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こんなおっさんができあがるまで【4】

皆さん、こんにちは。かんおさです。

こんなおっさんの自語りにお付き合い頂き、本当にありがとうございます。
スキ? を押して下さっている方もいらっしゃって、ひっそりと拝んでます。

とりあえず、前回のお話で私は3年と言う短い時間ですが、それまで人生で経験した事もない程、急速に追い詰められていきました。

しかも、質が悪い事にその事実に、その時の自分自身が気付いていません。

今なら客観的視点に立って、色々な事が見えて来るのですが、その当時の自分の心にあったのは、以下の事です。

もっとしっかりしなければ!

そうで無いと生きる価値のない人間に成り下がると、本気で思っていました。
そんな自分の末路と行く末を、今回は書き残していきたいと思います。

最初の異変 朝起きると涙が出る様になる

同僚が不遇の死を遂げてすぐに、私の身体にある異変が起きました。

それは、朝、会社に行こうとすると何故か涙が出るようになったのです。
朝起きた時、歯磨きをしている時、朝食を食べている時、通勤途中。

それは時を選ばず、本当にふとした瞬間に込み上げて来るものでした。

当時の自分はそれを、恥ずかしいと思ったので、自然と人目を避けて隠す様になりました。

それまで朝食は、家で食べていたのですが、泣いている顔を見られたくなかったので早めに出て、誰も居ない会社で食べる様になりました。

仲の良い同僚がいなくなった事で、仲間内で食べていたお昼も断る様になります。自分の席でひっそりと食べ、さっさと寝たふりをするようになりました。

それから涙が出ると言う症状は、半年もすればおさまってきたのですが、身体の異変は更に続くのでした。

考えがまとまらず凡ミスをするようになる

涙が出るようになってから、少しずつですが、私のミスが増えていきました。

一つ一つは本当に取るに足らないミスなのですが、積み重なればそれは業務に支障をきたす様になります。

そうして上司に呼ばれ、叱責される事が増えていきました。
しかし、その時の私は、それを当然のこととして受けてとめていました。

もっとちゃんとしなければ。人として生きる価値を失ってしまう。

そう言った使命感とも恐怖心ともつかない何かに駆り立てられていたのは、今でもはっきりと覚えています。

ですが、上司に叱責され、お客様からも罵倒を受ける日々を続ける事で、私の中にあった何かが、徐々に壊れて行くのも、この時何とも無しに感じでいました。
そして、それが何なのかを分からないまま、どこか他人事のようにただ流されるままになっていた事を良く覚えています。

そうして、ミスは増えた物のいつも通りの業務をこなす中で、私は更におかしくなっていきました。

味のしない食事 取れない疲れ そして……

同僚の死から8カ月後。

私は、何とか業務を続けていました

ですが、徐々にその辺りから私の記憶は急速に曖昧になって行きます。
一応、断片的には覚えているのですが、かなりの部分が、すっぽ抜けてます。

もしかしたら、何か致命的に悲しい出来事があったのかもしれません。

覚えている中で漠然とした感覚としては、まず、ご飯を食べる事がとても億劫になったと言う物があります。
もう、その頃は、ご飯を美味しく食べると言う事自体を忘れていました。
食べないといけないから食べていたという感じです。

同じ様に、あれ程までに好きだったゲームや小説も全く見向きもしませんでした。

それまでは新作を楽しみにしていて、常に追いかけていたのですが、その時期を境に購入どころか調べる事もパッタリとやめてしまっています。

一応、就職して少しの間は、友人とはメールや音声通話で連絡を取っていたのですが、それもすぐに途絶えていました。

記録として残っている物をかき集めて、私の記憶と照らし合わせてみても、この当時の状況は客観的に見て、明らかに異常でした。

家族にもその時期の事はそれとなく聞いてみたのですが、いつもと違って少し様子はおかしかったけど、疲れているからだろうと思っていたし、本人(私)もそう言っていたとの事でした。

家族が鈍感なのか、私の演技が上手かったのかは不明ですが、客観的に見て明らかに異常と分かる事も、案外、周りからは気付けないものなのだと言う良い例なのかなと思います。

そんなある日の事。

いつもの様に通勤しようと最寄りの駅へと向かいホームで電車を待っていました。
珍しい事に、その日は何か特急電車が通るらしく、何時も乗る電車の前に、1本通過する電車があると知りました。

その時、心の中に何かある訳でもなく本当に当たり前の様に

足が前に出ました

この時の私は、別に死にたいとか、辛いとか思っていなかったと思います。

ですが、身体が勝手に動きました。
まるで本当の自分の意思を実現しようとするかの如く、自然な動作でスムーズに動いたと記憶しています。

「ちょっと!?」

次の瞬間、そんな大声が私の意識をひき戻しました。

そして、私の目の前を警笛を鳴らしながら特急電車が猛スピードで通過していきます。
近くでもろに受けた風圧によって私は、少し後ろにふらつきました。

その時の風の強さと圧、そして「ボフン」と言う音は、今でもしっかりと思い出すことができます。

あと数十センチ顔を前に出していたら、私はこの世にいませんでした。

その後、特に何ごとも無かったかのように、私はいつも乗る次の電車に乗って、会社へと向かいました。

あの時声をかけてくれた人の事も、特に探そうとはしませんでした。
今ならお礼を言いたい気持ちですが、その当時は、驚いた位しか思わなかったんですよね。

この時の事は、正常な判断力と知識があれば、明らかに不味い状況であると判断できたと思います。
ですが、当時の私にはそれを判断する能力は、欠片も残っていませんでした。

むしろ、また迷惑をかける所だったと言う、どこか他人事めいた感情と、もっとしっかりしないと、と言う想いしか浮かんできませんでした。

またこの出来事は、結局の所、家族も含め誰にも話した事はありません。

もう過ぎた事ですし、余計な心配をかける必要もないと言う想いから、心に秘めたままにしておきました。

そうして私はクビになった

まぁ、そんな状況でしたから、もはや私が業務をまともにこなせていた筈がありません。

いや、本人はいたって真面目にやっていたつもりだったのですが。

どうやら相当にズタボロだったらしく、謝るために会社に行っているような状況だったらしいです。

そうして、ある日、本社に呼ばれて何か凄く怒られた記憶はあります。
その後で、諭すようにこんな事を言われました。

曰く、君は本社に多大な迷惑をかけている。
曰く、その為、今月の給料は支払えない。
曰く、本来であればクビにできるが、今まで頑張ってくれたから自首退社してくれれば全てを水に流そう。

この時、私は、また迷惑をかけてしまった……申し訳ないという気持ちと、会社の温情(?)に感謝すらしていました。

結局のところ、自首退社してくれた方が色々と都合がよかったんだろうなと言うのは後で分かった訳なのですが、その当時の自分はそんな事思いもつきません。

そうして、私は、今までありがとうございましたと、感謝をしつつ、最初の会社を退職する運びとなったのでした。

今回はここまで。
お読み頂き、ありがとうございました。

こんにちは! 世界の底辺で、何とか這いつくばって生きているアラフォーのおっさんです。 お金も無いし、健康な体も無いけど、案外楽しく生きてます。 そんなおっさんの戯言を読んでくれてありがとうございます。