「究極の地方中小企業」の話と、内的動機をベースにした目標設定のやり方
というか郷土のリーダー目指してない
今度、鹿児島県の「かごしま青年塾」という企画で地元の若手でリーダーになりたい方々に講演する機会をいただきました。この青年塾は「郷土の発展を支え、地域の核となる次世代リーダーを育成する」そうです。
おそらく以下のプレスリリースを見て、「こいつ(小平の事)は郷土の発展に燃えているので本社を地元に戻したりしてるに違いない」と判断されての選出なのでしょう
ただ自分は正直「郷土の発展にも地域の核になること」にも次世代リーダーにも興味がないので、困ってしまいました。
しばらく考えたのですが、郷土の発展に興味がないのに、結果的に地域にコミットすることになってる、自分自身の経緯、特に「will」と呼ばれる内的動機形成のプロセスは参考にしてもらえるかもと思っています。
そもそも講演会の意味って何だっけ?
そもそも、講演とかで「偉い人」の事例収集って意味ないんですよね。だって、時代も環境も違うのに、事例と同じようにしても上手くいく訳ないし。
むしろ、「偉い人」の講演会は、自分自身の目標設定と目標に至るルートを見直すために参加するのが効果的と思ってます(加えると歴史や人の行動には一定のパターンがあるので、そのパターン抽出のためのデータ集めとして)。ですので、私はその目標設定の方法をまず話し、自分の例を話して参考にしてもらえたら、少しは参加者の役に立てるのかなと思って、講演を引き受けることにしました。
自分の目標設定のやり方
では、目標設定をどういうふうにやるのか。私は、内的な動機をベースに目標を組み立てるのがいいと思ってます。金持ちになりたいとか、親や上司に褒められたいというような「外的な動機」だけではなく、持続的に楽しく頑張るためには、内から湧き出る「内的な動機」(この記事ではwillと呼びます)が大事と言われてます。
会社のマネジメントでもそうなのですが、外的な動機(飴と鞭)で自分を動かそうとしても、それが充足すると簡単にモチベーションをロスするし効きも弱いし持続的じゃないんですよね。
一方で自分自身の内面に基づくwill (内的な動機)をベースにすると、それやらないと自分自身がどうにも気持ち悪くて人生にしっくりこない、やり始めたら寝食忘れてやっても平気、みたいなハイな状態に長期的に持っていくことがよりやりやすいです。世間のハイパフォーマーの人はここをちゃんと見つけて強みを誰にも真似できないレベルに持っていってる人が多いかなと思います(イーロンマスクとかそう、そして、そうだから彼は何言われても平気だよね)。
自分は内的な動機をまずしっかり言語化して、それと外的な動機(企業に良いとか社会に求められている)が重なる方向で目標を設定することが多いです。具体的にそのプロセスを書いてみます。
まずはwillを言語化してみよう
私、今年の5月に自分の目標を見失いまして(会社で爆速で進めていた改革がひと段落した)、自分自身のwillを探り、もう一度目標設定をするというプロセスを3ヶ月ほどかけて始めていました。
まず最初に言語化できた自分自身のwillは、「家族を大切にしたい」「好奇心ベースで勉強をし続けたい」「自分の住む半径1キロを楽しくしたい」というものです。これは内的なものなので「なんで?」と言われても、「そうだからそう」というものですね。
自分のwillが上手く言語化できない人は「5年サボらずに続けられていること」を考えるのがいいでしょう。誰にも言われずに長く続けられているものはwillを探るきっかけになると言われていて、自分の場合は「勉強」が苦にならないのでそれかなと思います。ちなみに超絶に苦手なことは「肉体労働」と「単純作業」と「知らない人の集まりでの社交」なのでこの要素は目標に入れないのが良さそうです。
willと目標を接続してみる
自分は地方豪族企業の4代目のアトツギで、代々家業をやってきたので、内的な動機(will)の「家族を守ること」と「家業の会社を守ること」に太いつながりがあります。また地元をベースにしたガス事業もやってるので、「地域を楽しくすること」は顧客にも喜んでもらえて、会社の業績にもいいのプラスの循環を産みそうです。そして、勉強が好きで肉体労働は不向きなので経営サイドが良さそうです(昔農場を経営したときに社長はトマトに近づかないでください、と言われた事を思い出す)。
それらのwillの要因を組み合わせると「家業の会社の経営を行い、地域に根ざす事業を守る」という目標になりました。外的要因の給与とか社会的に褒められるというのと企業経営の成功はシナジーあるとも言えます。ただ、普通に経営するだけでは、面白くないしワクワクしないし、このままでは自分のwillにある「好奇心ベースで勉強をし続けたい」が満たされません。この目標のままでは微妙です。では、次どうしましょう。
目標を現状の外側におく、たどり着いた「究極の地方中小企業を作る」
この目標をこのままでなく、より高い遠い山の頂に設定し直します(これはコーチングとかで「目標を現状の外側に置く」みたいな言い方をしますね)。
その結果、私の場合は、「地域に根ざす家業の会社の経営を行い、事業を守る」を「家業を究極の地方中小企業に進化させる」としてしっくりきました。具体的に「究極の地方中小企業」にどんな条件かあるか考えみましたらこんな感じで考えてます。
・理念経営を行い、浸透している
・誰かの犠牲の上に成り立つのではない利益を継続的に出し続けられている
・社員のウェルビーイングを追求している
・地域のコミュニティと接続し、ウェルビーイングな状態を波及できている。
・組織の形や仕組みが常に最善を求めて変化し続けており、固定していない。
・世界の大きな課題解決に取り組んでいる
・ワクワクして楽しい、セルフエフィカシーの高いメンバーで構成されている
・現在だけでなく、歴史やストーリーと接続でき、その上で未来を妄想できている。
こんな会社が鹿児島の片田舎にあったら逆に最先端だし社員もプライド持てるし儲かるし、超楽しいですね。自分のwillともいろんな点で接続します。そしてこの目標って、会社で掲げているMVVともその多くが重なるので、会社の方向性と自分自身のwillに基づく目標がしっかり接続された、とも言えると思ってます。
リーダー/経営者の仕事は自分のwillを投影した目標に人を巻き込むこと
自分自身のwillをベースにした目標が設定できたら、あとはその目標達成のために自分より優秀な人に目標を語り、共感を得て、チームを作るのがリーダー/経営者の仕事になります。
今回の自分が本社をシャッター商店街に移すというのは、自分の内面のロジックでは、「究極の中小企業なら当然、地域コミュニティにコミットしてるだろう」という理屈、並びに個人willの「自分の住む半径1キロを楽しくして、同じコミュニティの人に喜んでほしい」から生まれた決定でした。最初の郷土のリーダーには別になりたくない、というのはこの要素は自分の目標やwillにないという意味です。
今回の青年塾では、リーダーになりたいんだったら、自分自身のwillを目一杯投影した、大きな目標を掲げ、それに向かって皆を巻き込みながらムーブを作っていくのが楽しい、という事を伝えられたらいいのかな、と思ってます。それにKOBIRAはまだ全然、究極の会社じゃないので、これからも爆速で進化させていこうと思ってます。