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風の中の花嫁


継ぎはぎだらけの私の躯わ美しいですか…?

私はパズルか寄せ木細工のようにバラバラのピースを組み合わせてそれでも見事に出来上がった絵でわなくて…

継ぎはぎだらけの穢れ切った袋です。

袋縫いされたアタシなのに何も入れることすら出来ません

ジョイントとジョイントの間にわまるでファスナーを下げた女性の背中がたちまち現れるように…

継ぎはぎが左右に大きく大嫌いな百合の花弁のようにぱっくりと開き…

傷だらけの灰色の痩せた背中を見せる…

背中の脊椎の数を数えながら痛む彼女の、か細いうなじに口づけする男達のベッドに投げていった花札を数えながら唇を噛み締めてきた…

彼女わアタシ…

アタシわ彼女…

百合を憎み…
牡丹を憎む…

アタシわ薔薇…

薔薇わ棘があり…

誇り高く可愛げが無い…

でも薔薇わ薔薇…
野生の決して優美でわないどこか荒れた薔薇…

継ぎ接ぎだらけのアタシわ血すら淀まず滑らかにわ流れない…

アタシの皮膚の下に、骨の狭間に眠るもう一人のアタシは取り除くことはできない

それは別の王国を築く誰かなの…

ナイロンザイルのように図太い女で絹のように細く丈夫で強いのに絹のように重いものなど持ち上げられず酷く脆弱

その内なる王国はアタシをどんどん病み…
アタシにわもう…
先わ見えない!

怯えた薔薇わ狂暴にしかならない…
でも怯えて震えているからなの!
あぁ近づいてくる破滅…

アタシ アタシ アタシ!!!

下の下の下のアタシ…

あまりにも下を極めるとそれわ人間の下界を極める悪の妖美へと蒼褪めた手から手へと繋ぐ…

でも繋ぐ氷の手わアタシの手…

それを繋ぐのわもう独りのアタシ…

あぁお願い 分裂したくない…
切り裂かれたくない…
お願い 愛しいひと


アタシがアタシを引き裂くものからどうぞアタシを匿って(かくまって)…

アタシわ切れ切れ…

切れ端…

繋ぎあわせ…

寄せ集め…

でもアタシわ一体誰?

いくら寄せ集めても掻き集めても…


アタシわ見えない!

アタシわどこにも居ない!

アタシの右目が見えないように左の世界も脆弱を迎えつつあるわ…

でも左の小宇宙でアタシわ護るの

アタシの最後のアタシのアタシを…

愛だなんて陳腐な言葉を嗤わないで

陳腐が真実なことわよくあることだわ…

ジョイントとジョイントのその狭間…

ファスナーをおろした彼女の背中…

黒いドレスわ左右にまるで観音開きのようにヒラリと落ちるように花開き…

大嫌いな百合の花弁のようにぱっくりと左右に垂れ下がる…

花開く…

花開く…

病んだ花わ羊水の泉を溢れさせ…

最後の愛を守りたいと願う…

貴方…

貴方…

あぁ…貴方と木星の海をひとつの小舟で抱き合って…

風の中の花嫁にして頂戴…

ふたりわ木星の冷たい海で無になり…

安らかに眠り…

巡り巡り続ける…

そしてアタシのベイビーマインわアタシの暖かい胸の奥の永遠のサンクチュアリで安らかに睡る…

貴方の中にアタシを…
貴方の星にアタシを…

アタシの中に風の中の花嫁を…

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