【第26章・涙】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)
第二十六章 涙
栄と新十郎が浜町狩野屋敷に着き、門脇のくぐり戸から中に入ると、玄関前が妙に騒がしい。十五、六人の男が集まって気勢を上げている。見ると、大工の棟梁、火消し、やくざ者っぽいのから相撲取りまでいる。
「何の騒ぎでしょうか」
「さあ。新十郎さん、訊いてみて下さる」
新十郎は、少し身構えつつ、一団に近寄る。
「ちょっと。あんたら、何してるんですか、こんな所に集まって」
「何って。あっしら、義によって素川様をお助けする文化の赤穂浪士ですよ」
「ええっ?!」
「