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二日で作れる入門炉!小型移動式鋳造炉製作レシピ&オーダーフォーム(仮)

鋳造炉の入門炉を開発しました!
誰でも作れると思うので、製作方法を公開します。
とはいえ、丁寧にやれば、環境があれば、とか、なにより失敗を楽しめれば、などの時間による条件があるような気もするので、販売もします。

作り方は、後述するとして、販売は、3万円でどうでしょう?これは、開発段階のものを使ってみてくれる人向けの価格です。製品と呼べるディテールへは、まだ詰め切れていません。作りながら詰めていきたいので、使ってくれる人に買ってもらいたい。カンパも受け付けます。
丁寧に、環境のある、そして既にいくつかの失敗の経験をもっている大玉村の複数人が作るので、お値打ち価格ではあると思います。オーダーフォームは、今のところラーメン屋くらいのもので、かため、ふつう、やわらかめ、くらいの希望を聞きます。半年で20個くらい、作れたら嬉しいです。販売の話は、とりあえず以上です。

では、作り方!

鋳造炉は要りませんか〜
小型移動式の入門炉!薪炭、コークス燃料鋳造炉はいかがですか〜
真鍮はもちろん銅も溶かす千度くらいの鋳造炉。鉄は厳しそうな鋳造炉
地質に興味、共感でますよー。化石燃料の凄さを目の当たりにできますよー
800度こすと、独特な温度体験、鼓膜が集中する感じになりますよー

と、ツイートしたら、ものの数時間で一件の、”ほしいっす”の返信を頂き、やおら、応える気になったんです。

売るにしても、作り方公開した方が、いろんな話聞けるなと思いました。なるたけ詳細に、作り方や、開発の方針など書いてみようと思います。作ってみた人は、レビュー寄せてくだされ。

まず、何がすごいって、躯体になる缶!ペール缶。

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これが、うまく重なるようにできていて、炉を作る際に必要になる空間に絶妙にマッチしているんです。そして、ペール缶は、自動車のエンジンオイルの空き缶としてガソリンスタンドでもらうことも出来ます。

なにが、絶妙かというと、そもそも、この鋳造炉は、コークス燃料でルツボ内の金属を溶かすことを目的としています。その目的を達するには、コークスに火をつけなければいけないのですが、これが、なかなか火が付きにくい。それを、ブロワーなどの電力を使わずに、少しの木や竹で火をつけられたらいいなという方針で炉を考えたときに、コークスが入っている空間の下に、もう一つ火を焚ける空間があるといいんです。それが、ペール缶二段積みすると、すでに、その空間ができている。下段は写真に見えるように、少し焚き口を切るだけで加工が終わります。

あとは、上段のペール缶の加工と、ふたです。

工程としては、
1,上段のペール缶の中の、ルツボとコークスが入る型枠、給気の型枠
1’,ふたの型枠
2,打設
3,養生
4,脱型
5,焼き入れ

ここで、耐火コンクリートの打設が出てきます。正直ここが大変なところでもあり、楽しいところでもあります。

そんな面倒なことしなくても、と、コークスを直接ペール缶に入れて焚くと、すぐに缶が、ぼろぼろになってしまいますし、容積が大きすぎて、入門炉としても、いいことがありません。熱いとかも。

耐火コンクリート、使ったことあるのは「アサヒキャスター13T」です。これが、25㎏で5000円くらいするんで、失敗したくない気になったり、なかなか手が出ないってなったりする。普通のセメントの10倍くらいの金額で、セメント自体がコンクリート10倍くらいの値段だから、普通のコンクリートの100倍くらい高い。今回紹介する入門炉は、アサヒキャスター25㎏一袋で、ちょうど作れました。

コンクリートをつくることを打設(だせつ)といいます。

マニュアルに忠実に、打設すればよいのですが、一気に練ってしまうと、「打設完了まで30分程度が望ましい」という条件を満たせなくなるので、一昨日は、3㎏くらいずつ練りました。カップヌードルBIGの空容器があって、それにスリきりでアサヒキャスターが950g入って、それを3杯。空いたペットボトル500mlがあって、それにスリきりで水550ml。それを1杯入れると水分量の下限値にだいたい一致したので、その様に計量しました。

水分量は厳密に練り混ぜした方がいいのですが、打設スピードなども考えると、アサヒキャスター3杯に水1杯、程度の数字の把握のほうが大きな間違いがなくていいと感じます。人それぞれでしょうが。

コンクリート強度は、水分量と、打ち込まれたコンクリートの密度によります。計量をちゃんとやれば、水分量はOKなので、次は密度高く打ち込む(打設する)ことです。ここで、型枠の話が始まります。

あー面倒だなって、なってないか心配です。一緒に作れればいいのですが、次はなるたけ、映像を撮っておくようにします。注文があれば、。

1,ルツボとコークスが入るところの型枠

型枠を作るのは、流動体であるコンクリートが、硬化するまでの時間、かたちを保つためです。型枠で作る形は、ルツボとコークスが入る空間、そして、そこに空気などが通れる道(給気口)です。

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今回は、750mlのルツボを想定して、直径20㎝くらいの円筒の型枠を作ることにしました。円筒は難しいので8角形にしました。ペール缶が、バケツのように上に行くほど少し広がっているので、8角形も上の面を少し大きくしました。これに所定の高さを決めて、木を立て、面を張っていくのですが、面を正確に計算するのは難しいし、施工精度が悪いと、せっかく正確に面を作ってもうまく張れないので、適当に切って、2枚重ね合わせるようにしたら、簡単に張れました。ちょっと、うまく説明できていませんが、写真をめちゃみれば、分かるかも。です。こんな具合に型枠つくりは、工夫の余地がいろいろあります。最初の段落で言った、ラーメン屋の注文の、かため、ふつう、やわらかめなどは、この型枠の形として反映されます。入門炉の注文なので、ルツボのサイズとか、耐久性、安全性、軽量性など、何を重視するかを教えてくれるといいですね。

1,の続き 給気口の型枠

給気とは、燃料に空気を送ることを言います。それが、一次給気、二次給気とかあるのですが、この辺は、知りたければ調べれば多くの情報が手に入ります。ま、やりながら穴開けてけばいいとも思うのですが、今回は底面と、側面にあらかじめ穴を開けておく型枠をつくることにしました。

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この写真は、上段のペール缶の底面で、下段のペール缶で焚いた火が上段ペール缶に入るコークスに火をつける通り道になります。気分としては一次給気口です。普段カセットボンベを燃料にして炊事して暮らしているので、そのキャップをためておいたのをいつか使ってやろうと思っていて、ここで使いました。脱型を考えると、ちょっと角度が付いていて、すべすべしていて、なかなか型枠向きな一品でした。

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写真は打設中のものですが、二次給気口は、ルツボとコークスが入る空間に斜めに入っていくと、火が冷めなくていいなとおもって、とりあえず二か所付けときました。ホースのきれっぱしがあったので、それを斜めに切って作りました。給気機能として、よさそうなら、二つと言わず、もっと増やしてもいいと思っています。場所が半端な位置にあって、打設の時厄介だと思い、今回は二つにしました。一次給気口は、コークスが燃え尽き、徐々に埋まっていくので、二次給気口があるのは結構重要です。それを二次と呼んでいいかちょっと疑問なのですが、まあ、二次としましょう。

1’,ふたの型枠

ふたは、以前ヒビがいったことがあったので、動かすし、結構難所だなと思っていたので、溶接ができる大玉村の建築家、佐藤研吾さんに、ふたの鉄筋を作ってもらいました。

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ふたの中の空間には、ちょうど、ラーメンを電子レンジで作る容器みたいのがあったので、電子レンジでラーメンつくらんしと思って、型枠にしました。結構ぴったりでした。

2,打設

やっと打設だよ。水分量の説明してから長かったけど、ラーメンで戻ってきた気がする。打設は、いろいろな形の型枠がよい配置になるように気を使いながらやるので、そんなに一気には進めないと思います。このへんの塩梅は、レシピに書きづらいところ。そう言わず、書いてみるか。

底面の、カセットボンベのキャップがちょうど埋まるくらいまで、アサヒキャスターを打ち込み、次に8角形の型枠を置きます。そして、その8角形の型枠の周りに、アサヒキャスターを入れていき、その際、二次給気のための、ホースのきれっぱしの位置がずれないように気を使います。そして、打設で何より意識すべきなのは、密度なので、トントンと叩いたりつついたりして打ち込んでいきます。アサヒキャスターの水は、後ぎきするので、叩いているとうまく入っていきます。8角形の型枠が埋まるころ、ビニールでふたとの境界を仕切り、ふたの型枠と溶接した配筋を据え付け、今度は、粘土を押し付けるように打設していきます。ここで、形として一気に手仕事風になってしまったので、ペール缶のふたを切って、もう少し規格感を出した形に挑戦してみたいです。

そして、煙突が二つの径のものがたまたまあったので、据えてみたらなんだか様になりました。

3,養生

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打設が終わると、大切なのは養生です。水分量は厳密に下限値をねらって打ったので、水分を逃がさぬよう、ビニールや何かで包みます。この日は、水が氷る程度の外気温だったため、服を着せてやり、部屋ではストーブをたいてやりました。アサヒキャスターは、結構発熱するので、ストーブは不要だったかもしれません。

アサヒキャスターの養生はなんと24時間です。一般的なコンクリート養生は2週間以上とされているので、いかに異質なコンクリートであるかがうかがい知れます。なので、型枠つくりから打設までを半日で終えたので、翌日完成を迎えることが出来ました。

4,脱型

脱型は、いつも誰がこの型枠つくったんじゃーと昨日の自分に声を掛けます。結構な失敗もあります。それを大玉村の大工さんに言ったら「失敗が百万ドルなんだぁ。成功なんてまぐれだ」といってくれて、元気出ました。

型枠が外れないって思うことがありますが、何か手はあるし、得るものはあるので、根気よく向き合うしかないのかなぁ。もしくは、型枠を十分に考える。その往復で、だんだん良くなっていく部分もあります。

5,焼き入れ

アサヒキャスターのマニュアルには、打設後、1週間以内に焼き入れするようにと書いてあって、へーっと思いました。読んだつもりが全然読んでなかった。まあ、焼き入れは楽しいです。湿気た炉なので、なかなか火は付きませんが、ゆっくり温度を上げるのが肝要なので、急がずに火を焚き、その気になれば、コークスに火を移してもいいと思います。最初なので、そんなにたくさんのコークスはいれず、一掴みか二掴み程度今回は燃やしました。

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無事にコークスに火が付くと、ああ、この入門炉は、実用にこれから入っていくんだなと一安心です。

おそらく、まだまだ、鋳造における使いやすさを追求した形など出てくると思いますが、それもまたたのしみということで。

今日は、この二日で出来る入門炉の製作レシピを拙いながら、書いてみました。

ふいごで、鋳造したいという二組の作家からの依頼を、形にしたのが今日紹介した入門炉です。燃費がいいといいなとか、簡易でとか、いろいろなことを盛り込んでいったら、小型で移動出来て、結果、安全を選べるものが出来つつあります。

気になる鉱物を溶かしてみたり、液体の金属の重さを感じてみたり、鋳造の魅力はなかなかのものだと思います。是非、多くの方のあの手この手を聞いてみたいと思っています。

また、災害時の備えとして、炉を作ったり、使ったりすることはとても有用だと思います。そんな、小さな防災拠点に、入門炉がなったら、望外の幸せです。

震災から11年目に、ものを作っていれたということは、ありがたいなぁと思いました。一緒に作っていた人と、これもっと作りたいな。出来れば、少しのお金もらってさと話していたのが始まりです。

化石燃料の使用を減らして、というのが時流ですが、化石燃料を燃やすシステムを作ると、その高密度な凄さを実感できます。減らすためにも、どんなものなのか、知ってみるのは、さわりとしてもいいのではないでしょうか?

最後に、木登りをすると耳がよくなる経験があって、鋳造も独特な身体感覚がありました。簡単に言ってしまえば、非日常の危機に際しての応答なのでしょうが、計画して行えば面白い集中力を引き出せます。算数と編み物など、連続するはずモノがばらばらになっている、教育システムをまくるにも、炉に入門してみるのもいいとおもいますよ。と一押しして。製作レシピの第一稿を締めくくりたいと思います。

では、よい炉を!

はやしごうへい
2022/3/12 於:地下1蟻鱒鳶ル

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