サークル新歓~田舎芋男激闘記~

四月は出会いの季節

大学生にとっての出会いというのは

サークルの新歓

これ一本に尽きますよね

これ以外で誰かに出会うことは不可能とすら言われています。

大学生における絶対的な登竜門

新歓について本日は書き連ねます。

私は基本的に大人数でいることが苦手です。

中学校。。。

高校に上がった時にはこの大人数苦手病には気づいていました。

理由を聞かれたら明確なことは言えないんですが

なんかこう2,3人の心地よさがベストなんですよね。

そのベストを超えてこないです。。。

ワガママなんです

常にベストの楽しさじゃないと嫌なんです。

そんな僕なので

サークルの新歓。

親に怒られるまで行きませんでした。

もう授業以外ずっと部屋にいたんです。

昼過ぎまで寝て

カップ麺食べて

ゲームして

夕飯友達と食べて

また昼過ぎまで寝る

休日はこんな感じでした。

「新歓いかん?」

誘ってくれる友達はいました

「あー、ちょっと待ってね。なんかあったかな~その日」

とか何とか言ってやんわり断っていました。

加えてサークルを楽しんでいる方々と基本的にノリ的な部分で合わないと思い込んでいたので

なかなか新歓に行こうとも思えませんでした。

しかし連日のように母親から

「サークル活動はまだか?」

「友達はできたか?」

こんな質問ばかり来る毎日。

そりゃそうだ

高い学費を払って送り出した大学にて

存分に大学でしか味わえない活動を堪能してほしい

そう思うのが妥当だろう。

そんな圧に負けて私はサークルの新歓・お花見へと足を運んだ。

まさかそこが地獄のお花見

桜ではなく彼岸花をみるようなお花見をすることになるとは。。。

集合時間の少し前に駅に着く。

兵庫県では名の知れた川沿いのお花見スポット。

下車し、集合場所へ向かう

いない。

人っ子一人いない。

どうして?

しかしこの時私の頭によぎったのは戸惑いや驚きではない

ましてや集合場所に人がいないことに対する悲しみでもない

「これを言い訳に今日は帰れる」

こんな後ろ向きな思考の元、集合場所付近を少しだけ歩いてみた。


いた


いた。

普通に人がいた。

掲げてた。

そのサークル名と「お花見」という文字が書いてある紙を掲げてた。


「いたよ。。。」


このまま見つからずに帰れるという微かな希望は消え失せた


「お?お花見な感じ?!」


「やべぇ」

心の声がもれていないか不安になった。

ってか漏れてた

やべぇって言っちゃった。たぶん


「あ、はい。」


そう返事すると


「あー、さっきみんなで出発しちゃったんだよね。
どーしよかな~」


どうやらもうすでに新入生を含めたサークルのお花見集団は

私の一足先に現場へ向かったらしい。


「ごめーん!遅れちゃった!」

入学してからひたすらに曇り続けていた私の心が

一気に晴れ渡るような

そんな声が聞こえた


振り向くとそこには


女性二人。


四回生の女性二人

「美しい!!!」


私の胸は躍った!!


三つ離れているだけでこうも違うのか?!


少し


少しだけ

お花見楽しみになった瞬間だった!!!!



サークルの新歓お花見に参加することを決意した私。

とりあえず集合場所に行ってみたがそこには男の先輩2人しかいなかった。

そんな私と二人ほどの男性のサークルの先輩しかいない集合場所に来たのは

何度見しても飽きないほどの美女!!!!

女先輩「ごっめーん!遅れちゃった!」

男先輩「ちょっと~、四回生だからって遅れていいわけじゃないですよ~」

女先輩「ごめんって~、お?一回生?」

男先輩「あっ、ちょうどよかった!この子を会場まで連れて行ってあげてくださいよ」

女先輩「いいよ~」

はいっ

神展開

きた。楽しい。

この人を独り占め?

こんなことある?


「●〇って言います!よろしくね」

可愛い。というかもう色気がえげつないことになっている。


四回生と言うこともありもう手慣れた感じで話しかけてくる。


あれやこれやと話題を振ってくる

会場までは歩いて10分から15分ほどらしい。

この時間が永遠に続け

強く願った。

しかし


話題を振られてばかりで少し情けなくなってきた自分もいた。

気を遣わせている。

そう思えるくらいに質問攻めだ。


よし!ここはひとつ。俺からも質問しよう。

純粋にその人に興味があったから、質問もすぐに浮かんだ。

「●○さんは何学部なんd」

「かんくんは他のサークr」


かぶった


最悪だ。

被ってしまった。


一番気まずいやつ。

痛恨のミス


美女の顔が微かに曇った気がした。

気のせいかな?

でも少し

「ん?」

みたいな空気になったことは確実。


自分の中で猛省する中、

さすがは四回生

すぐに巻き返して再び美女から私への質問攻めゾーンへ舞い戻った。

しかしきれいだ。


本当にアナウンサーになれるくらいの美女。

品があるのだ。

品がありながらもこれだけのコミュニケーション能力を有しているところに

若干のエロスを感じる。

スタイルも抜群。

暖かい気候にぴったりな薄めのカーディガンから垣間見える白い肌。


脚線美が際立つタイトな白パンも彼女の色気を際立たせる


そしてなにより距離が近い。

高校上がってすぐのチェリーボーイには到底興奮不可避な距離感。


官能的な香り、時々当たる身体と身体、色気香る声

私のチェリーがブロッサムしてしまうのも時間の問題だ。


煩悩に苛まれる私の耳に


「おーーい!!遅いよ!!」


野太い声がこだまする。

エロい夢見てるときに母親に起こされた時と寸分変わらぬ気分。

「ごっめーん!」


着いてしまった。


ついに着いてしまった。

見渡してみると桜の木の下には大学生がうじゃうじゃいた。

少し予感はしていた。


でもその予感は外れてくれなかった。

女の先輩との二人きりの道中。
これがこの日のピークになりそうという予感が。。。


色気を解き放つ先輩と歩くこと15分

ついに大学生の巣窟と化したお花見会場に到着した。

数多の桜の木の下にはブルーシートが敷き詰められ

その上には明らかにキャパ数を超えた人数の大学生が鎮座していた。

顔を真っ赤にして酒を飲む者

大笑いして転げる者

肩を組み歌を歌う者

どさくさに紛れて男女の触れ合いを求めあう者

そして酒にやられて寝ている者

カオスッ

帰りたい

この中で楽しめる気がしない

この地獄に入るメリットが感じられない

受付に呼び出される

「あだ名は?」

「かんです」

「いやそれ名前じゃんwwww」

初めて「w」を可視化した

「かんって呼ばれます」

「いやそれじゃつまんねぇじゃん」

つまらない

サークル内のガヤで愛想笑いを勝ち取り、下手な芸人より面白いんじゃね?とか勘違いしている、

口癖は まあ大学生だからねっ。 後輩女子のツイッターにリプを送りまくり

キャラが濃いとかいう誰にでも当てはまるキャッチコピーの獲得に歓喜する

この陽キャかぶれに

つまらないと言われた。

俺の表情は曇ってないかだけが心配だった。

結局「かんちゃん」という呼ばれ慣れたあだ名をつけられ桜の下へいざなわれる

数ある島の中でも少し人数が少なめの島へ誘致された

「じゃっ、新しい子も来たことだしもう一回自己紹介しようか!」

少しふくよかな女性が取り仕切る

みんなの前ではお笑い担当、とにかく明るくて笑顔を絶やさない

しかし一転SNSは病みだらけ

他人の揉め事に首を突っ込み当事者よりも感情的になるタイプ

そんな女性が指名した子から時計回りに自己紹介が始まる。

私の番が回ってくる

一発かましてやろう

そんな気持ちは毛頭ない

しかし淡泊すぎるのも印象が悪い

ちょうどいいラインを見つけたい

「静岡県から来ましt」

「おっす!」

ん?

少年が私達の島に上陸した

そう。

これが地獄のお花見を盛り上げるメインイベント。

彼こそが地獄のグレーテストショーマンなのだ。

サークルの新歓というモノ初めて参加した私は

次々に襲い掛かるサークルの魔人たちに翻弄されながらも

ようやくお花見をスタートさせようかとしていた。

そこに突如として現れた謎の男。

その男は無言でトランプを取り出した。

円になってブルーシートに座っている私達の円の真ん中に躍り出てトランプを取り出した。

軽快にトランプをきりながら

ジロジロと私達の顔を眺める

そして私の顔をしばらく眺め

「好きなタイミングでストップって言って」

そう吐き捨てた

トランプを右手を高く掲げ左手を受け皿のようにして一枚ずつ落とす

おそらく僕がストップって言ったタイミングのカードを当てる的なマジックだろう

パラパラパラ

右手から左手へ次々とトランプが落下していく

急にストップと言えと言われてもそんなことに対応できるわけもなく

全てのカードが落ちきってしまった

「ちょっと!!マジック見たことない?ストップ言ってもらわないと!!」

怒られた

まだ名前も知らないこの男に。。。

「じゃあいいや、この中から一枚カード選んで」

五枚ほどトランプをさし出された

「ちょっと選べないです」

そりゃそうだ。名前も知らない、円を囲ってみんなで和気藹々と

自己紹介をしあっていたその中に割って入ってくる男のトランプを選ぶことなんてできるわけがない

「こらw」

隣の先輩に突っ込まれてさすがにトランプを一枚選ぶ

そのトランプの柄とナンバーを覚えるように強要される

覚える

またトランプを切る

私が選んだカードを当てる

拍手が起きる

「セロでーす」

なんか言った。

そして満足気にまた他の島へ移動していった。。

なんだこれは

隣の先輩に急いで説明を求める

どうやら彼は自分で自分をセロと名乗る新入生らしい

あの胸に貼ってあったガムテープに書いてあった「セロ」という文字は自分で書いたのか。。。

もうすでに三回ほど新歓に来ているので先輩方にも認知されているようだ。

とりあえずここで一つのことが決した。

「このサークルは絶対に入らない」

こんなにも勇猛果敢なグレーテストショーマンがのさばっているサークルで

生きていく自信がない

もちろんそんな意図はなかったが

どうやら先ほどの私の態度を彼はあまり面白く思わなかったようだ。

それから15分ほど経過した

「帰ろう」

決心はとうの昔についていた

受付の時点で帰りたさはキャパオーバーしていた

タイミングを見計らっていた

そして時は満ちた

みんなが席替えするタイミングで例の綺麗な四回生に

「ちょっと帰ります」

そう伝えた

ちょっとってなんだよ。

自分で自分に突っ込んだ

「もう?!なんか次予定あるの?」

「ちょっと家に帰らなきゃで。。。」

嘘はついていない

本当に家に帰るのだから

そして寝るのだ

そっか。。そう言った四回生の女性から飛び出した言葉に私の黒目は

ハート形になって飛び出した(よくサンジがなるやつ)

「ライン交換しよ?」


初めて参加したサークル活動。

あまりにも肌に合わないため足早に帰ろうとした私に

綺麗な四回生の先輩が放った言葉は

おだやかではいられない言葉だった。

「ライン交換しない?」

耳は確かか?

ライン交換しない?に聞き間違えそうな言葉を急いで探した

だってこんな綺麗な女性、しかも年上の女性から


こんな高校上がったばかり

静岡の片田舎から出てきて、未だにワックスの付け方も心得てないワキガゴリラ

服の組み合わせもひっちゃかめっちゃか

そんな下痢未満の男に


こんなにも美しい女性がラインの交換を求めている。


「夢?」


私は天に問いかけた。

「夢jじゃないよ」

天が受け答えをした

気持ち低めの声だった。


「あ、はいっ」


数秒遅れて女性に返事する

QRコードを読み込む

アイコンは女性の顔。

これだけ整った顔をしているのだ。

納得のアイコン。

「これからもよろしくね!」

彼女はそう言ってサークルの輪の中に入っていった。


「あの人の事、好きだな」

もう私の頭の中はあの人のことでパンパンだった。

頭皮がはち切れそうだった

なんとか頭皮が破けないようにそーっと家路についた

家に帰る。

ベッドに飛び込む。

足をばたつかせる

息が止まるくらい顔をベッドにうずめる

こんなもんなのか?大学ってこーゆーところなのか?


夕飯時になってもお腹なんか減るわけない

もうあの人のことでいっぱいいっぱいなのだから

ケータイを見る

女性のアイコンをひたすら見る

ホーム画像を見る

大人数で写っている写真だ

あの人どこにいるかなあ

血眼で探す

見つける
やっぱきれいだ


もう2,3時間こんなことしかしていない


そんなことをしているとき

ケータイの上部にメッセージが表示される。

女性からだ。


ん?


「あっちからくる?!」

うそしょ?待ってくれよこんな展開ある?


今でも覚えている


「一緒に歩いるとき、楽しかったよ」

火力えぐスギィィィィィィ


一時間ほどして返信する


がっついてると思われたくなくて。


返信してからケータイを敢えて自分から遠ざける
少ししたら恐る恐るケータイを開く
返信が来ていないことに変な安心を覚える


この無限ループが始まった

2、3回ほどやりとりをした後に

彼女から送られてきたラインに私は驚愕した

「今度家おいでよ!映画見よ!」


故障したのか?このアンドロイドは


そしてこの「今度」は

次の週末にやってくるのであった。。。


一番綺麗だなと感じていた女性の先輩から家に誘われた私。

全くもって興味のない映画を見ようと誘われた私は

「その映画見たかったんですよ~」

だなんてほざいてホイホイと家に行くことに決まった。

指定されたコンビニで待ち合わせる。

指定された時間。

夜の22時

こんな時間な時点でもう察しついているだろう。

「今日が卒業式か」

コンビニの週刊誌に手を伸ばす

女性を悦ばせる方法が羅列されている

受験勉強の時ですら発動しなかった集中力をここぞと言わんばかりに発揮した。

(指定校推薦)

こんなことするのか。。。

生まれて初めて見る単語に恐れおののく。

理想は女性に教えてもらうことだ。

しかし。。。

「お待たせっ」

不意を突かれる

週刊誌を読んでいたことをバレないように

ジャンプの後ろ側に戻す

「いやっ、全然」

コンビニのすぐ近くに僕の卒業式会場はあった。

「ここか」

卒業式にしては簡素な玄関。

華の1つも送られてきてないことに憤りを覚えながらも

入室する。

「散らかってるけど許してな」

テンプレのような言葉で玄関を彩る

官能的な香りに卒倒しそうだった

なんとかワンルームに続く廊下を駆け抜ける。

部屋に入る。

白を基調にした家具

淡いピンク色のカーテン

ふかふかという言葉の語源になったのではないかと思われるベッド

おそらく過激な下着が収納されているのであろうタンス。。。

卒業式会場として文句なし。

「星三つ」

喉が裂けそうなくらいに高らかな声で叫んだ。

「シャワーもう浴びた?」

この女性はどこまでも私の構えたところにボールを投げ込んでくれる。

「いえ。まだ。。。」

「じゃあ浴びてきなっ」

「いいんですか?」

「うん!準備しとくから!」

「え?なんの?!」

思わず聞いてしまった。

ベッドメイキング?

なんの?!

準備とかある?!

「え?映画見る準備。。。」

やってしまった

焦った。

焦りすぎた。


冷静に考えてみてそれしかないだろう

映画を見に来てるんだろ?

今映画以外になにかあるか?


「っじゃ、シャワー浴びてきます」


まさかシャワーを浴びることになるとは。。

展開の速さに頭は半狂乱だった。

つい1、2週間前まで静岡県の清水区蒲原

夜21時ころになると誰ともすれ違わずに街を歩けるくらいの田舎。

幼稚園のころなんて裏山からサルが頻繁に出ていたほどの田舎。


そしてそんな田舎で育った純朴な芋。

ほど女性と接触してこなかった純度の高い芋。


その出荷直後の芋が

こんなにも妖艶な女性の家のシャワーで土を洗い流している。


こんな展開だれが予想できようか


とんだジェットコースタームービー

シャンプーを探す。

見たことないメーカーの液体が

シャンプーっぽい容器に入っている

そんな容器が5つぐらいある

「どれがシャンプーだ?」


容器をよく見るが成分など詳しく書いてあるが

肝心なシャンプーなのかコンディショナーなのか

はたまたボディーソープなのか

皆目見当もつかなかった。


たぶんそれっぽい液体を髪の毛につけてみる。


泡が立たない

「フェイクか。。。」


女性のシャワールームの難易度の高さを痛感した。

こんなこと週刊誌に書いてなかったぞ!!

仕事しろ!!週刊誌!!


いつもより入念に身体を洗い脱衣所に出る。


そこにあったものに私は絶句した。


あろうことか先輩の。。。。。

先輩の


下着があったのだ!!

嘘だろ?

こんなものを私が見える位置に置くか?


これはどっちだ?

誘われているのか

はたまた安心しきっているのか?


前者であることを強く願いながら


着替えなんてないからさっきまで着てた服を再び纏い


卒業式会場に足を運ぶ

聞こえてくる女性の声

電話でもしてるのかな。。。

ゆっくり扉を開ける。


そこにあった光景に私は絶句した。

少しイカつめのイケイケ系の


男性がそこにはいた。


頭が真っ白になる。

どーゆー状況?


サークルの新歓で知り合った女性に家に誘われた私

順調にシャワーを浴びることに成功し残るは性行のみであると確信していた私の前に現れたのは

少しイカつめの男性であった。

「ん?」

見た目に反さずにドスの低めの声を発する男性。

この時点で私に与えられた選択肢は3つ


①てめぇなにもんだと凄まれ殺される

②一緒に映画を見たのち『人生最後の映画は楽しかったか?』と凄まれ殺される

③一緒に映画を見たのち、私は床でイカつめの男性と女性はベッドで寝て
まざまざと性行為を見せつけられ『クソ童貞が』と凄まれ殺される


今日が命日であることは揺るぎのない事実。


「友達って男なんだ」

男性が言う。

「うん!サークルの新歓で仲良くなった子!」

女性が受け答える

神経を研ぎ澄ます。

この状況を把握するために最善な策はこの二人の言動に集中することだ。

「ふーん」


男性が興味なさそうにケータイをいじりだす。


終わった。


会話が終わった。


なにをケータイで見ているのだろうか

「男 殺す おすすめ」

「殺す ばれない 方法」

「美人局 成功 コツ」

上の三つのどれかであると踏んだ。

「っじゃ、映画見ようか!」

女性がリモコンを操作しながら続ける

「あっ、この人はね。。。」


ついに。ついにこの男性の正体が明かされる。

誰なんだ?

ヤクザか?


暴力団か?


マフィアか?


いったいなんなんだ?


「私の元カレよ」


へ?


元カレ?


元々彼氏だった人?

合ってる?


合ってたとしてなんで?


なぜ元カレが?

分からない。


正体さえ分かれば少しは状況打破に近づくと踏んでいた自分の読みの甘さを恨んだ。


正体を知ることで更に謎が深まるとは。。。


高校までの知識で言うと

元カレ元カノというのは非常に気まずい関係であると記憶している。


クラスの中でも浮く存在だ。

故に別れることにリスクが生じる。

それが元カレ元カノの関係性。

私の経験から分かれた2人が一つ屋根の下に集うと言うのは大変レアケース。


「二か月前に別れてん」


男性がケータイを見ながら言う。

私の返しが私の寿命に直結する


言葉を慎重に選び抜く。

男性の気に触れず、かつ端的に。

「そうなんですか」


言葉が震えている。

そりゃそうだ。

もうすぐ死ぬことが決まっているのだ。

怯えるなという方が無理難題。


映画が始まる

ラブストーリー

頭の中はこの部屋からいかに逃げ出すか。

皆さん安心してくれ

私はまだ生きることを諦めてはいない。

私の目はまだ死んでない。

男性の一挙手一投足に気を配りながら

策を練る


イギだい!!!!!(ロビン)


どんなことだって

どんな状況だって

絶対なんてことはない

だからこそ

今この瞬間。

諦める必要なんてない。

なにか策があるはず。。。

映画がひたすら流れている。

男性が姿勢を変えたり言葉を発する度に

私はビクつく

映画を見ながら考えていた事

私から玄関までの最短ルート

そしてこの悪魔2人の隙をいかにつくか

考えろ。

とりあえず映画を見る姿勢は体育座りだ。

体育の授業で習った記憶がある

体育座りから素早く立ち上がる動作を

身体よ、あの感覚を覚えていてくれ。。。

故にこの臨戦体制ともとれる体育座りをセレクト。

そして映画はクライマックス

2人は集中しているようだ

先ほどまでは少しの会話があったが今は完全に映画にのめり込んでいる。

ん?まさかチャンスか?

いやいや。

集中している映画を私の脱獄によって邪魔されようもんなら

ただでさえ殺すことは確定しているのに

より残虐な殺害方法を選ばれるかもしれない。

自らの死に様を左右する決断を急ぐ必要は皆無だ。

焦るな。

自分に言い聞かせる。

そしてその時が来た。

映画が終わった。

男性があくびをする

女性が伸びをする

「今だ!!!」

私は叫んだ!!

シミュレーション通り素早く体制を立て直し

全筋力を足に集中させる。

筋力によって膨張した足で壁を蹴破る。

はずだった。

玄関しか見ていないはずの私の目は思わぬところに目を移していた。

それは伸びをしている女性のちらっと見えた

お腹だ。

素晴らしいくびれ

美しいへそ

男性の本能としてそのボディに釘付けになることは抗えなかった。

しまった!!!

コンマ一秒動きが遅れる

隙を見せた私の敗北率は98パーを超えていた。

「今日、泊まってく?」

女性が元カレに聞く。

なにかの隠語か?

この期に及んでまだ隠語を使うのか?

もうすでに殺意バレバレだというのに。。。

「おん、まだ服ある?」

「あるよー」

このカップルは頻繁にお泊りをしていたようだ。

なんとハレンチな殺人鬼たちだ。

私を殺した快楽を思い出して今晩も性交渉に臨むのだろう。

しかしそれはある意味チャンスである。

きっとこの殺人鬼たちの頭はその私を殺害した後の性交渉で頭がいっぱいであるはずだ。

欲に溺れた人間ほど弱いものはない。

勝機が見えてきた。

次だ。

次。

次にチャンスがあったら女性の腹が見えようが

胸部が見えようが脇目もふらずに逃げる。

心に誓い私は自分の荷物をそれとなくまとめた

すると女性から思いもよらぬ言葉が発される。

「じゃあ、またサークル来てね!

帰り道気を付けて!」

ん?

なんだ?

どういう意味だ?

まるで私に帰ることを促しているとも取れる発言。

元カレも

「気をつけてな」

と吐き捨てシャワールームに消えた。

どういうことだ?

拍子抜けだ

殺さないのか?

私は囚われの身じゃないのか?

ここに留めておきたい存在じゃないのか?

なんか映画を見終わった瞬間。いや、映画を見ている途中あたりから

なんだか私に興味がなさそうというか

なんとなくであるが私が要らなそうな雰囲気が出ていた。

殺す理由がなくなったのか?

なぜだ。

この圧倒的な帰れ感。

ははーん。

分かったぞ

そうやって俺を油断させて後ろから仕留めるつもりだな?

そう簡単にいかせるもんか

私は女性の部屋にどっかりと座り

元カレよろしくケータイをいじってその場に留まることにした

そうするとやはり女性は焦ったように

「もう遅いから!」

とか言い出した。

ふっ。その手に乗るものか。

優しく帰すフリをしたって私は騙せないぞ

元カレがシャワーから出る。

「あれ?まだいたんだ」

元カレが言う

どうやら私のキレ者具合に驚いているようだった。

女性が言う

「もう私達寝るからさ!」

何を言っているんだこの女は

そんな甘い文句にのるものか

私はほくそ笑みながらケータイをいじり続けた

形勢逆転

先ほどまで死に怯えていた男がここまで驚異的な存在になるとは彼女たちも想像していなかっただろう。

「もう帰ってくんね?」

元カレが語気を荒げる。

久しぶりにビクつく身体。

ついにマジもんの殺意を見せてきた。

本性のお出ましだ。

私は当初の計画通りに光の速さで玄関まで駆け抜けた。

これは私の意思だ。

私は脱獄したのだ。

彼らを出しぬいたのだ。

決して彼らに邪魔者扱いされてその場を退いたわけではない。

生きてる。

家に帰る。

今頃あの殺人鬼たちは悔しがっているだろう。

こんな獲物に逃げられて

ふふっ

ショックすぎて性行もできてないんだろうな

そう思うと笑いが止まらなかった。

それからちょいちょい女性から連絡は来た

仕返しをすべく家に行っていいか何回か聞いたが

もう懲りたらしい

もう二度と家に呼ばれることはなかった

ビビっているんだな

情けねぇ




こうして私はまた一人の大学生を嫌いになり

このサークルにも入らなかった。

fin.



みなさんからのサポートで自分磨いて幸せ掴むぞ♪