エディ・マーフィと山ちゃんがいれば、たぶん大概のことはうまくいく

ホラーが苦手だ。

ホラー映画も、怖い話も、夏の心霊特集もお化け屋敷も、全方向に隙なく苦手だ。すべて嫌い。テレビ番組に挟まれる、ちょっとしたホラー映画のCMなんかも本当にダメ。

どれくらいダメなの、という時に例に出すのは、某夢の国の例のマンション。
あの乗り物にはもう何度も乗っているけれど、内容はほとんど知らない。
なぜか。
毎回、目を閉じて(もっとひどい時は耳を塞いで)乗っているから。
「記憶にありません」が、真実嘘じゃないのだ。

と、いう話をすると大概の人は笑うか、引くか、呆れる。
「え、あれ怖かったっけ?」と言われたことはもう数えきれない。
怖い。私には、すごく怖い。だって鏡見たらおばけが同乗してんだぞ。そんな相乗り、承諾した覚えはない。
(ちなみに同じく某冒険の海にあるタワー型のあれは、初めて乗った時になぜか「ごめんなさい」を連発するという醜態をさらし、以後2回ほど乗っては後悔、を繰り返したのでもう乗っていない。人間向き不向きはあるが、誘われれば応じてしまうのも悲しい性である。)

そんなホラー体制ゼロの私が、記憶にある上で初めて自ら選んでホラー映画を見ることになった。
そのものずばり、【ホーンテッドマンション(2003)】である。

ざっくりと説明すると、あのアトラクションをモチーフに作られた映画だ。
主演のエディ・マーフィ演じるジムは、妻のサラと共に夫婦で不動産業を営んでいる。ある時、「屋敷を売りたい」という連絡を受けて家族旅行の前に、と夫婦、子どもと連れだって現地へ訪れたジム。到着した屋敷は大豪邸で興奮のあまり仕事に没頭するジムだったが、その呼び出しそのものが、黒い計画のもとに隠された罠だった……

結論から言うと、とても面白かった。
さすが天下のディズニー。夢と魔法の世界はいつだって私たちを幸せにしてくれる。
おそらく、アトラクションをちゃんと経験していればハッとするシーンも多いのだろう。残念ながら私は、前述の通り過去十数回に渡って目を閉じ耳を塞いでアトラクションに乗っているので(ちなみに耳を塞ぐのは最近やめた。同行者にバレるのがちょっと恥ずかしいからである。)、「ここはあのシーンか!」というのはほとんどなかった。唯一わかったのは水晶玉の中で話す女性くらいかな……あの水晶玉、物語の重要なシーンでジムに助言を与えにやってくるのだが、そこまでどうやってきたのだろう、コロコロと転がってきたのか……?と考えるとちょっと愛しさがわいてくる。

私がこの映画を最後まで見られた理由。
その最たるところは、エディ・マーフィの演技が大きい。
家族想いで仕事熱心だけどちょっと空回ってて、下手な冗談が好きなお調子もの。
壁の中に閉じ込められても、不思議な部屋で椅子につかまってぐるぐると宙を回る羽目になっても、楽器に追いかけられてもゾンビに追いかけられても、なんとなく笑える。
そこに加えて吹き替えの声が山ちゃんこと山寺宏一氏なものだから、見ている方としてはもう、最強の気分である。
どうあっても悪い方には転ばないだろう、という安心感。
すべてをコメディにしてくれる安定感。
ゾンビさえも、なんだか可愛く見えてくる。

……いや、さすがに嘘だった。ゾンビは普通に怖かった。

お化けの描写も怖さは最小限に抑えられていたし、おそらくホラー<コメディの要素が強い映画なのだろう。
それでも私にとっては大きな一歩である。
これを機に、さぁ他のホラー映画も……とは、まぁ、ならないけれど。
(そもそも今回も仕事のネタ集めのためにやむなく見たので、また同じようなシチュエーションにならない限りホラー映画を手にすることはないと思う)

コメディでありながら少し切ないラブストーリーも織り交ぜられた本作だが、一つ、好きなセリフがある。
ジムが言う、「20分あれば何でもできる」という言葉。

たしかに、その通りなのかもしれない。
20分あれば、屋敷を冒険してゾンビを倒して幽霊退治をして問題を解決することだって、きっと、容易いことなのだ。

作品を見る前にちらっとレビューを見たところ(どれほどの怖さか確認しておきたかった……)、「この作品を見ると、あのアトラクションに乗りに行きたくなる」という言葉があった。
好きなひとはそうだろうね、でも私は絶対ないわそんなこと。
……と思っていたのだが、単純なことに今、私はあのアトラクションに乗りたくなっている。
一番は、あの愛しい水晶の女性に会うため。
とはいえアトラクション内の水晶玉は、少し怖かった記憶があるのだけど。

今度はちゃんと、目を開いて、耳もふさがずに乗ってみようと思う。
……できれば、暗くなる前の時間帯に。

#映画 #コラム #感想 #ホーンテッドマンション

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