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MVV定義した後に何をする?- 経営計画の前にBenefit (価値)の定義を作るのはオススメ

111年目の老舗商社の第4創業と組織変革

うちは創業で111年目を迎える鹿児島にある商社(エネルギー、IT、貿易)で、自分で4代目になる。ちょうど1年前にミッションを定義するための役員合宿があって、7ヶ月前にミッション、ビジョン、バリューを社内に発表した。その経緯を以前まとめたnoteが以下になる。

そこからも、色んな施策をやってきた。役員1on1の導入、人事組織部の立ち上げと組織的な人材採用(今までは各部署で勝手にやってた)、公式noteによる採用広報の開始、組織状態がわるいチームでのチームビルディング、各部署でのバリューチェックイン(部署会議の時に自分やメンバーのバリューに即した行動を話してもらい、議事録で共有)、ミーティングのやり方も以前の記事からチューニングしているし、社内DX勉強会は昨日で5回目で部署を超えて業務効率化の取り組みも進みつつある。自分とCHROの池田くんとやっている社内YouTubeラジオのコビラジも20回超えた。

コビラジ

一番大きいことは人事制度の全面変更が進んでいること。人事ポリシーを作成、評価/報酬/等級の仕組みを整えて、整備/導入しようとしている(これを今のクオリティで半年で作って導入しようとしているCHROの池田くん最高!)。今までは個人の成績連動だった評価は、チーム評価、個人評価、バリュー評価に変更される。チームの業績評価が報酬に関係するので今月から、全社の月次決算の結果や経営方針を全員に公開するようにもなった。

少しづつ、組織の変化は感じられてきているとともに、当然、急激に変わることによるハレーションもある。辞めた施策もあるし、試行錯誤の日々でもある。

MVVの後に何をする?ベネフィットの定義に関して

MVVを作って発表したのが去年の11月。その際に次の半年何を行うかはいくつかの選択肢があった。一つは「中期経営計画」を作ること。KOBIRA Vison2032のために同具体的な3-5ヵ年の運営のアクションに落としてくかということなんだけど、自分はそもそも中期計画に懐疑的だった。この来年何があるかわからない世界で3年でも5年でも計画作るというのは、無理に思えたし、今までトップダウンの会社だったので、計画をワクワクするビジョンの達成ではなく、ノルマと捉えるメンタリティがうちの会社にはまだある。そこで、ワンクッション置いて、MVVと経営計画の間に連結点を作ることをまずしようとした。それがベネフィットだ。

ベネフィット=benefit(価値)と訳されるが、自分の会社では「顧客への提供価値」と定義としている(最初に知ったのは、クラッソーネHRのミヤッチ師匠のスライドだったと思う。勉強させて頂いてます)。

「バリュー(価値感)を守りながら、ベネフィット(価値)に基づいた価値を顧客に提供することが、ミッションのビジョンの達成につながる。経営計画は、3年間の会社のリソース投資の優先順位の目安を示す。」という関係性で自分は理解している。そこで、まずはベネフィットを作ろうとなった。

ベネフィットを作るには「価値」の構造を理解する

顧客は価値に対してお金を払う。じゃあ、価値ってなんだという話になるだろう。

自分はマーケティングは素人なんだけど、上記の書籍はとても明快で参考になった。書籍の中の「価値」の定義について、かいつまんで説明すると、①価値は「誰に」「何を」提供するか ②価値は「便益性」と「独自性」の組み合わせ、ということ。

例を出すと、①はアルコール飲めない人に美味しいワイン持って行っても価値は生まれないので「誰に」が大事、②はたとえば田舎の食堂だと、「美味しくて量がある」が便益性、「その土地でしか取れない取り立ての山菜」が独自性。便益性は最低限の基準で、独自性があると顧客にとって選ぶ強い理由になるということだ。(②に関してはポーターの競争戦略論にも通じてて、最近、PIVOTで星野リゾートの社長が企業の独自性の出し方を言って他のを思い出した)。

価値の構造から事業のベネフィットの定義を行う

じゃあ、MVVをベースにした価値(ベネフィット)を事業部ごとに定義するプロセスを紹介してみる。

KOBIRAのグローカル事業部のベネフィット 初期

KOBIRAで貿易を行っているグローカル事業部(最近名前を変えた)がある。自分たちが貿易を今やってる価値はなんだっけ?という話をした時に、輸入と輸出をすることで、世界の食卓を豊かにはしてるよね、たとえば冷凍すり身の輸入はしてるけど、それで日本の蒲鉾文化は生き延びてるし(昔ながらに地元の生の魚のすり身を使って作っているところは全体の0.01%以下)、食卓にチクワは並ぶよね、みたいな話になった。

ただ、このベネフィットの問題はWHATのところは同じようなことをやっている業者なんて沢山あって、自分たちの独自性がない、つまり「価値」を発揮できていない、という事だ。

そこで、2層構造にすることで、これからより提供していきたい、独自の価値についても記入することにした。今まではこういう価値を提供してきました、これからはそれに加えて、こういう価値を提供していきます、という文脈になる。

v3.0 のベネフィット案

今の方向は、上の画像の方向。そもそも、貿易っていうのは、今まで価値の対象を消費者側にしか置いてなかったけど、多くは途上国の生産者の人権や環境問題にも配慮していかないといけないよね。そうじゃないと、生産者側も持続性のある形で供給できないし、価値が提供し続けられないよね。だから、自分たちは、生産側の持続性に配慮した商品を責任もって送ることがきる貿易会社になりたいし、そもそも運ぶという行為が環境負荷が高いので、消費国での現地生産を促すサービスも作っていこう、それが便益性 + 独自性のあるKOBIRAのグローカル事業部の価値だよね、という流れだ。上記をベースに文章を作り、練り上げて完成になう(文章作成はGPTさんに最近はお願いしてる)。

ベネフィットの話をすることで顧客の解像度が上がる

今回、自社のベネフィットをバックオフィス系の事業部も含めて全社で話しているだけど、それで良かったのは、作成を通じて、チームの顧客とビジネスの解像度が上がったことだ。

今思うと、MVVから経営計画に行くと、感覚が断絶してしまい、どうしても経営計画では数字の話になってしまう。一度、ベネフィットを挟むことで、経営計画を「顧客への価値を最大化する方針」と「ビジネスを維持するためのリソースの話」にシフトできる。これは経営目線の共有化でもあり、大きなメリットになると思う。

5月中旬に3回目の全社で行うVision Meetingを行う。そこで全事業部のベネフィットが発表され、日々の業務を離れて話す場を設ける。今後もどういうふうに会社が変わっていくのかとても楽しみだ。

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