見出し画像

燃料屋の未来は、メンテナンス、顧客体験(UX)、そして金融商品を売るエンベッドファイナンス事業

2022年になったので自社のエネルギー事業(LPガス、電気、ガソスタ、再エネ周り)を俯瞰して、方向性を整理しようと思う。

LPガス事業は2040年位まではマーケットサイズは縮小するもののなんだかんだでキャッシュを産むと思っている。環境証書とセットでゼロカーボンLPガスとして売られるので1-2割くらいのコストはオンされるが、今もLPの価格変動は大きいのでユーザー的にはそんなに気にはされないだろう。2030年代後半は再エネの余剰電力から作られる水素キャリアとしてLPガス設備が使われていくという予測もある。家業なので贔屓目かもしれないが配送/検針という顧客接点も握れてるので世の中のガス屋はそんなに悲観的にならなくてもいいと思う。

電気は需要が爆増するし再エネ普及の原資や、世界的なLNG/原油精製の設備投資が減ることに伴う火力発電のコスト上昇で価格は上がるだろう。電気価格上昇に伴うスタグフレーション(インフレ+貧富の差拡大)が2020年台後半は悩みの種になりそう。蓄電池は全固体電池が期待されてるが2025年位に実用化。電気に関して言えば自社グループでも探しているがなかなかこれと言った蓄電池商品が無いのがいまは悩ましい。

ガソスタは確実にマーケットなくなるのでメンテナンスのサービス業態になるだろう。EVは現状は蓄電池性能の問題で短距離移動にまずはフィット。ガソスタでのEVリース事業も2022年にもローンチされる予定。EVでもガソリン車でも綺麗に保ちたいというニーズはあるので、うちのガソスタでもアプリでの洗車サブスク始めたりした。ガソスタの存在はEVリース、中古車売買、車検、地域公共交通機関運営(グリスロとか)などを担う存在に長期的にはなりそう。EVはゼロカーボン本丸の長距離トラックへの導入は基本的には前述の蓄電池のイノベーション(特に希少金属周り)次第でもある。蓄電池のイノベーションをテスラがやるのか、テンセントがやるのか、一発逆転パナソニックがやるのかで、電化されていく世界のリードをどの国が握るか楽しみ。

と書いたが予測が当たるかは知らない。明日には規制改革や技術革命起こって全てのルールが変わるのもありうる世界。なので燃料屋(LPガス、ガソリン、石油製品を売る会社)はどこに向かうか皆が迷ってる現状。自分は今の事業はキャッシュ産み続けるまで頑張りつつも、リスクヘッジとして、メンテナンス、UX、エンベッデッドファイナンスの事業に投資しようと思ってる。詳細を説明する。

「メンテナンス事業」はそのままの意味。原子力以外の再生エネルギーはいろんなルートはあるが太陽を元にしているので供給はほぼ無限だ。となるとエネルギー自体の価格は長期的にゼロに近づく。メーカーは給電設備、蓄電池、再エネ設備、EV、ロボットなどサブスクで販売して、メンテナンスを外注するビジネスモデルになるので機器メンテナンスの需要は高まる。今から特に電化周りのメンテナンスを自社でやれるようにするのは燃料屋の生き残り策として悪くない。

UXは顧客体験のこと。今のガス屋は想像して欲しい。自分の会社のサービスは「その存在が意識されないこと」に努めてないかと。実はこれはUX戦略的には正しい。コピー機のカートリッジビジネスの例が使われるが「存在を消してお金を毎月固定でもらう」は正しい戦略とされている。ただ、今後は、賢い消費者はエネルギーを意識的に選択したり、家電や家に常備されているAIが自動的にエネルギー契約先を選択するという形になっていく。その際に存在が消えていたら価格で勝負しないといけないが大手には絶対勝てない。価格以外のファクターで選択してもらえるよう「エネルギーを通じて、契約者の人生にどう寄り添うか」ということを意識した顧客が契約前からその契約を終えるまでの顧客体験の設計が必要。オンライン/オフライン両方から顧客セグメントに応じた設計を準備するに越したことはない。

エンベッドファイナンスは、金融以外の業態の会社が、自社の顧客にローン、保険、投資、仮想通貨、相続サポートなどの金融商品を代理店として販売する金融仲介事業を指す。例えばLPガスのお客からは1件1万円くらいの利益を貰える。そこに火災保険も販売されて年間5000円の仲介料がもらえれば、ノーリスクで利益1.5倍。医療保険や住宅ローンの借り換え、相続、税金サービスなどなど販売できる商品は山ほどある。代理店業の規制も去年緩和されたこともあり、この分野での競争は高まるし、別にLPガス売らなくても他の商品で利益出てるからいいや、という形にできるのでは。前述のUXと組み合わせた顧客とのつながりの設計が重要になる。

ついでにUXやエンベッドファイナンスで重要なのは、その会社が「尊敬されて、愛される」ことも重要。社会貢献事業はこの点で大事になる。SDGsバッチを付けるだけではなく、具体的に動くことが重要。自社で去年やったコミュニティの無料シェアカフェHamapokeの取り組みなど、その当時は考えてなかったけど、今思えばいい施策だと自画自賛してしまいそうになる(後付け)。

写真は誰でも無料で使えるシェアカフェのハマポケ。日置市湯之元という温泉街に作った。管理人は自分。

2022年は引き続きVUCAの時代。来週には言う事変わってる可能性もあるので、あまり信じないようにしてもらいたい。勉強、勉強。

この記事が参加している募集

SDGsへの向き合い方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?