究極の音楽レビュー「音の文字化」

私のブログでは頻繁に「擬音」が登場します。良質な音楽レビューを書くうえで、演奏やボーカルの音を正確に把握し文字化する能力は「必須」です。これが「音の文字化」

例えば、Official髭男dism『ミックスナッツ』をレビューする記事では

ドゥンッッ!!ギュウウュウウウウウウゥゥゥイウイウゥウィイイイイイイ!!!フォフォフォッフォアアッァァアアアアアアアーーーー!!!!テッレレレッッッッッレレッレッレレレッッレレレレ!!!!!パララララパララパララパララララパッッララッッ!!!!テンテテンテンテンテンテテンテンテンッッッ!!!!デンデンデンデデエエエエエデデデエデデエデ!!!!!ギャギャギャギャギャアアアアアアガヤガガアアアア!!!!デドドッデオッドドッドドオドドドドッッ!!!

謎のオッサン「ヌ゛ァァァアアアアアアアア!!!!!」

ドゥンンン!!デドデドドドデドドエデドエオドドオオオオオ!!!テテッッテテテポアパパラパパパアアペピッペペペペラアッァァアア!!!

藤原聡「袋に詰められたナッツのようなァ…」

音源を聴き比べるとその再現性の高さが分かると思います。ぜひCDやYouTubeで曲を検索して聴いてみて下さい。私はこの一文を書くのに「一週間」休むこと無くこの曲を聴き続けました。何百、何千と視聴を繰り返し、曲と自分を「一体化」させる。そうすることで「音の文字化」が実現するのです。

またボーカルもしかり。別曲『Cry Baby』の2番は

「どうしてェ……!?しくじってェ…!?隠し通してェ…?どうしてェ……!?食らいついてェ…?しくじってェ…?肩落としてェ…?どォォオオオオオオオオオオウしてェェエエエエエエエエエエエエエエエァァァアアアアアアアアアアアン!?!?!?!?!?!?」

デェェエエエエエエエエエエエエン!!!!!!デェェエデェエエエエエエエエエエ〜〜〜〜〜!!!!!デデデェエエエエデデェエエエ〜〜〜〜!!!!!!デェェエデェエエエエエエエエエエ〜〜〜〜〜!!!!!
ギャアアァァァァアアアアアアアンッッッ!!!!!
グチャアアァァァァァッッッッッッッ!!!!
デェェエエエエエエエエエエエエン!!!!!!デェェエデェエエエエエエエエエエ〜〜〜〜〜!!!!!デデデェエエエエデデェエエエ〜〜〜〜!!!!!
ギェェェェエエエエエエエエエエエ!!!!!!フェエエェェェェエエエエエエエンッッッッ!ブリュリュリュリュリュリュリュッッッ!!!!!!デェェエエエエエン!!!!デェェエデェエエエエエエエエエエ〜〜〜〜〜!!!!ギュエエェェェェェェェェエエエエエ!!!!!フェェエンフェェエンュェエエエエエェェェエ!!!!

「あァッ……傘はァ…いらないからァ……」

と、表現しています。
キーの高さからロングトーンの秒数に至るまでを文字化するのですが、この一文は一文字も削ることができません。「秒数×文字数」の法則によって「音の文字化」は成り立っているのです。そして最も大切なことは「〜」で逃げない、ということ。「ここはロングトーンだから「〜」でいいか、という怠惰な考えは「音の文字化」をする上で絶対に禁物です。

「どォォオオオオオオオオオオウしてェェエエエエエエエエエエエエエエエァァァアアアアアアアアアアアン!?!?!?!?!?!?」」

が仮に

「ど〜〜〜して〜〜〜〜〜〜!!!??」

だった場合、ボーカル藤原聡が表現している相手に対する狂気的な愛はまったく伝わってきませんが、前者は「心の機微」を完全再現することに成功しています。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、ピアノ…曲を構成する要素を一つひとつ分解し、正確に文字に起こしていく。これは理屈ではありません。「経験」と「慣れ」、そして「愛」によって生まれます。
決して簡単な作業ではありませんが、トライ・アンド・エラーを繰り返すことで、まるで文字が歌っているような、文字から音が鳴っているような錯覚を起こすブログが完成するのです。

では、練習してみましょう。初級編です。King Gnuの名曲『白日』。あなたはこれをどう文字起こししますか?

「時〜には〜」

これはNGです。

「〜」はポップな曲あれば非常に有効な記号なのですが、これでは曲を聴いたことのない人が読むとあのシリアスな雰囲気は全く伝わらず「あれ?日向坂46の新曲かな?」と思われなねません。白日のような曲では、なるべく使わないように心がけましょう。ここでは「小文字」を使って表現していきます。

「時ィにはァ」

だいぶ良くなりました。一音一音の語尾に注目して、母音を正確に当てはめていきます。ポイントは「ひらがなではなくカタカナを使う」ところです。ひらがなを使うのはかわいい曲だけ」が基本です。

しかし、まだこれでも不十分です。臨場感を100%表現できてはいません。語尾のブレス0.1秒につき小文字1文字を意識して下さい。これを基準にすると、

「時ィィにはァァァ」

これでほぼ完成と言ってもいいのですが、最後にもうひと工夫することで曲の「余韻」を最大限に表現することができます。そのために最も有効なのが「…」です。

「時ィィ…にはァァァ…」

あのボーカル井口理の儚くも美しい声が頭の中で鳴り響いたかと思います。

これを元に続き文字起こしをすると、こうなります。

「時ィィ…にはァァァ…誰かァをォ…知らず知らずのォォ…うちにィ傷つけてしまァッッたりィ…して初めてェ…犯した罪をォォゥ…知ッるゥゥゥ…!戻れないよォ…昔のようにはァ…煌めいてみえェェエたァとォしてもォ……明ィ日ァへとォ…歩き出さなきゃァ…ゆゥゥゥウウきが降りきィィイ…!ろォうともォオオオオオ……!!」

どうですか?どうもこうもありません。本能で音楽を聴き、本能で文字に起こす。これが真の音楽レビューです。


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