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漫才「告白の練習」

漫才『告白の練習』
ツ→女 ボ→男

ツ「どうも~」
(入ってくる)
ボ「お願いします~」
ツ「まあね、今日も頑張って漫才して
  いきますけども」
ツ「あの~、いま私気になっている人が
  いまして」
ボ「はい」
ツ「ちょっと告白の練習したいからさ、
  彼の役やってよ」
ボ「エッ!いいんですか…!?」
ツ「…なにが?」
ボ「だって今告白したら彼への初めての告白を
  奪っちゃうわけでしょ?」
ボ「それ実質不倫では?」
ツ「重っ!いやそこまで深く考えてないよ…」
ボ「でも今やったら本番で『漫才で
  出たところだ…!』とかならない?」
ツ「そんな進研ゼミみたいにならないから
  平気だよ…」
ボ「しかしィ~!」
ツ「しかしィ~じゃなくて」
ボ「ちなみにさ、その彼名前なんて言うの?」
ツ「彼ですか?…えっと、ゆうきくん、
  って言います」
ボ「大体そうだろ!」
ツ「大体そうではなくない!?」
ボ「おま、『ゆうき、ゆうや、ゆうや』以外の
  やつが女と付き合えるわけないだろ!」
ツ「偏見の塊!…って、ちなみにあなた
  下の名前なんでしたっけ?」
ボ「僕ですか?ヨシノブって言います」
ツ「絶対付き合えない名前じゃん!」
ボ「…(堂々と立っている)」
ツ「かすりもしてない」
ボ「…(堂々と立っている)」
ツ「無敵ぃ!?結構きついこと言ったはず
  なのに…」
ボ「いィ~ん…(目を袖で隠し泣く)」
ツ「ダメだった!ダメージしっかりあった!
  ごめんごめんごめん…」
ボ「いィ~ん……ロレックス!(袖をまくる)」
ツ「…まあ大丈夫そうなら話進めますけど」
ボ「オウやったれやったれ!」
ツ「ちなみに告白の予定は来週の土曜ですよ」
ボ「なあ、来週の土曜ってさ…」
ツ「はい」
ボ「興奮するよな…」
ツ「特殊な人!しないよ…」
ボ「だって今週の次だぜ?」
ツ「だぜ?じゃなくて」
ボ「しかも金曜の次の土曜って…」
ボ「…あっ金曜って言っちゃダメなやつか!
 (口の代わりに目を隠すが、隠れていない)」
ツ「いや金曜は放送禁止用語じゃないし
  それ目隠すときのやつだし隠れてないし!」
ボ「というか女の子から告白って珍しいよね、
  なんでなの?」
ツ「切り替え早っ!いやいいじゃないですか
  女の子が告白しても」
ボ「いやでも、やっぱ男から告白したほうが
  いいと思うんだよね」
ボ「体毛濃いし」
ツ「まったく関係なくない?」
ボ「だから、間をとって二人とも告白しよう」
ツ「ああいいね、実は両思いでしたみたいな」
ボ「じゃあ、俺が『あ・し・ま』やるから、
  お前『い・て・す』やって」
ツ「え?」
ボ「いや、だから俺が『あ』と『し』と
 『ま』っていうから、順番に
 『い』と『て』と『す』を言ってくの、
  いくぞ?」
ツ「えっ…?」
ボ「あ」
ツ「い」
ボ「し」
ツ「て」
ボ「ま」
ツ「す」
両「「あいしてます」」
ボ「うおぉぉぉ!!」
ツ「いや頭柔らかくなるわ!逆の立場で考えて、
  それやられて嬉しい?」
ボ「じゃあそれさ、逆の立場の逆の立場になって
  考えてみ?」
ボ「僕たちは正位置と逆位置、
  どちらを指しているんでしょうか…」
ツ「タロットか!…えっと、逆の逆だから…
  正位置ですか?」
ボ「いや俺セイイチじゃなくて、
  ヨシノブっていいます」
ツ「それ言いたいだけじゃん!」
ツ「あ~あ、ほんとはあなたに
  告白するつもりだったのにな!」
ボ「…えっ、それって…」
ツ「だから『ゆうき君』なんて偽名も
  使ったのにな…」
ボ「…いィ~ん…(また目を袖で隠し泣く)」
ツ「いやそれ悲しいのかよ!もういいよ」
ツ「どうもありがとうございました」
ボ「いィ~ん……タグホイヤー!(袖をまくる)」

おわり

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