適当陽区

「わかった、お前のチサに対する気持ちはわかった」

　「なにがわかったんだ」

「生半可な気持ちじゃないってことだな」

　「当たり前だ」

「じゃあここは男らしく、正々堂々と勝負しようじゃないか」

　「勝負？喧嘩は苦手だからかんべんしてくれよな」

「喧嘩じゃない。適当陽区で勝負だ」

　「…なに？」

「適当陽区だ」

　「てきとうようくだ？」

「適当陽区」

　「てきとうようく？？」

「俺から行くぜ」

　「なにが？」

あったっし〜　くになかりょ〜こ〜

お腹が空いたら三点倒立して〜

右足の裏に〜　鯛の刺身を置いちゃうの〜

って…

言うじゃな〜い

「おい、お前の番だぞ」

　「なにが？」

「適当陽区だ」

　「今のがてきとうようく？」

「そうだ」

　「てきとうようくの説明をしてくれ」

「適当に波田陽区をやるんだ」

　「やっぱりそうか」

「お前の番だぞ」

　「本当に適当でいいのか」

「本当に適当でいい」

　「どうなったら勝ちなんだ？」

「勝ちというか、詰まったり、あまりにも意味が通ってないと負けだ」

　「今のお前のやつは、意味が通っていたのか？」

「通っていただろ」

　「あまり内容を覚えていない。もう一度やってくれるか」

「覚えていない」

　「え」

「適当だからこそ、覚えていないのだ」

　「いないのだって言われても」

「逆に覚えていたら適当じゃないってことになって負ける」

　「よく分からんが、まぁ、やってみるか」

「そうだ、チサを愛してるんだろ」

　「愛してる」

「俺より愛してるんだろ！」

　「お前より愛してる！」

「じゃあ適当陽区だ！」

　あったし〜　なすびです〜

　電波少年のなすびです〜

　懸賞生活生活言ってたけど〜

　祭りには縁遠いの〜

　って…

　言うじゃな〜い

　…でもあんた

「あーそこはやらなくていい」

　「えそうなの」

あったし〜　メソポタミア文め〜

更衣室を開発したのは私だし〜

メロンを皮切りにクーリッシュを頬張るの〜

って…

言うじゃな〜い

　あったっし〜　ビール売りインストラクタ〜

　いかがすかいかがすか言いつつも〜

　こっそり飲んだり吐いたりよ〜

「ブー！」

　「え」

「意味添いすぎ」

　「でも意味が通ってないと負けって」

「もっと適当じゃないと。なすびのもひどかった」

　「そうか？」

「見とけ」

あったっし〜　ベーグルよ〜

四角形の烏骨鶏（うこっけい）〜

勉強道具を葬るの〜

って…

言うじゃな〜い

　あったっし〜　勝ち組ヤクザ〜

　賛否両論あるけども〜

　板チョコは旅行に連れてくの〜

　って…

　言うじゃな〜い

あったっし〜　バースデーうどん〜

生まれも育ちも新潟で〜

教師生活やめたいの〜

って…

言うじゃな〜い

　あったっし〜　街ラクダ〜

　オアシスこそないけれど〜

　手首の接写の張り紙よ〜

　って…

　言うじゃな〜い

〜5時間後〜

あったっし〜　椅子のグミ〜

固定されてるわズレないわ〜

糞をぶつけて百万円

ボスに報告しないでよ〜

って…

言うじゃな〜い

　あったっし〜　マラソンランナ〜

　困ったときこそ水芭蕉〜

　電気水道ガス水道〜

　って…

　言うじゃな〜い

「もうやめて！！」

あったっし〜

「私のために争わないで！！」

国民健康保険料〜

「血が出てる！」

日曜始まりのカレンダーありますけど〜

「無駄な争いはやめて！！」

雨に汚れて力が出ないの〜

「お願い！！」

って…

って…

ゆ…

ヴォファッ…

「キャーーーー！！」

破二郎（はじろう）の絶命により、チサは吉良崎（きらさき）と結ばれた。

5年の月日が流れ、2人は愛の結晶にこう名付けた。

破二郎と。

そう、かの有名な吉良崎破二郎。

ベーコンエッグの開発者である。