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十一本目 『ランデストレーナーのお仕事(1)』

今回のDJMは僕自身の仕事内容についてです。
その仕事は多岐に渡るのでもっと詳しいことは今後何回かに分けてゆっくり書いていきます。

海外の指導者がどのような仕事をしているのか、また海外で指導者になるにはどのような能力が求められているのか、「将来海外で指導をしてみたい!」という方の参考になれば幸いです。

ついでに自分のするべき仕事を再確認するためにこの記事を書いています。笑

それでは参りましょう!「はじめ!」

Landestrainer(ランデストレーナー)とは何ぞや?

まずそもそも「ランデストレーナーって何?」という話なんですが、これはドイツのそれぞれの連邦州に属する選手達を指揮する指導者のことです。

ドイツには16の連邦州があり、それぞれの州にU15/U18/U21/U23/シニアの各年代の男女それぞれに指導者としてランデストレーナーが配属されています。

僕が所属するNordrhein-Westfalen(ノルトライン・ヴェストファーレン)州はドイツ国内でもっとも人口の多い連邦州で、およそ175万人が住んでいるそうです。

このNordrhein-Westfalen州(以下NRW州)でLandeskader(州選抜選手)に対して柔道の指導や大会・合宿の引率をすることが僕の主な仕事となります。

しかしそのランデストレーナーの仕事はなにも柔道の練習や大会に限ったものではなく多岐に渡ります。

後ほどその仕事内容の話もしていきますが、その前にドイツの柔道界の大まかな組織図を解説していきます。

ドイツ柔道界の役職

さきほどは僕の役職であるランデストレーナーのポジションついて書きましたが、もちろん他にも異なった指導者としてのポストがあります。

まずはトップにいるのがドイツのナショナルコーチであるBundestrainer(ブンデストレーナー)。国際大会のコーチボックスでよく見かける人達です。ナショナルチームの選手の指導や大会・合宿の引率をしています。

そしてその下にいるのがBundesstützpunkttrainer(ブンデスシュトゥッツプンクトトレーナー)というナショナルトレーニングセンターコーチです。ドイツ全土にある各ナショナルトレーニングセンターに配属された専属の指導者です。各トレーニングセンターを拠点としているナショナルチームの選手の指導をしています。

ちなみにNRW州内ではケルンにナショナルトレーニングセンターがあり、僕も主にそこで州選抜選手の指導をしています。

そしてその下に位置するのが僕の役職であるLandestrainerになります。NRW州内にあるLandesstützpunkt(連邦州トレーニングセンター)で柔道の指導をするのが仕事になります。NRW州にはいくつかこの連邦州トレーニングセンターがあり、その中でも州の南側のデュッセルドルフとケルンで仕事をしています。ケルンの連邦州トレーニングセンターはナショナルトレーニングセンターも兼ねている施設なのでそこで仕事をしているというわけです。

そしてその下に位置するのがBezirkstrainer(ベツァークストレーナー)という県代表トレーナーです。NRW州はデュッセルドルフ・ケルン・ミュンスター・アーンスベルグ・デトモルトの5つの県に分けられていて、その各県の選抜選手を指導するトレーナーです。ただし他の役職がU15/U18/U21/U23/シニアの各年代に割り当てられているのに対して、この役職はU15の年代にだけ割り当てられた役職になります。
*U15のBundeskader(ナショナル選抜選手)制度はありません。

ちなみに僕も2019年2〜8月までデュッセルドルフのBezirkstrainerとして仕事をしていました。この頃には柔道の指導の他に、才能ある選手を発掘するための多面的スポーツ能力テストのオーガナイズをしたり、県の代表選手を連れてドイツ国内やオランダの国際大会の引率などをしていました。

そして柔道界の基盤を担っているのがVereinstrainer(フェアアインストレーナー)というそれぞれのクラブチームの指導者達になります。僕自身ランデストレーナーという役職ではありますが、JC71 Düsseldorfというクラブチームの指導者でもありますのでここにも属しています。

以上がドイツの柔道界のおおまかなトレーナー組織図になります。

仕事内容

それでは組織図が頭に入ったところで具体的に僕がランデストレーナーとしてどのような仕事をしているのかに話題を移したいと思います。

とりあえず仕事内容を思いつくままざっと箇条書きにしていきます。

-> デュッセルドルフ/ケルンでのジュニア女子NRW州選抜選手への柔道指導
-> ジュニア女子NRW州選抜選手のトレーニング・大会・合宿プラン作成(年間・月間・週間)
->大会・合宿の年間予算編成
->大会・合宿のオーガナイズ(参加申し込み・宿泊施設・交通手段)*基本バス運転
->国内・国際大会及び合宿の引率
->NRW州大会の視察
->選抜選手の選定
->NRW州で年に数回開催される若手柔道家向けセミナーの講師
->ナショナルチーム強化合宿の補助トレーナー

などなど他にも細かい仕事が山ほどあります。

ただこの1年間はコロナの影響でロックダウンもあり、オンライントレーニングや柔道の技術理論のオンライン授業などイレギュラーな仕事もやっていました。毎回授業の資料・原稿作成に時間を割かれ死にそうでした。

けっきょく言語能力

考えてみると、なにがきついってやっぱりドイツ語で全てを行うっていうのが一番難しいんだと思います。結局何をするにも海外ではまず言語力がものを言うところはあります。なのでとりあえず英語は自分でしっかり勉強することを強くおすすめします。

ユーロ圏の言語は英語とも共通する部分が日本語よりは圧倒的に多いので英語ができれば他の言語も効率よく習得できる気がします。

と言ってますが僕は英語あんまりできません。というかこっちで勉強してません。しようしようとは思っていますが…頑張ります。

でも海外行くなら絶対必要なのである程度勉強して使えるようになってから来ることをおすすめします。今は海外の人とも簡単につながれるので!

NPO法人のjudo 3.0では海外のクラブチームや指導者の方々と頻繁にやりとりしているのでこういったコミュニティを利用するのは大いにありです!

英語の勉強と言っても、英単語や英文法をたくさん読み書きできても、実際に話せるのと聞き取れるのはまた別の脳の領域がやることなのでどちらも練習しておいてください。

ドイツ生活が長いせいか、英語は上手く話せませんが単語知らなくてもある程度なんとなくの理解はできる気がします。

今後絶対に必要な能力なので僕も少しずつ英語勉強します。一緒に頑張りましょう。

Landestrainerをやってみて思うところ

正直この仕事を始める前には柔道を教えて大会に連れていくのが仕事としか思ってなかったのですが、蓋を開けてみれば柔道の練習や大会以外のことに割く時間がかなり多いです。

なによりオーガナイズや計画を立てることに割く時間が多いので慣れるまでは地獄のように忙しい感覚がありました。なにより知らないこと、やったことのないことが多かったですし、「これ全部一人でやんの?」ってブルブル震えてました。笑

今でも特にまだプランニングは勉強中で改善すべき点が多いので、少しずつ勉強と実践を繰り返しながら何が最適かを模索中です。

特に僕自身は大学で柔道に打ち込んでいなかったこともあるのか、自分の教える柔道というものにまだまだ自信を持てていませんし、とにかく練習前・講習前はいつも不安で死にそうになります。

何か不備があったらどうしようとか、うまく伝わるかとか考えて無駄に悩んでしまうタイプです。とにかくなるべくぶっつけ本番を避けるためにやり過ぎなくらい準備をしてしまっている気がしますが、それぐらいしないと他の指導者や選手に認めてもらえないと自戒の意味も込めて普段の仕事に打ち込んでいます。

というか失敗している自分を見せたくないただの自意識過剰な人間なんだと自分のことを認識しています。

ちょっと柔道ができるだけで踏み込む世界じゃなかったかもしれないと後悔しそうになることもありますが、今は少しずつですが他の指導者の方々からも声をかけてもらえ、認知してもらえている実感はあるので仕事のやりがいはとても感じています。

これまで考えることを放棄したことで、幾度となく指導者として挫折を味わってもきましたが、おかげでたくさんの経験も積むことができました。なので今後も失敗は恐れると思いますが失敗しても思考を停止させず改善のための努力していきたいと思います。

今回もご高覧いただきありがとうございました。
それまで。ではまた。

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