマを決めて意識的に行うことで、さらに上達できていることを実感できています。やり方は同じですが、それを1人でやらなければなりません。全ての外来で行うことはできないかもしれませんが、1日に1回でもテーマを決める外来をすることで、使える引き出しを増やすことができます。

私自身もまだまだ発展途上ですが、1人でも外来のトレーニングをできるスキルを身につけられたことが最大の学びかもしれません。

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